母子生活支援施設とは?入所条件と利用可能な期間、働く職員について解説

DVや経済的困窮などさまざまな悩みを抱える母子の安全を守りながら、生活を安定させるための場として機能する母子生活支援施設。施設の役割と入所条件、利用可能な期間、働く職員について解説します。

母子生活支援施設とは?入所条件と利用可能な期間、働く職員について解説_KV

目次

1.母子生活支援施設とは

母子の権利擁護と自立促進のための拠点

母子生活支援施設とは、離婚やDVなどさまざまな理由により生活困窮に陥った母子を保護し、自立に向けた生活支援をおこなう施設で、児童福祉法により設置されています。原則子どもが18歳になるまで利用でき、ほかの児童福祉施設とは異なり母子分離ではなく一緒に入所する点が特徴です。入所中だけでなく、退所後の母子世帯も支援の対象としています。

施設は入所した母子世帯が暮らす居室や学習室などがあり、運営は公設公営・公設民営に加え民設民営があります。就職や子育て、生活面など自立に向けたあらゆる支援をおこなっています。

母子生活支援施設の主な役割

母子生活支援施設の主な役割は以下のとおりです。

緊急一時保護

配偶者からの暴力などから逃れるため、緊急で一時的に母子を保護する役割があります。

保育サービスの提供

保育所に入所できない子どもを対象に保育サービスを提供しています。母子生活支援施設には保育士が配置されているため、早朝や夜間など母親の勤務時間に合わせた保育も可能です。

就労支援

母親の経済的な自立促進のため就労相談に応じ、資格取得やハローワークの求人に関する情報提供などをおこなっています。

地域の子ども向けサービス

一部の施設では地域にいる子どもを対象に、放課後学童保育の提供もおこなっているほか、夕食の提供などをおこなうトワイライトステイ、親の出張などで一時的に養育が困難な場合に利用できるショートステイサービスなども提供しています。

上記以外にも、電話相談受付や地域との交流を目的とした子ども会、納涼会などのイベントも実施しています。

2.利用条件と費用、期間

利用条件

母子生活支援施設に入所できるのは、配偶者のない女性または夫がいてもDVなどの理由から生活を共にすることが困難な女性と、養護する18歳未満の子どもです。母子が一緒に利用しなければならず、母子分離の場合は児童相談所など他機関の支援対象となります。

利用可能な期間

母子生活支援施設を退所するのは、入所者が抱える課題が解決でき安定した生活が送れるようになったタイミングや、子どもが18歳に達したときとなっています。また、復縁や再婚がきっかけとなる場合もあるようです。

子どもの年齢は原則18歳までと定められていますが、特別な事情があれば20歳になるまで利用することも可能です。ただし、施設によっては利用可能な期間を2年間などと定めているところもあります。

児童養護施設入所児童等調査によると、入所期間は「5年未満」が87.1%を占めており、なかでも「1年未満(33.1%)」が最多、次いで「1年(23.9%)」という結果でした(2018年時点)。入所者の半数以上が1年程度で退所していることがわかります。

利用料

利用料は世帯の収入に応じて異なります。生活保護を受けている世帯は無償で利用できますが、住民税非課税世帯は月額1,100円、課税世帯は2,200円から段階的に増額し、所得が多ければ最大で全額徴収となります。

階層区分所得の状況月額費用
A生活保護世帯0円
B市町村民税非課税世帯1,100円
C1市町村民税の課税世帯(所得割のない世帯)2,200円
C2市町村民税の課税世帯(所得割がある世帯)3,300円
D1〜D14所得税課税世帯4,500円〜最大全額徴収

参照:児童福祉法に基づく助産施設及び母子生活支援施設の費用の徴収に関する規則

居室はそれぞれ独立しており、台所や風呂、トイレなどがあります。各居室の光熱費や食費は自己負担となります。

入所方法

母子生活支援施設に入所するには、まず住んでいる市区町村にある福祉事務所で相談します。相談内容をふまえて適切なサービスや施設についての説明を受けてから、申し込みをおこないます。

施設によっては、入所前に施設の見学や面接などを実施しているところもあります。

3.母子生活支援施設の利用状況

施設数と入所世帯数の推移

母子生活支援施設は全国に215施設あり、3,142世帯が利用しています(2021年時点)。厚生労働省の調査によると、なかでも乳幼児を持つ世帯が全体の約5割を占め、低年齢児を抱えた状況から入所につながっている様子が伺えます。

