看護師の離職率11.8%は高い?他業種との比較からよくある退職理由まで徹底解説

看護師の離職率の平均は11.8%です。この数字が高いのかどうか、他業種や病院規模・地域別などで比較調査しました。よくある退職理由と改善例も併せて紹介します。

看護師の離職率11.8%は高い?他業種との比較からよくある退職理由まで徹底解説

目次

1.正規雇用の看護師の離職率

離職率の推移

慢性的な人材不足が問題となっている看護師ですが、他業種と比べて離職率は高いのでしょうか? 厚生労働省が発表している2022年度の全産業平均の離職率は15.0%です。一方、正規雇用の看護師の離職率は過去10年間で10.3〜11.8%で推移しており、全産業平均と比べるとさほど高くないことがわかります。

正規雇用の看護師全体の離職率は10.3〜11.8%で推移
日本看護協会|2023年 病院看護実態調査より作成

また、上記の調査から、新卒の離職率は既卒の離職率よりも低いことがわかります。その理由としては、新卒は奨学金の返還免除を受けるために2〜5年程度の継続勤務が必要なことなどが考えられます。

2020年以降に離職率が増加した背景には、新型コロナウイルス感染症による影響があります。日本看護協会が2020年に実施した「看護職員の新型コロナウイルス感染症対応に関する実態調査」によると、病院全体の15.4%で新型コロナウイルス感染症対応を理由とした離職があったと回答しています。

都道府県別の離職率

病院に勤める看護師の正規雇用者の離職率は、地方ほど離職率が低く、都市部ほど高い傾向が見られます。

参照:日本看護協会|2023年 病院看護実態調査報告書

都道府県別 看護師の離職率

北海道

11.9%

滋賀県

12.6%

青森県

8.4%

京都府

11.2%

岩手県

6.5%

大阪府

14.3%

宮城県

8.5%

兵庫県

13.7%

秋田県

7.5%

奈良県

11.7%

山形県

8.2%

和歌山県

10.5%

福島県

9.6%

鳥取県

7.2%

茨城県

10.7%

島根県

9.3%

栃木県

11.3%

岡山県

9.9%

群馬県

8.1%

広島県

10.1%

埼玉県

13.0%

山口県

9.6%

千葉県

13.6%

徳島県

7.2%

東京都

15.5%

香川県

8.4%

神奈川県

13.7%

愛媛県

10.9%

新潟県

8.7%

高知県

10.2%

富山県

8.6%

福岡県

12.3%

石川県

8.9%

佐賀県

9.9%

福井県

9.1%

長崎県

9.8%

山梨県

10.7%

熊本県

11.4%

長野県

9.3%

大分県

10.4%

岐阜県

11.1%

宮崎県

11.3%

静岡県

11.2%

鹿児島県

12.4%

愛知県

12.7%

沖縄県

13.4%

三重県

11.2%

11.8%

上記のデータからは、離職率が最も低い都道府県は岩手県の6.5%で、全国平均よりも5.3ポイント低いことがわかります。一方、離職率が最も高い都道府県は東京都の15.5%で、平均よりも3.7ポイント高い結果となりました。

なお、都心部の病院の離職率が高い原因は、ネガティブな理由だけではなく、病院数が多いため次の転職先候補が見つかりやすいことも考えられます。

病院規模別の離職率

病床規模別の離職率に関する調査からは、規模が大きいほど離職率が低いことがわかります。

参照:日本看護協会|2023年 病院看護実態調査報告書
 

正規雇用者

新卒

既卒

11.8%

10.2%

16.6%

99床以下

12.7%

13.8%

19.5%

100~199床

12.8%

12.3%

18.7%

200~299床

11.8%

10.3%

16.2%

300~399床

11.3%

10.8%

15.9%

400~499床

11.1%

10.4%

13.0%

500床以上

11.5%

9.2%

11.6%

大規模病院の離職率が低い理由として、研修制度や福利厚生が充実していることなどが考えられます。また、診療科間の異動も可能であるため、職場環境を変えて希望する経験が積めることも、離職を減らす要因となっている可能性があります。

