【2025年秋開始】居住サポート住宅とは?対象者や支援内容、サ高住・セーフティネット住宅との違いを解説

高齢者の賃貸住宅へのニーズが増す一方で、孤独死や家賃滞納をリスクに感じる大家もいます。入居先が見つからないケースも少なくないため、こうした課題を解消して双方が安心できる環境を整えるために、2025年秋から「居住サポート住宅」制度が始まります。この記事では居住サポート住宅の対象者や支援内容、専門家による分析などを紹介します。

【2025年秋開始】居住サポート住宅とは?対象者や支援内容、サ高住・セーフティネット住宅との違いを解説

目次

1.居住サポート住宅とは?いつから始まる?

居住サポート住宅とは、高齢者などの居住者への見守り・サポートがある賃貸住宅です。2024年の住宅セーフティネット法改正によって制度化され、市区町村による認定制度が2025年秋に開始される予定となっています。長年にわたり介護施設運営に携わり、現在も公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の委員などを務める、小嶋勝利さんの解説とともに紹介していきます。

話を聞いた人

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 あんしん居住研究会 委員
小嶋 勝利さん

大学卒業後、日本シルバーサービスに入社。介護職員や施設長、施設開発責任者として45施設の開発・運営に携わる。2006年、介護コンサルタント企業ASFONの設立に参加。その後、民間介護施設紹介センターの株式会社みんかいを買収・子会社化し、新たにASFON TRUST NETWORKの取締役に就任した。現在は、老人ホームなど介護保険事業者に対する運営・営業支援業務、業界誌を中心とした執筆活動に取り組んでいる。

居住サポート住宅の対象者

居住サポート住宅の主な対象者は高齢者です。また、高齢者だけでなく、障がい者やひとり親世帯、低所得者などの賃貸住宅を借りにくい人も入居できます。このような入居者は「住宅確保等要配慮者」と呼ばれ、賃貸住宅への入居を断られるケースもあるため、支援制度の整備が進んでいます。

小嶋さんは「居住サポート住宅の登場で、高齢者の住まいの選択肢が増える。簡単な見守りがあれば、賃貸住宅で独居・夫婦だけでも十分に暮らしていける高齢者は多いはず」と新制度に期待します。

小嶋さんにはこちらの記事で、居住サポート住宅の課題や展望について詳しくお話ししていただきました。
高齢者の“住まい難民”を救う?専門家が語る「居住サポート住宅」の課題と展望

居住サポート住宅で受けられる支援

居住支援法人によるサポート

居住サポート住宅では、居住支援法人が居住者の暮らしをサポートします。具体的にはICTを活用した安否確認や、職員の訪問による見守りを提供し、居住者の状況に応じて福祉サービスにつなぐ役割も担います。居住者が高齢者の場合は、高齢者福祉の相談窓口を通じて、ホームヘルプやデイサービスにつなぐことを想定しています。

tips|居住支援法人とは

住宅セーフティネット法に基づいて都道府県が指定し、入居者への居住支援をおこなう法人です。NPO法人や社会福祉法人だけでなく、民間の会社も指定を受けることが可能です。居住支援法人は以下の業務を担います。

  • 入居者への家賃債務保証
  • 住宅相談など賃貸住宅へスムーズに入居するための情報提供・相談
  • 見守りなど要配慮者への生活支援

小嶋さんは居住サポート住宅での支援について「小規模多機能型居宅サービスと連携できれば、365日24時間、介護事業者による切れ目のない見守りも可能になる。居住支援法人だけではカバーしきれない部分を、介護事業者が引き受けるようになるのではないか」と将来像を示します。

2.高齢者の入居を支援する必要性

高齢化が進むとともに、単身で暮らす高齢者も増え、賃貸住宅のニーズは増しています。しかし、空き家が増えている市場環境であっても、賃貸住宅の大家にとって孤独死の可能性がある高齢者の入居は抵抗感があるものでした。

前身の住宅セーフティネット制度が2017年に開始

大家の不安を解消し、誰でも賃貸住宅に居住できることを目的に、居住サポート住宅の前身の「住宅セーフティネット制度」が2017年に始まりました。住宅セーフティネット制度は、住宅確保要配慮者の入居を拒まない「セーフティネット住宅」の登録制度、居住支援法人による経済的な支援などを柱とする制度です。この制度が始まって以来、居住支援法人は全国で700団体を超えました。

より安心できる環境整備のため居住サポート住宅を創設

住宅セーフティネット制度による支援が進むなかで、高齢者などが入居しやすい環境を整えるだけでなく、入居後の生活を支える仕組みも求められるようになりました。そこで、大家と入居者の双方が安心できる環境を整え、居住支援法人などが入居後もサポートする仕組みを強化するために、居住サポート住宅の認定制度が創設されました。

