1.今回インタビューしたのはこんな人

──初めにIさんの職歴を簡単に教えてください。
介護福祉士の専門学校を卒業して、2000年の4月から看護助手として病院に就職しました。1年半ほど働いたあと同じ法人内の老健(介護老人保健施設)に異動して7年勤務し、今度は同じ法人内の認知症を専門とする老健へ異動して3年ほど働きました。
その老健を2012年の1月に辞めて、新規オープンの別法人の老健に転職しました。そこでは9年働いて、2021年の2月に現在の老人ホーム(介護付き有料老人ホーム)へ転職しました。

──では今回が2回目の転職なんですね。転職期間はどのくらいでしたか?
2ヶ月くらいですかね。
──今回の転職理由を教えてください。
転職をするなら40歳が最後のタイミングかなと思ったんです。40歳は応募の足切りとなることが多い年齢でもありますし。
僕自身、老健で働いた20年のうちに転職したのが1回だけだったので、もう少しいろんな職場を経験しておいたら良かったなって思ってたんですよ。でも前の職場では役職に就いていたこともあって、なかなか転職に踏み切れなかったんですよね。
そんなときに知り合いから「うちの老人ホームで一緒に働いてもらえないか」と声をかけてもらって。これが転職に踏み切る決め手になりました。
──40歳を一つの節目と考えて、新たな経験を積みたいと思ったんですね。
はい。40歳から定年までの25年で“自分はどういう形で介護をやっていくのか”っていうのもすごく悩んでたんですよ。ずっと現場を続けるのか違う道を選ぶのか。
そうやってモヤモヤしてた時期でもあったんですが、声をかけてもらった知り合いからは「幹部候補として、施設長や本社で働くことも目指せるよ」って言われたんです。それを聞いて施設の経営側を目指すという働き方も、40歳からのチャレンジとしてはやってみたいな、面白いなと思ったんですよね。

──今までとは違う働き方を目指したんですね。
そうですね。介護も利益を生まないと成り立たないので、会社の利益が生み出される仕組みも知っておきたかったんです。そういった仕組みを知っておくことが将来的に自分の武器にもなるかなと思ったので。
──なるほど。声をかけてもらった知り合いの方は、前の職場の同僚ですか?
いえ! これがなかなか運命的な話で(笑)。もともと20年以上前に働いていたバイト先の後輩なんですよ。
社会人になってから、その後輩と仕事を通してたまたま再会しまして……しかも2回! その2回目の再会が、ちょうど僕が転職を迷っているタイミングだったんです。
──それはすごい偶然ですね!
本当に(笑)。介護業界での転職は横の繋がりがすごく大事なんだなと思いましたね。
例えば介護のいろんな研修に顔を出すとか、介護福祉士会に入って勉強会に参加するとか。そういうところで人との繋がりがあれば、どこかで運よくタイミングよく、縁が繋がるのかもしれないなと感じました。
──日頃の繋がりが活きるんですね。Iさんが転職先を選ぶ際に重視したポイントを教えてください。
金銭面の比重が大きかったです。自分は結婚して子どもがいて家を買っていて──なので収入を大きく落とさないことが重要でした。前職と同じくらいか、少し下がるくらいが許容範囲でしたね。
その次に、自分のやりたいことにチャレンジできるか。あとはお休みがきちんと取れるか。共働きで奥さんも夜勤ありのシフトで働いているので、2人で夜勤が被らないように調整しやすいこと、シフトの希望を出しやすいことを重視しました。
──声をかけてもらった老人ホーム以外にも、いくつか応募しましたか?
1ヶ所だけ老健を受けて内定もいただきました。ただ給与や休みの取りやすさを考えると、老人ホームのほうが希望に合っていたので辞退しました。
2.介護職の履歴書(実例)

