目次
- 1. 介護医療院とは
- 医療と介護の両方を提供する介護保険施設
- 介護医療院の入所条件
- 介護医療院の種類
- 介護医療院の施設数の推移
- 2. 介護医療院と介護・医療施設の違い
- 介護医療院と老健・特養の違い
- 介護医療院と療養病床の違い
- 3. 介護医療院にかかる費用
- 4. 介護医療院の入所の流れ
- STEP1:要介護認定を受ける
- STEP2: 介護医療院を探す・見学する
- STEP3: 必要書類を提出し入所できるか判定を受ける
- STEP4:入所する本人・家族が担当者と面談する
- 5. 介護医療院に入所するメリット・デメリット
- 6. 介護医療院で働く職種
- 医師
- 看護職員(看護師・准看護師)
- 介護職員
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)
- 薬剤師
- 管理栄養士・栄養士
- リハビリ専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)
- 診療放射線技師
- 調理員・事務員など
- 7. 介護医療院で広がるケアの可能性
1. 介護医療院とは
医療と介護の両方を提供する介護保険施設
介護医療院は長期療養が必要な要介護者に、医療と介護の両方を提供する介護保険施設です。介護職だけでなく、医師や看護師、薬剤師、リハビリ職などが配置されており、入所者は生活の場で医療やリハビリを受けることが可能です。
介護医療院では、長期療養に必要な喀痰(かくたん)吸引や経管栄養などといった医療的ケアだけでなく、看取りやターミナルケアまで提供されます。また、生活施設でもあるため、日常の食事や排泄などの介助、レクリエーションなどもおこないます。なお、介護医療院で受けるサービスには介護保険が適用されます。
tips|介護医療院ができた経緯は?
介護保険施設は従来、介護老人保健施設(老健)、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護療養型医療施設(介護療養病床)の3種類でした。このうち、介護療養型医療施設は医療の必要性の低い高齢者が長期的に入所するケースが多く、社会保障費を圧迫することが課題となっていました。そのため、2018年に介護療養型医療施設の後継として介護医療院がスタートし、介護療養型医療施設は2024年3月をもって廃止されました。
介護医療院の入所条件
介護医療院に入所できるのは、要介護1〜5に認定された人のみです。要支援1〜2では利用できません。
要介護認定は原則、介護保険に加入する65歳以上の第1号被保険者を対象としています。ただし、40歳〜64歳の第2号被保険者も、関節リウマチやパーキンソン病などの特定疾患が原因の場合は、要介護認定を受けられます。
要介護度について詳しくはこちらの記事でも解説しています。
>要介護度(要介護レベル)とは?
介護医療院の種類
介護医療院は入所者の病状に応じて、Ⅰ型とⅡ型に大別されます。Ⅰ型は比較的病状が重く、急変のリスクがある入所者のための施設で、病院同様に医師や看護師が配置されています。一方、Ⅱ型では比較的容体が安定した入所者を受け入れており、人員基準は介護老人保健施設と同等以上となっています。
介護医療院の施設数の推移
2018年以降、介護医療院の施設数は増加を続けています。これは介護療養型医療施設から移行する施設が多いためで、2022年10月時点では全国で730施設となっています。
2. 介護医療院と介護・医療施設の違い
高齢者が暮らす施設にはさまざまな種類があるため、どの施設が適しているか慎重に検討する必要があります。ここでは、「介護医療院と老健・特養の違い」と「介護医療院と医療施設の療養病床の違い」に分けて解説します。
介護医療院と老健・特養の違い
現在、介護保険施設は介護医療院、介護老人保健施設(老健)、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の3種類となっています。特別養護老人ホームは特養とも略されます。これらは設置の目的が異なるため、利用期間や対象者、提供されるサービスに違いがあります。
介護医療院 |
老健 |
特別養護老人ホーム |
|
---|---|---|---|
目的 |
長期療養・生活施設 |
在宅復帰・在宅支援 |
生活施設 |
利用期間 |
長期 |
短期 |
長期 |
対象者 |
要介護1〜5 |
要介護1〜5 |
要介護3〜5 |
医療サービス |
⚪︎ |
⚪︎ |
× |
介護サービス |
⚪︎ |
⚪︎ |
⚪︎ |
看取り |
⚪︎ |
× |
⚪︎ |
介護医療院と老健の主な違いは、施設の目的と利用期間にあります。老健は病院からの退院後に、リハビリや介護を必要とする高齢者が在宅復帰を目指す施設です。原則3ヶ月の入所期間が設けられており、原則的に看取りには対応していません。一方、介護医療院は生活施設なので、長期の入所を前提としており、看取りやターミナルケアにも対応しています。
介護医療院と特養では、対象者と医療サービスの有無が異なります。特養は、在宅での生活が困難になった要介護3以上の高齢者の生活施設です。生活施設なので終身利用が可能で、看取りにも対応していますが、医療サービスは必要最低限しかありません。一方、介護医療院は医療の必要な要介護1以上の高齢者を対象としており、必要な医療的ケアを提供します。
介護老人保健施設(老健)について詳しくはこちらの記事でも解説しています。
>老健(介護老人保健施設)とは?
