【転職者インタビュー】公認心理師・臨床心理士2年目 26歳/転職1回

医療や介護、福祉、美容分野で働いている人のリアルな転職事情を聞くインタビュー企画。今回は「公認心理師」「臨床心理士」の資格を持つMさんに、オンラインでお話を聞きました。2018年に国家試験がスタートした「公認心理師」の仕事や気になる収入は?

公認心理師・臨床心理士インタビュー

1.今日の転職経験者はこんな人

公認心理師・臨床心理士の職歴

—まず簡単な自己紹介をお願いします。

愛媛県出身の26歳です。現在は公認心理師・臨床心理士として働いています。

—家族構成は?

両親と2個下の弟がいます。

—ご両親も医療系の職種ですか?

母が看護師です。

—自分の性格は?

負けず嫌い。変に正義感が強いところがあると思います。

—学生時代の思い出はありますか?

小さい頃に心臓の病気が見つかったので、心臓の機能を高めるため、2歳から水泳を習い始めました。幸いなことに病気も良くなり、とくにハンディキャップもなく、たくましく育ったかなと思います。

—子どもの頃に憧れていた職業はありましたか?

幼稚園では「ウエイトレスさんになりたい」とか、小学校では「水泳選手かコーチになりたい」とか言っていたんですけど、大きくなるにつれて現実的になって、高校生の頃にはもう「臨床心理士になりたい」と思っていました。

—臨床心理士 兼 公認心理師として働いているとのことですが、職歴を教えていただけますか?

4年制大学の心理学部を卒業後、大学院で2年間学んで、就労移行支援事業所に正社員で就職しました。

就労移行支援事業所は1年で辞めて、現在は放課後等デイサービス2社、精神科クリニック、カウンセリングルームの仕事を掛け持ちしています。

—ありがとうございます。今日はお休みですか?

16時からクリニックの仕事があります。午前中〜午後は少しだけフリーなんです。

—職場にコロナの影響はありますか?

仕事がお休みになったりして、いまのうちに発達検査を受けておきたいという患者さんが増えましたね。けっこうバタバタしています。

—お忙しい中、ありがとうございます。後ほどお仕事の話を詳しく聞かせてください。

2.臨床心理士を目指したきっかけ


—高校生の頃、臨床心理士になりたいと思ったきっかけは何かありますか?

弟が小学校高学年から不登校になってしまって。中学校の3年間はまったく行かなくて、「なんで行けないんだろう?」とすごく気になっていました。

わたしも思春期だったので喧嘩もしたんですけど、心配している部分が大きかったので、いろいろと調べていくうちに心理学の本に出会って、臨床心理士の仕事に興味を持ちました。

弟は発達検査を受けた結果、学習障害だとわかったんですけど、もっと理解してあげられたらなと思っています。

—ちなみに現在の弟さんは?

頑張ってはいるんですけど、まだ家に引きこもりがちです。なので弟はもちろん、同じように苦しんでいるお子さんの支援をしていきたいなと思っています。

—臨床心理士になるために、どのような進路を選択しましたか?

4年制大学の心理学部を卒業して、臨床心理士専門職大学院で2年間学びました。

—臨床心理士専門職大学院はどのような学校なんですか?

まず臨床心理士を育成する大学院は「臨床心理士専門職大学院」「臨床心理士指定大学院1種」「臨床心理士指定大学院2種」の3つに分かれます。

—それぞれどんな違いがあるんですか?

専門職大学院は1種・2種に比べて実習が多くて、学内施設やカリキュラムが充実しています。あとは学びたい分野の先生もたくさんいらっしゃったので。

また、専門職大学院の場合、臨床心理士試験の論述が免除されて筆記試験と面接のみになります。

1種は論述と筆記試験・面接。2種は1種と同じ試験内容ですが、大学院の修了後、1年以上の心理臨床経験を積まないと受験できません。

—専門職大学院ではどんなことを学ぶんですか? 大学の心理学部との違いは?

大学では心理学の基礎理論を学んで、大学院ではその学んだ理論を使って実践しようという感じです。

わたしの専門職大学院には「教育」「医療福祉」「産業」の3つのコースがあって、教育コースはスクールカウンセラーがいる学校、医療福祉コースは病院や福祉施設、産業コースはクリニックや企業に実習をしに行きます。

わたしは医療福祉コースに進んだので、病院特別養護老人ホーム児童心理治療施設などで実習をおこないました。

—選択するコースによって卒業後の進路も変わりますか?

わたしの学年は30人いたんですけど、みんな大学院で選んだコース・実習先とは違う職場に行きましたね(笑)。

—学生生活は勉強漬けで忙しかったですか?

大学は他の学部と変わらず、学生生活を楽しんでいる人が多いです。わたしは最初から大学院に行くと決めていたので、勉強とバイトばかりであまり謳歌できませんでしたね。

大学院は大学の比じゃないくらい忙しくて、勉強と実習であっという間の2年間でした。

—大学・大学院の6年間で学費はどれくらい?

