歯科衛生士の離職率は高い?主な退職理由と辞めたあとについて解説

歯科診療所や病院など、さまざまな場で活躍する歯科衛生士。人手不足の事業所も多く、離職率が高いイメージを持っている人もいるかもしれません。この記事では、歯科衛生士の離職状況と仕事を辞めた主な理由、その後の進路について紹介します。

歯科衛生士の離職率は高い?主な退職理由と辞めたあとについて解説_KV

目次

1.歯科衛生士の離職率は高い?

全体の約8割が転職経験あり

2020年に公益社団法人日本歯科衛生士会がおこなった調査によると、約8割の歯科衛生士が転職経験ありと回答しています。

歯科衛生士の転職経験
日本歯科衛生士会|歯科衛生士の勤務実態調査報告書より作成
*常勤・非常勤の全体データ

1999年時点で、転職経験がある人の割合は全体の5割程度でしたが、調査を重ねるたびにその割合が増えている点が特徴です。

 

医療産業

全産業

離職率

15.2%

15.4%

厚生労働省|令和5年雇用動向調査結果より作成
*一般労働者とパートタイム労働者の合計データ

医療産業は全産業と同程度の離職率であることがわかります。

勤務先ごとの転職経験

歯科衛生士の転職経験_勤務先別
日本歯科衛生士会|歯科衛生士の勤務実態調査報告書より作成

2019年に日本歯科衛生士会がおこなった、勤務先別の転職経験調査によると、社会福祉施設では転職経験者の割合が100%という結果でした。次いで、介護保険施設等(95.1%)、地域包括支援センター等(92.8%)と続きます。これらの施設は歯科衛生士としてある程度の経験が求められるため、中途で入職する人が多いと推察されます。

ただし、これらのデータは勤務先ごとの調査数が大きく異なるため、あくまで参考値として捉えるのがよいでしょう。

2.歯科衛生士の主な退職理由

ここからは、歯科衛生士の主な退職理由を見ていきます。勤務先別のデータも紹介しているので、就職・転職活動の参考にしてみてください。

歯科衛生士の主な離職理由
日本歯科衛生士会|歯科衛生士の勤務実態調査報告書より作成

出産・育児

比較的多い理由として挙げられていたのが、出産・育児でした。歯科衛生士の業務は立ち仕事のため身体的な負担があるほか、土曜出勤も多いため、出産・育児と両立させるのを難しく感じ、退職につながると考えられます。

仕事内容のレベルアップのため

専門的な領域や役職者への挑戦など、よりスキル・キャリアアップにつながる仕事に就くために職場を変えることもあります。

経営者との人間関係

歯科衛生士の主な勤務先である歯科診療所の約4割が個人経営です。経営者と運営方針が合わなかったり、性格の不一致があったりすると、居心地が悪くなり離職につながることもあるでしょう。

仕事内容

歯科衛生士の業務は多岐にわたります。勤務先によっては、歯科衛生士業務以外にも、受付や会計、清掃、事務作業などの比重が多いと感じるところもあるでしょう。そのため、希望する仕事内容ができる職場を求めて転職を考えることもあります。

結婚

女性がほとんどの歯科衛生士は、出産・育児のほかにも結婚によるライフステージの変化に伴い離職する人が一定数います。結婚を機に仕事を辞めたり、住む場所を変えたりする人もいることでしょう。

給与・待遇面

給料が低い、休みが取りづらいなど、給与・待遇に関する悩みは、働く意欲の低下につながります。残業が多い割に労働時間が長いなど、労働に見合った賃金や待遇がないと離職を考えるきっかけにもなります。

歯科衛生士の詳しい給与に関してはこちらも参考にしてください。
歯科衛生士の給料は安い?平均年収・月収・賞与を都道府県別、職場別に解説

家庭の事情

配偶者の転勤に伴う転居など、家庭の事情によって辞める人も少なくありません。とくに、土日・祝日の出勤もある職場では、就労継続が難しく感じてしまう可能性があります。

3.歯科衛生士を辞めたあとは?

歯科衛生士の主な退職理由にはさまざまな内容がありました。では、退職後はどのような進路をたどっているのでしょうか? 