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)について詳しくはこちらの記事でも解説しています。
>特別養護老人ホーム(特養)とは?
介護医療院と療養病床の違い
療養病床とは、病院・診療所で、長期療養を必要とする患者が入院するための病床です。療養病床がある医療施設を「療養病院」「療養型病棟」と呼ぶ場合もあります。
介護保険施設である介護医療院と、医療施設の療養病床とでは入所する人の「医療区分」が異なります。医療区分とは、患者の医療の必要性を3段階で示す基準です。療養病床には原則的に、医療区分3(人工呼吸器を使用している状態など)と医療区分2(筋ジストロフィー、パーキンソン病関連疾患など)の患者が入院します。一方、介護医療院には医療区分1(医療区分3・医療区分2に該当しないケース)の人も入所できます。
介護医療院 |
療養病床 |
|
---|---|---|
対象者 |
医療区分1〜3 |
医療区分2〜3 |
適用される保険 |
介護保険 |
医療保険 |
提供サービス |
医療・介護 |
医療 |
なお、療養病床にはかつて、医療療養病床と介護療養病床の2種類がありましたが、介護療養病床は2024年3月で廃止されました。
3. 介護医療院にかかる費用
介護医療院に入所すると「施設サービス費」がかかります。さらに、光熱水費などの居住費、食費、日常生活費なども必要です。一般的に合計の費用負担は、民間施設より軽く、特養よりは重くなります。施設サービス費は、地域や施設形態、居室の種類、人員配置によって異なるため、詳細については施設に確認しましょう。
利用者負担が1割の場合で、1日あたりの代表的な施設サービス費は以下のようになります。
Ⅰ型介護医療院 |
|||
---|---|---|---|
従来型個室 |
多床室 |
ユニット型 |
|
要介護1 |
721円 |
833円 |
850円 |
要介護2 |
832円 |
943円 |
960円 |
要介護3 |
1,070円 |
1,182円 |
1,199円 |
要介護4 |
1,172円 |
1,283円 |
1,300円 |
要介護5 |
1,263円 |
1,375円 |
1,392円 |
Ⅱ型介護医療院 |
|||
---|---|---|---|
従来型個室 |
多床室 |
ユニット型 |
|
要介護1 |
675円 |
786円 |
849円 |
要介護2 |
771円 |
883円 |
951円 |
要介護3 |
981円 |
1,092円 |
1,173円 |
要介護4 |
1,069円 |
1,181円 |
1,267円 |
要介護5 |
675円 |
786円 |
849円 |
厚生労働省|介護報酬の算定構造 介護サービスより作成
※介護報酬1単位あたり10円として算出。単位数は全国一律ですが、単価は地域ごとに異なるため上記は目安としてください
4. 介護医療院の入所の流れ
STEP1:要介護認定を受ける
介護医療院に入所するには、要介護認定が必要です。認定を受けるには、市区町村にある地域包括支援センターに相談、または役所の福祉窓口で申請します。
STEP2: 介護医療院を探す・見学する
すでに病院に入院している場合は、病院の地域医療連携室の医療ソーシャルワーカーが支援します。病院や介護施設に入院・入所していない場合、介護医療院がどこにあるか、厚生労働省の「介護事業所・生活関連情報検索」から探すことが可能です。また、都道府県のウェブサイトで一覧を公開している場合もあります。
STEP3: 必要書類を提出し入所できるか判定を受ける
希望する介護医療院が見つかったら、「診療情報提供書」「健康診断書」など必要書類を基に、入所が可能か判定されます。
STEP4:入所する本人・家族が担当者と面談する
入所が確定すると本人・家族と介護医療院の担当者との面談が設定されます。治療方針や療養生活についての説明があり、入所日が決まります。
5. 介護医療院に入所するメリット・デメリット