だいたい年間100万円くらいなので、学費は600万円くらいだったと思います。

3.公認心理師と臨床心理士を取得


—最初に「公認心理師・臨床心理士として働いている」と言ってましたが、それぞれの資格はいつ取ったんですか?

3月に大学院を卒業して、4月に就労移行支援事業所に入職。8月に公認心理師の国家試験、11月に臨床心理士の試験を受験して資格を取りました。

—みんな就職してから受けるんですね。

だいたいの人はそうですね。就業経験は必須ではないんですけど、臨床心理士試験の面接で職場のことをすごく聞かれたので、現場で経験を積んでおいたほうがやりやすいかなと思います。

—試験対策はどのようにおこないましたか?

公認心理師の国家試験では、対策テキストと問題集をやり込みました。臨床心理士試験はそこまでプラスして勉強することはなかったと思います。

—2018年からは公認心理師の国家試験がはじまりました。「公認心理師だけ取ればいいかな」とは思いませんでした?

やっぱり「臨床心理士」は高校生から夢見てきた職業だったので。むしろ「臨床心理士は絶対に受かろう」「公認心理師は受かればいいかな」という感じで勉強してました。

—もともと「臨床心理士」を目指してきて「公認心理師」の誕生をどのように捉えてますか?

う〜ん、大学院に2年間行かなくても「4年制大学+実務経験(2年)」で取れるのはすごくいいかなと思うんですけど。

臨床心理士は資格取得後5年ごとに更新が必要なんですけど、公認心理師は更新がいらないので「質がどうなるかな?」というところが心配ではありますね。

ただ、わたしが卒業した大学院は「今後は公認心理師を育成します」と宣言していて。今後どうなっていくかわからないので、どちらも取っておこうと。国家資格はすごく強いかなと思います。

—両方の資格を持っている人が多いですか?

周りはだいたい「公認心理師」と「臨床心理士」を両方取っています。あとは「看護師」や「作業療法士」「精神保健福祉士」を持っていて「公認心理師」を取る人とか。

4.就労移行支援事業所での仕事内容・働き方


—就職活動はいつ頃から始めるんですか?

年明けに動き始めて、みんな卒業間近の2月〜3月くらいに決まります。

—最初の職場選びはどのように?

知り合いの先生の教え子が勤めている職場だったので、見学に行ったらその場で「就職するよね?」と言われて(笑)、流れで決めました。

—入職時は資格を持っていないと思うんですけど、職種としてはどういう扱いになるんですか?

「臨床心理士資格取得見込み」とか「公認心理師資格取得見込み」みたいなかたちで、「心理士だよ」と紹介されて入ります。試験に受かる前提ですね。

—就労移行支援事業所の仕事内容・働き方について教えてください。

就労を希望する方の相談に乗ったり、就職活動のお手伝いをすることがおもな仕事になります。あとはコミュニケーション能力やPCスキルを身につけるプログラムの企画・運営をしていました。

勤務時間は9時半から17時半まで。お休みは土日です。

—給料はいくらくらいでしたか?

手当などを含めて額面20万円くらい+年2回のボーナス15万円ずつくらいでした。

—仕事のやりがい・大変だったことはありましたか?

新社会人として基礎ができていない状態で自分より年上の方に教えたり、相談に乗ったりすることがすごく大変でした。

ただやっぱり、「話していて気分が楽になった」「教え方がうまい」と言ってもらえると頑張ろうと思えましたね。

5.心理職の専門性を活かせる職場に転職


—1社目の職場から転職した理由は?

心理職の専門性を活かせる職場に移りたい」と思ったからです。就労移行支援事業所はあくまでも「就労のお手伝いをする場所」で、心理検査やカウンセリングの経験を積むことが難しかったので。

いまは放課後等デイサービス2社精神科クリニックカウンセリングルームのアルバイトを掛け持ちしています。

—複数の職場で働くことを選んだ理由は?

形態の異なる事業所でいろんな経験を積みたいと思ったからです。

—職場探しはどのようにおこなったんですか?

医療福祉系の求人サイトですね。放課後等デイサービスはジョブメドレーさんを使いました。「週4日〜」という求人が多い中、シフトが柔軟なところを重点的に探しました。

—それぞれの職場では「公認心理師」と「臨床心理士」どちらの職種名で働いてるんですか?

職場で用意された名札によりますね(笑)。

放課後等デイサービスの1社目は「公認心理師」、2社目とクリニックでは「臨床心理士」と書いてあるし、カウンセリングルームでは「公認心理師・臨床心理士」と並んで書かれてます。

—両方の資格を持って働いている立場から見て、臨床心理士と公認心理師の違いはありますか?

この人は臨床心理士、この人は公認心理師と分けられることがないので、あまり違いはないと思います。

—仕事内容も変わりませんか?

変わらないですね。

—それぞれのシフトはどのように組んでますか?

