増加する介護離職。その現状は?
病気や怪我などで介護が必要となった家族。その介護のために仕事を辞める「介護離職」が増えています。介護離職を余儀なくされる人数は、毎年約10万人。家族のためとはいえ仕事から離れるのは、その後の生活にも不安が生じるものだと思います。また、積み上げてきたキャリアが失われるという不安もあるでしょう。そんな介護離職防止のために作られたのが、介護休業や介護休暇などの各種制度です。
しかし、これらの制度を実際に利用した人は、2012年現在の統計では全体のわずか3.2%でした。制度を利用しない理由は、職場に迷惑をかけられない・取れる雰囲気ではない、といったものが多いようです。もちろん、この問題は医療介護業界も例外ではありません。介護離職をせず長く働き続けるには、どうすればよいのでしょうか。
家族の介護で使える制度。どんなものがあるの?
まずは制度自体を知らなければ始まりません。家族の介護が必要となったとき、使える制度にはどんなものがあるのでしょうか。
介護休業
労働者の家族が「2週間以上にわたり常に介護を必要とする状態(要介護状態)」となった場合に、介護やお世話をするための休業。対象者1人につき通算93日までまとめて取得することができます。
介護休暇
労働者の家族が要介護状態となった場合に、その介護やお世話をするための休暇。病院への付き添いや、家族に代わって事務手続きを行う必要がある場合にも利用できます。日数は1年に5日までですが、対象となる家族が2人以上の場合は10日まで取得することが可能です。
介護休業給付金
介護休業を利用した期間(最長3か月)に給付金を受け取れる制度。金額は原則として「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で計算されるので、元の月給の70%程度です。
時間外労働の制限
要介護状態の家族を抱える労働者が残業の制限を希望した場合、その家族を介護するために「1か月で24時間」「1年で150時間」を超える残業を制限する制度。
深夜業の制限
要介護状態の家族を抱える労働者が夜勤の制限を希望した場合、その家族を介護するために夜勤を制限する制度。
これらは、いずれも労働者側からの申し出や請求によって利用できる制度です。介護離職を防ぐためにも有効なこれらの制度ですが、利用率は前述の通り低く、それは介護医療業界でも同様です。
伸び悩む制度利用を後押しする!?助成金制度
制度の利用が伸び悩む中、介護離職率ゼロに向けて、厚生労働省もさまざまな改革に乗り出しています。「介護離職防止支援助成金」は、介護離職防止に向け指定された取り組みを行った事業所へ、助成金が支給されるというもの。前述の介護休業給付金においては、それまで40%だった支給率が、2016年8月から67%となっています。また、2019年1月には介護休業の分割取得(3回まで)が可能となることが決まりました。
このように制度利用を後押しする厚生労働省の取り組みが進むなか、医療介護業界でも貴重な人材を失わないよう、独自の制度を設ける事業所が増えてきたようです。たとえば、介護休暇の取得日数を事業所独自に上乗せしたり、有給休暇を時間単位に改め取得しやすくしたりする、というものです。国や事業所の制度を上手に活用して、仕事と介護を両立できる方が増えることを願います。