施設と入所世帯数は過去10年で減少傾向にあります。

母子生活支援施設数と入所世帯数の推移
厚生労働省|福祉行政報告例より作成

施設数・入所世帯数減少の背景には、施設の老朽化や複数の世帯が暮らす施設のルール(門限や外出許可など)になじめないといった適応の問題などが挙げられます。

また、都道府県の平均施設数は7.4ですが、最も多い東京都が64施設なのに対し岩手県は1施設と地域格差が見られます。必ずしも希望する地域での入所ができないことから、民間支援団体が提供する保護施設などに利用者が流れている、児童扶養手当や住宅手当等の制度拡充に伴い母子ふたりだけでの生活を選んでいるとも考えられます。

入所理由の内訳

入所理由の内訳を見てみると「配偶者からの暴力(50.7%)」がもっとも多く約半数を占めています。続いて「住宅事情(16.4%)」「経済的理由(12.8%)」という結果でした。

配偶者によるDVの相談件数は2011年から2021年の10年間で約1.5倍に増えています。母子生活支援施設はDVなどの被害からの一時保護先となっていることから、入所につながっているようです。

4.母子生活支援施設で働く職員

母子生活支援施設には、以下の職員配置が義務付けられています。

職種人数
施設長1人
母子支援員1人/10世帯未満
2人/20世帯未満
3人/20世帯以上
少年指導員1人/20世帯未満
2人/20世帯以上
保育士1人/30人
※保育設備がある場合
※1施設につき最低1人は配置
調理員1人
嘱託医1人
心理療法担当職員1人
※母子10人以上に心理療法をおこなう場合

施設長

責任者として職員をとりまとめ運営をおこなうほか、母子が自立できるよう支援計画の策定もおこないます。施設長になるには以下のいずれかに該当する必要があります。

  • 医師であり、精神保健または小児保健に関して学識経験があること
  • 社会福祉士
  • 母子生活支援施設の職員として3年以上の実務経験がある
  • 上記の資格と同程度の能力があると都道府県知事が認め、相談支援業務などでの実務経験が3年以上ある

母子支援員(母子指導員)

入所者の生活状況に応じて就労や生活、養育など母子に関する相談に全面的に応じます。母子支援員になるには、以下のいずれかに該当する必要があります。

  • 都道府県が指定する児童福祉施設の職員を養成する学校、またはその他の養成施設を卒業
  • 保育士
  • 社会福祉士
  • 精神保健福祉士
  • 高等学校卒業者、もしくは通常の課程による12年の学校教育を修了し2年以上児童福祉事業での実務経験がある人

少年指導員

入所児童に対し生活面や学習指導をおこなう職種で、施設の事務員も兼務しています。少年指導員になるには、母子支援員と同じ条件に該当する必要があります。

保育士

母子生活支援施設のなかには保育所に準ずる施設を設けているところもあり、乳幼児30人につき1人の保育士の配置が義務付けられています。保育所が休みの日や、発熱などで通園できない日などに就労する保護者に代わり保育をおこないます。

調理員

外部に委託していない施設では調理員またはこれに代わる人員の配置が求められており、調理や清掃などをおこないます。

嘱託医

母子の健康管理や感染症の予防をおこないます。各施設に1人の配置が求められています。

心理療法担当職員

入所している母子はDVや精神疾患などがあり心理的ケアが必要なケースも多いため、心理療法を実施する場合は心理療法担当職員の配置が求められています。心理療法担当職員として働くには、大学などで心理学を専門的に学び修了した人、かつ個人や集団に対して心理療法をおこなう技術があることが要件です。

上記以外にも、施設によっては被虐待児など個別対応が必要な子どもに1対1のケアを実施する個別対応職員や、入所中の進学や就職の支援、退所後のアフターケアをおこなう自立支援担当職員を配置しているところもあります。

5.母子生活支援施設における一日の業務

母子生活支援施設で働く母子支援員の一日

母子生活支援施設は就労している保護者が帰宅後に相談や支援をおこなうことも多いため、交代制勤務をとっているところも多いです。また、施設内だけでなく入所者に同行し、行政機関や医療機関に出向くこともあります。

6.利用者の自立支援を担う役割

DVや経済的困窮などの問題を抱える母子の心身をサポートし、自立を支援する母子生活支援施設。近年では障がいを持つ人や外国籍の人の入所割合も増えていることから、母子が抱える問題が複合的になりつつあります。

入所者は困難な状況下にあった人がほとんどのため、心身にストレスを抱えているケースも少なくありません。母子生活支援施設で働く職員は、日常生活での支援を中心に母子の自立に向けて共に取り組み、寄り添う姿勢が大切です。

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参考

e-Gov|児童福祉施設の設備及び運営に関する基準

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