大家の不安について、小嶋さんは「突然死や孤独死、事故物件化による資産価値の棄損については、居住支援法人による早期発見が可能になり、残置物の処分についても法律が整備されることで、大家の不安は解消に向かうと指摘します。

3.サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)と居住サポート住宅の違い

サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)と居住サポート住宅は、制度の目的が異なるため、提供されるサービスが異なります。

居住サポート住宅は賃貸住宅を供給するための制度のため、基本的には安否確認や見守りなどのサポートのみが提供されます。一方、サ高住は2011年「高齢者住まい法」の改正により誕生した制度です。「状況把握(安否確認)」と「生活相談」が義務付けられているほか、多くの施設で食事の提供や生活の介助などが提供されています

 

居住サポート住宅

サ高住

対象者

住宅確保等要配慮者

原則的に高齢者

根拠法

住宅セーフティネット法

高齢者住まい法

サービス

安否確認・見守り

・義務:安否確認・生活相談

・オプション:食事・介助など

なお、居住サポート住宅は既存の賃貸住宅を登録する制度ですが、サ高住の場合は一般的に、設置基準を満たした物件を建てて居住者を募集します。

4.セーフティネット住宅と居住サポート住宅の違い

2017年に創設されたセーフティネット住宅と、新たに認定される居住サポート住宅との違いは、居住者へのサポートの有無にあります。制度上、セーフティネット住宅には入居者への支援は義務付けられていません。一方、居住サポート住宅には見守りがあるため、より高齢者に適した住宅環境を提供できます。

なお、どちらも住宅セーフティネット法に基づいて認定・提供される賃貸住宅ですが、どちらかのみの認定を受けることも可能です。

 

居住サポート住宅

セーフティネット住宅

認定者

市区町村

都道府県

サポートの有無

あり

必須でない

制度の主目的

入居・居住中の支援

賃貸住宅とのマッチング・入居

認定基準

・居住支援法人による居住支援があること

・人感センサーを備えること など

・各戸25平方メートル以上

・耐震性を有し、一定の設備を設置していること

など

想定する利用者

主に高齢者

高齢者・障がい者・ひとり親世帯・低所得者

5.居住サポート住宅の認定基準・欠格条項

認定基準

居住サポート住宅は国の制度であるため、認定を受けるための基準が定められています。認定を受けるためには、床面積・構造・援助内容などの基準を満たす必要があります。以下の項目に基準が設けられる予定で、国土交通省・厚生労働省が詳細を検討中です。

  • 床面積
  • 構造・設備
  • 戸数
  • 家賃・賃貸条件
  • サポート内容

欠格条項

居住サポート住宅は高齢者や低所得者の入居が想定されるため、いわゆる「貧困ビジネス」のターゲットにならないよう、不適格な事業者を排除するための「欠格条項」も定められています。事業者が以下のいずれかに該当する場合、認定を受けることはできません。主な欠格条項は以下のとおりです。

  • 暴力団員など
  • 破産手続きをしている
  • 2年以内に拘禁刑以上の刑で服役していた
  • 2年以内に認定を取り消された

6.普及が期待される居住サポート住宅

単身世帯高齢者の増加や持ち家率の低下によって、高齢者が賃貸住宅に入居するニーズが増しています。一方で、物件の大家にとっては孤独死は大きなリスクです。居住サポート住宅の認定制度によって、両者の不安が軽減される環境の整備が期待されます。

居住者の暮らしをサポートする居住支援法人は福祉サービスにつなぐ役割も担うため、医療や介護の現場で勤務する人にとっても、連携が必要になる可能性もあるでしょう。

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参考

読者の方へのメッセージ

居住サポート住宅は高齢者の住まいの新たな選択肢に

これまで高齢者の住まいは在宅か施設かの2択でした。居住サポート住宅が定着していけば「第3の選択肢」になるはずです。そのためには、家族や関係する事業者の相互理解が重要です。関係者が英知を絞ることで、「第3の選択肢」として成立させていけると考えています。

小嶋 勝利 (日本賃貸住宅管理協会 あんしん居住研究会 委員) 2025/04/15

プロフィール

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大学卒業後、日本シルバーサービスに入社。介護職員や施設長、施設開発責任者として45施設の開発・運営に携わる。2006年、介護コンサルタント企業ASFONの設立に参加。その後、民間介護施設紹介センターの株式会社みんかいを買収・子会社化し、新たにASFON TRUST NETWORKの取締役に就任した。現在は、老人ホームなど介護保険事業者に対する運営・営業支援業務、業界誌を中心とした執筆活動に取り組んでいる。

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