──続いて履歴書について聞かせてください。Iさんは手書きで作成されたんですね。
個人的にですが手書きのほうがスタンダードで思いが伝わるイメージと言いますか。必死さが伝わる気がして。
──履歴書を書く際に工夫した点はありますか?
やっぱり志望動機の部分ですね。自分が持っているビジョンや、自分の経験から活かせる力があるということを書くようにしていました。
“20年の介護経験を次の職場で生かしたい。介護現場だけでなく、施設運営の仕事もしてみたい。”
介護業界で20年働いてきて、施設内の派閥だとか人間関係の摩擦があったときに、僕が間に入ることが多かったんですよ。人と人との間に入ってバランスを取ることや、施設内をうまくまとめていくことに関して自分なりに自信があったので、面接時に口頭でアピールしました。
──自分の強みを見つけるのは大変かと思いますが、どうやって考えましたか?
今までの経験を振り返って「どういうことをやってきたか」「自分が介護業務以外で必要とされていたのはどういうときか」を紙に書き出してみたんです。
そうすると、前職は老健だったので施設内にさまざまな職種が一緒に働いていたんですが「そういえば気難しい看護師さんに僕が話しに行ってたな、異なる職種間でもうまく間に入ってたな」とか気付けて。
1回目の転職では自分の“介護技術”を活かせる力として考えてたんですけど、介護技術って長年やればそれなりに身に付くと思うんです。それよりも自分がいることで人間関係のバランスが保たれるということが、今回アピールすべき強みかなと再認識できました。
──介護技術以外で、差別化できる部分を振り返ってみたんですね。証明写真は写真機で撮影しましたか?
街中にある写真機で撮影しました。
──撮影時に気をつけたことはありますか?
スーツを着て、髪を整えて、髭をしっかり剃りました。人は見た目じゃないとは言いつつも、選考ではどうしても見た目が入り口になるので。
ジョブメドレーからのアドバイス
今回の履歴書について、ジョブメドレーのキャリアサポートに「良い点」「改善できそうな点」を聞いてみました。
1.自己分析がバッチリ!
履歴書を書く前に、今までの経験を振り返って紙に書き出したのが良いですね。書くことで自分自身で整理しやすくなるでしょう。
2.志望動機やアピールポイントはもう少し詳細に書くと◎
ご自身の強みと希望のキャリアプランを簡潔にまとめられていますが、もう少し詳細に書いておくと、面接時のお話がスムーズかもしれません。
例えば志望動機として「応募先に魅力を感じている部分」、20年の介護経験で得た力として「人間関係のバランスを取ること」を具体的に記載できると良いでしょう。
3.本人希望欄の記載も忘れずに
家族の都合でシフトの希望がある場合は、その旨を本人希望欄に記載しましょう。希望がとくにない場合は「貴社(貴法人)の規定に従います」と記載しておくと丁寧です。
3.介護職の面接対策

──面接は対面でしたか?
はい、対面でさせてもらいました。
──内定までに面接は何回ありましたか?
1回ですね。ただ面接時間がけっこう長くて、施設長と社長と1時間くらい喋ったかな。
──しっかり話したんですね。面接時の服装と身だしなみで気をつけたことを教えてください。
服装はスーツを着て行きました。
身だしなみは髪を整える、髭を剃る、ネクタイをしっかり締めるなどですね。介護業界だとあまりスーツを着る機会がないので基本的なことをしっかり確認しました。シャツをクリーニングに出すとかアイロンをかけるとか。

──身だしなみは第一印象に繋がりますもんね。面接当日に向けて対策したことはありますか?
あまり考えすぎると凝った言葉しか出ないと思ったので、自分の特長を含めた志望動機だけ頭の中に入れておいて、あとは聞かれたことを答えるようにしました。
「これだけは言おう」という自分の特長──さっき話した人間関係のことなど、最低限言わないといけないワードだけ準備して。
──作り込みすぎても考えが固まってしまいますもんね。
そうですね。聞かれたことに対して答えられることは答えて、もしわからないことを聞かれても、正直にわからないと伝えるように意識しています。面接としてはそのほうがいいかなって。
──施設長や社長からはどんなことを聞かれましたか?
「以前の職場ではどういう立ち位置で働いていたのか」「この老人ホームではどういう仕事をしていきたいのか」を聞かれましたね。
あと質問ではないのですが……僕が面接を受けたとき、その老人ホームでは職員同士が合わなくて5〜6人ほど辞めたタイミングだったんです。なので「人間関係が最初からうまくいく状況ではないと思うけど、今までの経験を活かしてやって欲しい」ということを言われましたね。
あと、会社概要も説明してもらいました。関西で15施設ほど手広くやっている会社なので。
──なるほど。ちなみにIさんは緊張しやすいタイプですか?
緊張、めちゃくちゃするんですよ。実は今もけっこう緊張してるんですけど(笑)、緊張していないように見せるようにしています。
──たしかに緊張しているように見えませんでした! 何かコツがあったり?
何かしらを喋ろうとか、とにかく思ったことは伝えようとしてましたね。
でもやっぱり完全に緊張を消すことはできないので、話し始めてから徐々に解けていく感じです。相手の反応を見て「おっこれはハマるな!」「この人は苦手だな……」みたいなフィーリングってあるじゃないですか。
──話し始めた段階でなんとなく相性がわかったりしますよね。
そうなんです。過去の面接では噛み合わない経験もありましたよ。突き返される感じというか。
特養の面接を受けたときに「どういう介護をしたいですか」って聞かれて「特養は初めてなんですけど、看取りを“含めて”頑張りたいです」って言ったら、関西弁でポーンと「君はなんや、“看取りが”やりたいんか!」って高圧的に返されて。思わず「どうしよう……!」ってなっちゃって(笑)。

