目次
- 1.雇用保険法とは?
- 2.雇用保険法の改正ポイント
- 育休に関する安定的な財政運営の確保(2024年5月〜)
- 教育訓練やリ・スキリング支援の充実(2024年10月〜)
- 就業手当の廃止・就業促進定着手当の引き下げ(2025年4月〜)
- 高年齢雇用継続給付の支給率引き下げ(2025年4月〜)
- 雇い止めによる離職者への制度を見直し(2025年4月〜)
- 出生後休業支援給付・育児時短就業給付の新設(2025年4月〜)
- 雇用保険の適用拡大(2028年10月〜)
- 3.雇用保険法で定める主な内容
- (1)求職者給付
- (2)就職促進給付
- (3)教育訓練給付
- (4)雇用継続給付
- 4.希望のキャリアに応じて制度を活用しよう
1.雇用保険法とは?
雇用保険法とは、労働者が失業や休業した場合の生活を支え、社会復帰を後押しするための法律です。給付金などで労働者の生活を経済的にサポートし、雇用の安定と就職を促進することを目的としています。
この法律の前身となったのは1947年に施行された失業保険法です。終戦後に多くの人が職を失ったことから、労働者の生活を守るために制定されました。そして、時代の変化に合わせて失業者だけでなく、在職者や事業主も支援の対象とするために改正され、1974年に雇用保険法として誕生しました。
社会情勢とともに働き方も多様化し、労働者が抱える悩みも変わっていきます。雇用保険法は、こうした変化に合わせてこれまでも繰り返し改正されてきました。2024年にも改正法が成立し、2024年5月から順次施行されています。
2.雇用保険法の改正ポイント
多様化した働き方を支え、「人への投資」を強化することを目的に、2024年に改正法が成立しました。施行時期に沿ってポイントを紹介します。

育休に関する安定的な財政運営の確保(2024年5月〜)
改正前 |
改正後 |
|
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育休給付の国庫負担の割合 (2024年5月以降) |
1/80 |
1/8 |
保険料率 (2025年4月以降) |
0.4% |
0.5% ※保険財政の状況に応じて0.4%に戻すことも可能 |
共働き世帯の増加や男性の育休取得を推進する動きなどを背景に、育休取得者数は今後も増えることが予想されます。大幅な取得者数の増加にも対応できるよう、国が負担する割合が引き上げられました(2024年5月以降)。
これに加えて、2025年4月以降、育児休業給付の保険料が0.5%へ引き上げられました。ただし、財政状況に応じて0.4%に戻せるようにするなど柔軟な運用が想定されています。
教育訓練やリ・スキリング支援の充実(2024年10月〜)
改正前 |
改正後 |
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教育訓練給付の給付率の 上限 (2024年10月以降) |
受講費用の70% |
受講費用の80% |
自己都合退職者の 給付制限 (2025年4月以降) |
2ヶ月間の制限期間は失業手当の給付が受けられない |
自ら教育訓練等を受けた場合は、給付制限期間なし ※教育訓練を受けない場合は1ヶ月間の制限期間へ短縮 |
教育訓練休暇給付金 (2025年10月以降) |
なし |
あり ※被保険者期間が5年以上ある労働者が対象 |
労働者の職業スキルや知識の学び直しを支援するため、厚生労働省が指定する教育訓練を受講・修了した場合に支給される「教育訓練給付」の給付率が10%上がりました(2024年10月以降)。
そして、これまでは自己都合で退職した場合、失業手当を受け取るまでに原則2ヶ月の待機(制限)期間がありましたが、教育訓練等を受けた場合にはこの制限がなくなりました(2025年4月以降)。
また、教育訓練を受けるために無給の休暇を取得した場合、賃金の50〜80%程度が支給される「教育訓練休暇給付金」が新設されます(2025年10月以降)。これは、学習期間中の生活費の不安を軽減するための制度です。
就業手当の廃止・就業促進定着手当の引き下げ(2025年4月〜)
改正前 |
改正後 |
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就業手当 |
失業手当日額の30%程度を支給 |
廃止 |
就業促進定着手当 |
失業手当日額の40%に相当する額を支給残日数分支給 |
失業手当日額の20%に相当する額を支給残日数分支給 |
失業手当を受けている人が、契約期間1年未満の非正規雇用契約などで再就職した場合、就業手当が支給されていました。しかし、受給者数は3,500人程度と少なかったことから、廃止となっています。
また、労働生産力減に伴う働き口の増加を見越し、早期に再就職しても前職より賃金が下回った場合に支給される就業促進定着手当の給付率が、20%引き下げられました。
高年齢雇用継続給付の支給率引き下げ(2025年4月〜)
改正前 |
改正後 |
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高年齢雇用継続給付の支給率 |
各月に支払われた賃金額の15%を、賃金に上乗せして支給 |
各月に支払われた賃金額の10%を、賃金に上乗せして支給 |
高年齢雇用継続給付とは、60歳時点の賃金の75%未満で働く60〜64歳の人を対象とした給付制度です。定年の撤廃など、これらの年代が働きやすい環境が整備されつつあることを背景に、支給率が15%から10%に引き下げられました。
雇い止めによる離職者への制度を見直し(2025年4月〜)
改正前 |
改正後 |
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特例・給付措置 |
以下3つの措置を2024年度末まで実施
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以下3つの措置を2026年度末まで実施
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*雇用機会が少ない地域に住む人を対象に、給付日数を延長する制度
雇い止めによって離職した人を対象に、2024年度末までの暫定措置として、失業手当の給付日数の延長などの特例措置がとられていました。今回の改正により、これらの措置が2年間延長されつつも、早期就職を促すため、教育訓練支援給付金の給付率が80%から60%へ引き下げとなっています。
出生後休業支援給付・育児時短就業給付の新設(2025年4月〜)
「共働き・共育て」を推進するため、出生後休業支援給付と育児時短就業給付が新設されました。
両親ともに育児休業を取得した場合に給付される、出生後休業支援給付について詳しくはこちら
>【2025年4月開始】出生後休業支援給付とは?対象者と給付金の計算方法、申請方法をわかりやすく解説
2歳未満の子どもを育てる労働者が時短で復職した場合に給付される、育児時短就業給付について詳しくはこちら
>【2025年4月開始】育児時短就業給付とは?給付金はいくらもらえるか、対象者と期間、申請方法について解説
雇用保険の適用拡大(2028年10月〜)
改正前 |
改正後 |
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雇用保険の加入条件 |
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被保険者期間の算定基準 |
勤務日数が11日以上、または80時間以上の労働月がある場合を1月とカウント |
勤務日数が6日以上、または40時間以上の労働月がある場合を1月とカウント |
失業認定基準 |
1日の労働時間が4時間未満の場合は失業日と認定 |
1日の労働時間が2時間未満の場合は失業日と認定 |
雇用保険は、失業してから次の仕事に就くまでに必要な給付を受けられる社会保険(労働保険)の一種です。働き方や生計維持のあり方が変化していることから、雇用保険の加入条件である週の所定労働時間が20時間から10時間に短縮されます。これにより、週10〜19時間ほどパートやアルバイトとして働いていた人も、失業手当や求職者支援制度の対象になります。
3.雇用保険法で定める主な内容
雇用保険法で定められている主な内容は、大きく失業給付と育児休業給付に分けられます。
失業給付はさらに失業手当などに関する「1.求職者給付」、就職や求職活動時に支給される「2.就職促進給付」、教育訓練を受けた際に支給される「3.教育訓練給付」、介護休業取得時の「4.雇用継続給付」の4つに分類されています。
(1)求職者給付