月曜日は放課後等デイサービスで6〜7時間くらい。

火曜日の午前はもう1つの放課後等デイサービスで3〜4時間。午後はクリニックで4〜5時間くらい働きます。

水曜日は月曜日と同じ。木曜日は火曜日と同じ。

金曜日は夕方16時〜21時までクリニックで働いています。

—カウンセリングルームはいつ働いているんですか?

隔週だったり、月に1回だったり、ケースによって土日に半日入れています。土日のどちらかが空いてたら、月曜日と水曜日に行っている放課後等デイサービスで6時間くらい働いています。

—かなり予定をパツパツに入れてるんですね。

動いてないと落ち着かないというか(笑)、予定を埋めるとすっきりするんですよね。

—先ほど「心理職の専門性を活かしたい」という転職理由を挙げていました。希望の働き方はできていますか?

クリニックやカウンセリングルームでは心理検査カウンセリングをしたり、専門職大学院で学んだことが活かせています。

放課後等デイサービスには心理職が少ないんですけど、「こういうことをやりたい」と言ったら意見が通るので、やりたいことはできていると思います。

—放課後等デイサービスでは具体的にどんなことをしているんですか?

いまは「SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)」というリハビリテーションによって、少し怒りっぽいお子さんと話し方の練習をしてみたり、「ビジョントレーニング」という「視覚機能」を高める訓練をしたりしています。

—2年目に働き方を変えて、収入に変化はありましたか?

1年目よりだいぶ増えたと思います。だいたい月の収入が35万円〜36万円くらいなので。看護師の母の月給を超えたので少し嬉しかったですね。

—増えた要因は?

働いている時間はあまり変わらないんですけど、それぞれの職場の時給が高いからですかね。

—4つの職場の時給を聞いてもいいですか?

放課後等デイサービス2社とカウンセリングルームが時給2,500円、クリニックは時給1,500円です。

—いまの働き方のデメリットは何かありますか?

自分で税金を払わなければいけないことですかね。

あとは勉強したり、準備したりすることが多すぎて、てんてこまいになっています。もう少しシフトを減らしたほうがいいなとは思います。

—今後はどんなキャリアを考えていますか?

心理職を目指したきっかけが弟だったので、引きこもりや不登校の子の支援ができる団体をつくりたいと思っています。あとは人前で話したり、教えたりすることが好きなので、大学の講師になって心理学を教えたいです。

—大学講師になるためにはどんなことが必要ですか?

数年は現場で経験を積んで、もう一度大学院で勉強する必要があると思います。今年結婚したので、子どもを産んでから頑張ってみようかなと考えています。

ただ、出産と育児で現場を離れることへの不安があるので、いまから1〜2年くらい休めるだけの貯金を始めています。

—ありがとうございます。最後に、少しだけ私生活のお話を聞かせてください。

6.(番外編)結婚生活と趣味の話


—休日は何してますか?

図書館に行ったり、心理職を目指している人に役立つ内容をまとめてSNSで発信したりしています。あとはゲームをしたりしています。

—最後に心理学以外の趣味が出てきましたね。

『あつもり(あつまれ どうぶつの森)』をやっていて、楽しいですよ。自分の小さい世界が作れるのは、心理学の世界にも通ずるというか。

—今年結婚されたとのことですが、旦那さんも医療職だったり?

それがぜんぜん違くて、ワインソムリエと焼酎・日本酒の利き酒師の資格を持っています。物知りなので話していて飽きないです。

—外見の好みとは別に、心理学的に異性の内面を分析したりすることはありますか?

「こう接したらこうなるだろうな」という予測を立てたりはしますけど、相手の性格を分析したりはしないですね。

—その予測はだいたい合ってるんですか?

成功率は高いと思います。

—メンタリストDaiGoさんみたいな感じですかね。ちなみに「メンタリスト」や「メンタリズム」ってどういう印象をお持ちですか?

お話も上手だしすごいなとは思うんですけど、けっこう弊害も出ていて。

—弊害とは?

一般の人の中には「心理学=心を読まれたり、思い通りに操るもの」みたいなイメージを持ってしまう方もいて、心理検査を嫌がられることがあります。

「心理学」 と「メンタリズム」は別物だと言ってほしいですね。

わたしは電車で心理学の本を読んでいたときに、知らないおばさんに「いまあたしの心を読んだやろ!」って日傘で叩かれたことがあって(笑) 。

—それはひどい(笑)。

実際、気にはなるんですけど抵抗があって、本屋さんで書籍を見かけても遠ざけている感じはありますね。でもYouTubeは面白くてたまに観ています。

—ご自身が尊敬している人はいますか?

心理学にはいろんな学派があるんですけど、わたしはカール・ロジャーズという人がつくった「パーソンセンタードアプローチ」というものを軸にしたいと思っていて、それを教えてくれた先生のようになりたいと思って、ひそかに憧れています。

—本日はありがとうございました!



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