予想外の言葉・反応に頭が真っ白になってしまって「いや、そういう訳じゃないんですけど……」って会話が続かなくなってしまったんですよ。
今なら冷静に「看取りだけがやりたい訳ではなく、未経験の領域なので仕事内容の一つとしてやりたいんです」って返せるかなって思います。
──当時は焦ったと思いますが、今に活きる経験ですね。
その経験のおかげで、想像と違う返答だったときでも「自分はこう考えます!」って芯を貫いて、思いをはっきり言い切るほうが良いなと学びました。
──今回の面接では想定外の返答や聞かれて困った質問はありませんでしたか?
なかったですね。でも一般的に「なんで辞めたんですか?」って質問の返答に悩む人は多いんじゃないかなと思います。
僕自身、前の職場で面接に立ち会ったことがあるんですよ。採用する側も経験している身としては、単に「上と意見が合わなくて」「人間関係がつらくて」だけを言われると「どこに行っても同じなんじゃないかなあ」と思ってしまうんですよね。
僕だったらネガティブなことをそのまま伝えるんじゃなくてポジティブなことに変換するかなって。正直に伝えるべきことと、多少取り繕ったほうが良いことがあると思うんですよね。

──Iさんから質問したことはありますか?
人事異動が年に何回あるかは聞きましたね。給与や待遇などは求人に記載されていたので、こちらからは聞きませんでした。
──ありがとうございます。今回の転職を振り返って、良かったなと思う点を教えてください。
ご縁があって、40歳という節目で転職できて良かったなと思っています。
自分が定年まであと25年働くというなかで、確実じゃないですけど“こういう進むべき道があるんだな”っていうのが見えたので。今後はその進むべき道を形にしていくことが目標ですね。
──では最後に、転職を考えている人へメッセージをお願いします。
介護業界において35歳を過ぎてからの転職は慎重に考えたほうが良いってすごく思います。僕自身、今回はタイミングと条件が合ったので転職しましたが、どちらが欠けていても踏み留まっていました。
僕らの年代はおそらく結婚してる人も多いでしょうし、やりたいことがあっても家族のことを考えると収入面を優先しないといけないこともあると思うんです。
自分の給与を下げてまでやりたい! って強い意志を貫けるならいいですが「なんとなく辞めたいな」「何か変えたいな」程度だったら一度立ち止まったほうがいいかなと思います。
この業種、この年代では勤続年数が給与に直結することも少なくないです。しっかり自分の考えを整理して、きちんと転職理由が固まってから踏み出すことをおすすめします!
ジョブメドレーからのアドバイス
今回の面接対策について、ジョブメドレーのキャリアサポートに「良い点」「改善できそうな点」を聞いてみました。
1.自分の言葉で伝えているのがGOOD!
履歴書などの書類でしっかり要点をまとめ、面接ではご自身の言葉で話すという心がけが素敵です。わからないことはわからないと正直に伝えている点も良いですね。
2.ミスマッチを防ぐ対応ができている
面接官とのフィーリングを大切にするなど、自分と施設の雰囲気が合っているかを確かめている点が素晴らしいです。介護職はチームワークが大切なお仕事。施設や働く人との相性を確認することで、ミスマッチを防げていると感じます。
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