失業手当は、正式名称を「基本手当」といい、再就職の活動に専念できるよう経済的に支援することが目的です。
失業手当について詳しくはこちら
>失業手当(失業保険)はいくら、いつからもらえる? 改正後の受給条件や申請方法を解説!
求職者給付では、失業手当以外にも職業訓練を受けた際に受け取れる技能習得手当や、早期の就職を促すために支給される就業促進手当などがあります。
求職者給付について詳しくはこちら
>雇用保険の給付の種類
(2)就職促進給付

就職促進給付のなかには、早期の再就職と定着を促す就業促進手当のほか、就職や職業訓練の受講のために引越した際に支給される移転費、求職活動時にかかった交通費などが支給される求職活動支援費があります。
(3)教育訓練給付
教育訓練給付とは、労働者の主体的な学びとキャリア形成を支援するために、厚生労働省が指定する教育訓練を修了すると、学習にかかった費用の一部が支給される制度です。
講座のなかには、介護福祉士や看護師、保育士など医療・福祉にかかわる資格もあります。具体的な講座は以下のウェブサイトで検索できます。
厚生労働省|教育訓練給付制度[検索システム]
(4)雇用継続給付

雇用継続給付には、60〜64歳を対象に支給される高年齢雇用継続給付のほか、家族の介護が必要な労働者が介護休業を取得した際に給付する介護休業給付について定められています。
介護休業給付について詳しくはこちら
>介護休暇・介護休業で給与は出る? 違いや取得方法、条件を解説!
また、これまで育児休業給付も失業給付に含まれていましたが、給付額の増加を背景に、これらとは切り離して収支管理されるようになりました。
育児休業給付について詳しくはこちら
>育児休業(育休)とは?取得条件と期間、給付金・手当の計算方法を解説!
4.希望のキャリアに応じて制度を活用しよう
雇用保険法は、失業中の生活を支えるだけでなく、安定した就労や新たな雇用の機会をつくることも目的としています。
働き方や労働者を取り巻く状況は、時代とともに変化しています。これまでは失業中の不安を軽減することに重きが置かれていましたが、今回の改正では、スキルアップやキャリア形成を支援する仕組みが充実しました。学び直しを考えている人や、いまの職場でステップアップを考えている人にとっても大きな後押しになります。
自分の働き方や将来の希望に合わせて、雇用保険の制度を活用しましょう。
参考
- e-Gov法令検索|雇用保険法
- 厚生労働省|雇用保険法等の一部を改正する法律の概要
- ハローワーク インターネットサービス|雇用保険制度の概要