歯科衛生士として別の職場へ転職

前職に対する不満やチャレンジしたいことがあれば、歯科衛生士として別の職場に転職することが考えられます。歯科衛生士の有効求人倍率は3.17倍と、全産業平均の1.29倍を大きく上回っています。また、高齢化により、歯科診療所だけでなく訪問歯科や病院、介護施設におけるニーズも高まっています。

*歯科衛生士の求人倍率は厚生労働省「職業情報提供サイトjobtag」より、全産業平均は厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年3月分及び令和5年度分)について」より

需要のある歯科衛生士ですが、何の対策もしないで転職に臨むのは危険です。履歴書や職務経歴書、面接など以下の記事を参考に、それぞれのマナーやコツをおさえて挑みましょう。

【歯科衛生士の履歴書・志望動機の書き方】学歴・職歴・本人希望欄の例文、写真サイズなどを全解説
【歯科衛生士の職務経歴書の書き方】例文・テンプレートつき!作成のコツを紹介
【歯科衛生士の自己PR】例文でわかる!面接・履歴書・職務経歴書で使える書き方のコツ
【歯科衛生士の面接対策】よく聞かれる14の質問と回答例、見られるポイントを解説

歯科衛生士以外の職種にキャリアチェンジ

歯科衛生士の知識や経験を活かし、異なる業界・職種へ転職する人もいます。歯科衛生士は、乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層の患者と接するため、コミュニケーションスキルや、協調性、傾聴力などさまざまなスキルが身につく仕事です。これらのスキルを活かして接客や販売、営業の仕事に就く人もいます。

また、医療・福祉業界に残り、歯科以外の分野に挑戦するのも一つの方法です。

医療・福祉の仕事ランキングはこちら
無資格・未経験OK!の職種ランキングTOP15

仕事以外に専念

出産・育児や家庭の事情を理由に退職する歯科衛生士も一定数おり、退職後は仕事以外に専念する人も少なくありません。

退職した歯科衛生士を対象におこなった調査によると、再就職の意向は25〜29歳で最も高く、30代以降は徐々にその意向が減少する傾向にあります。年齢を重ねるごとに、親の介護をはじめとした個別の事情が増え、復職が難しくなると考えられます。また、ブランクが長期化することで、復職のハードルがさらに高くなることもあります。

ブランクありの歯科衛生士の転職方法は、こちらの記事をご確認ください
歯科衛生士が転職するコツとブランクありの復職ポイント!
コンビニ店員から再び歯科衛生士へ! 10年のブランクをどう乗り越えた?

4.復職支援の活用や転職もアリ

歯科衛生士全体の約8割に転職経験があることから、離職率は比較的高い職種ということがわかりました。歯科衛生士が仕事を辞める理由は、出産・育児、結婚などのライフステージの変化に伴うものから、職場の人間関係、仕事内容とさまざまです。

高齢化の進展に伴い、歯科医療機関を受診する高齢患者数は増加しています。今後は、歯科診療所だけでなく在宅や介護保険施設、病院など、さまざまな施設で歯科衛生士のニーズが高まると期待されています。

国や自治体は、歯科衛生士の人材確保のために、離職した歯科衛生士を対象とした復職支援や、離職防止を目的とした研修事業を実施しています。ブランク明けの復職が不安な人は、こうした制度を利用するのもよいでしょう。

日本歯科衛生士会|歯科衛生士の復職支援・離職防止 技術修練研修センター

なるほど!ジョブメドレーでは、長期間のブランクを経て歯科衛生士として復職した人や、人間関係に悩んで転職した人などにインタビューをおこないました。

10年のブランクを経て復職
コンビニ店員から再び歯科衛生士へ! 10年のブランクをどう乗り越えた?

人間関係で悩み転職
【歯科衛生士インタビュー】25歳女性の履歴書・志望動機・面接対策(デンタルクリニック→歯科診療所)

給料アップを目指して転職
【歯科衛生士インタビュー】28歳女性の履歴書・志望動機・面接対策(転職経験3回)

スキルアップを目指して転職
【転職者インタビューvol.38】歯科衛生士14年目34歳/転職3回

現職で悩みが改善されない場合、転職を視野に入れてみるのもよいでしょう。ジョブメドレーでは、診療科目の特徴や勤務地、給与など希望条件を絞って求人を探せます。今後のキャリアを見据えて、納得できる職場を探してみてください。

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参考

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