介護医療院は医療と介護を一つの施設で提供する点が特徴です。ただし、介護医療院にはメリットとデメリットがあり、十分に理解したうえで入所を検討することが重要です。
介護医療院のメリット
- 医療と介護を同じ施設で受けられる
- リハビリも受けられる
- 看取り・ターミナルケアにも対応している
- 生活施設なのでレクリエーションなども提供される
- 民間施設よりは費用負担が軽い
介護医療院のデメリット
- 特別養護老人ホームなどよりは費用負担が重い
- 施設が少なく近隣に選択肢が見つからない可能性がある
- 個室がない施設もある
6. 介護医療院で働く職種
介護医療院ではさまざまな職種の配置が義務付けられています。
Ⅰ型介護医療院 |
Ⅱ型介護医療院 |
|
---|---|---|
48:1(施設で3人以上) |
100:1(施設で1人以上) |
|
看護職員 |
6:1 |
|
5:1 |
6:1 |
|
150:1 |
300:1 |
|
定員100以上で1人 |
||
100:1(施設で1人以上) |
||
リハビリ専門職 |
適当数 |
|
適当数 |
||
調理員・事務員など |
適当数 |
医師
介護医療院の医師は、Ⅰ型では入所者48人に対して1人、Ⅱ型では100人に対して1人が配置されます。診察や検査指示、薬の処方などをおこなうだけでなく、看護職員や介護職員、リハビリ専門職の役割を理解し、チームをまとめる役割が求められます。
看護職員(看護師・准看護師)
入所者6人に対し1人の看護職員が配置されます。看護職員は医師や他職種と連携しながら、喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケア、血圧・体温測定といった健康管理を担当します。
介護職員
介護職員は、介護医療院の種類に応じて入所者5〜6人に対して1人が配置されます。食事や入浴、排泄の介助などの介護サービスを通じて、入所者の生活を支えます。
介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護医療院には介護支援専門員も配置されます。入所者一人ひとりの病状や要介護度などを踏まえ、最適な介護サービスを提供できるようマネジメントします。
薬剤師
Ⅰ型とⅡ型のどちらの介護医療院にも、薬剤師が配置されます。薬剤師は医師の指示のもと調剤業務にあたり、入所者への服薬指導も担当します。
管理栄養士・栄養士
介護医療院にはさまざまな病状・介護度の入所者がいるため、食事のケアも重要です。管理栄養士・栄養士は、嚥下食や流動食など一人ひとりに合わせた食事を用意します。
リハビリ専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)
理学療法士は運動機能、作業療法士は日常動作、言語聴覚士は嚥下機能や言語コミュニケーションが専門分野です。それぞれの分野の機能訓練を中心に、入所者のリハビリ計画を作成し、リハビリの実践・指導を担当します。
診療放射線技師
介護医療院には診療放射線技師が配置される場合もあります。診療放射線技師は医師の指示のもとで、一般エックス線撮影(レントゲン)や消化管造影検査など、放射線を用いた検査や画像診断に携わります。
調理員・事務員など
高齢者の生活を支える介護医療院では、施設の運営を担うため、調理員や事務員も欠かせない存在です。調理員は管理栄養士や栄養士と連携しながら食事の提供を担当します。事務員はさまざまな職種と協力しながら、請求事務などを進めます。
7. 介護医療院で広がるケアの可能性
長期療養が必要な要介護の高齢者に、医療と介護を提供する介護医療院。介護医療院は増加を続けており、今後もニーズが高まると予想されます。
この施設では看護職や介護職、リハビリ職などさまざまな職種が協力しながら、高齢者の生活を支えています。介護医療院は増加を続けており、今後もニーズが高まると予想されます。
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