病院の種類別の離職率

病院の種類別の離職率に関する調査からも、規模の大きさと離職率の関係性がみられました。

参照:日本看護協会|2023年 病院看護実態調査報告書
 

正規雇用者

新卒

既卒

11.8%

10.2%

16.6%

国立

10.6%

9.2%

11.9%

公立

8.8%

9.8%

10.0%

日本赤十字社

9.8%

9.0%

10.2%

済生会

11.9%

12.9%

12.3%

厚生農業協同組合連合会

9.7%

10.3%

10.8%

社会保険関係団体

10.7%

8.5%

12.0%

公益社団法人

公益財団法人

13.1%

10.7%

14.9%

私立学校法人

13.5%

9.2%

13.3%

医療法人

14.3%

11.5%

18.5%

社会福祉法人

12.4%

10.9%

17.5%

医療生協

11.2%

9.8%

13.6%

会社

10.2%

9.7%

12.8%

その他の法人

12.8%

11.1%

17.3%

個人

17.6%

15.6%

34.4%

*「国立」には、労働者健康安全機構、地域医療機能推進機構を含む
*「公立」には、一部事務組合、地方独立行政法人、公立大学法人を含む
*「社会保険関係団体」には、健康保険組合およびその連合会、共済組合およびその連合会、国民健康保険組合を含む
*「その他の法人」には、一般社団法人、一般財団法人、宗教法人等を含む

 

上記の調査で、正規雇用者の離職率が最も低かったのは公立病院の8.8%です。既卒の離職率も最も低い10.0%となっており、既卒全体の平均16.6%と比べて6.6ポイント低くなっています。

一方、離職率が最も高かったのは個人病院です。正規雇用者全体が17.6%、新卒が15.6%、既卒が34.4%と、全項目で最も高い結果となりました。

離職率が低い職場の特徴まとめ

ここまでの調査結果から考えられる、離職率が低い職場の特徴は以下のとおりです。

  • 地方の病院
  • 病床数が200床以上の規模が大きい病院
  • 公立病院や公的病院

同じ職場に長く勤めたい場合、就職先・転職先の候補を探す際は、給与や条件のほかに、これらの特徴もあわせて確認することをおすすめします。

2.医療・福祉業界の離職率が高い理由とは

厚生労働省が2024年に発表した看護師を含む医療・福祉全体の離職率は15.3%です。16種類に分けられる産業分類のなかでは、上位4位に位置する順位となっています。

医療福祉業界の離職率は15.3%
厚生労働省|令和4年雇用動向調査結果の概要より作成

医療・福祉業界の離職率が高い理由としては、主に以下2つの原因が挙げられます。

慢性的な人材不足

少子高齢化が進み、医療・福祉業界は慢性的な人手不足に直面しています。とくに看護師の人材不足は深刻化しており、2025年に約13万人不足すると予測されています。

職場によっては、人手不足により看護師一人あたりの負担が増すだけでなく、教育やコミュニケーションの時間を十分に確保できない場合もあります。その結果、新人看護師が成長を実感できなかったり、職員同士の人間関係に問題が生まれたりして、さらに人材が流出する悪循環に陥る医療機関も少なくありません。

他職種と比べて転職しやすい

看護師は、ほかの職種と比べて求人が多い職種です。求職者1人に対する求人数の割合を示す有効求人倍率において、2022年度の看護師は2.20倍となっており、全職種の1.19倍を大きく上回ります。

また、看護師を必要とする病院や診療所は全国各地にあることや、介護施設や保育所などでも資格を活かせる点も、看護師が転職しやすい理由といえるでしょう。

3.看護師が仕事を辞めたい主な理由

日本医療労働組合連合会が2022年に発表した調査報告書によると、看護師の仕事を辞めたい主な理由は以下のとおりです。

やめたい理由の5割以上が「人手不足で仕事がきつい」
日本医療労働組合連合会|2022年 看護職員の労働実態調査「報告書」より作成

理由1:人手不足で仕事がきつい

離職を考える看護師の半数以上が、その理由に「人手不足で仕事がきつい」を挙げています。回答者の年齢を見ると、若年層の割合が高く、年齢を重ねるにつれて下がっていくことがわかります。

若年層ほど「仕事がつらい」と感じる傾向に
日本医療労働組合連合会|2022年 看護職員の労働実態調査「報告書」より作成

また、「人手不足で仕事がきつい」と回答した看護師を勤務形態別に見ると、日勤のみの場合は44.8%なのに対し、3交替制と2交替制の場合は60%以上となっています。

理由2:賃金が安い

退職を考える看護師のうち42.6%が賃金の安さを理由に挙げています。厚生労働省が発表している年収データを見ると、看護師全体の平均年収は全産業の平均年収と比べて、約40万円低いことがわかります。

厚生労働省|令和5年賃金構造基本統計調査より作成
 

看護師

全産業平均

全体

468万8,100円

508万1,600円

女性

467万5,000円

417万500円

男性

480万5,800円

553万7,700円

 

女性看護師の平均年収は全産業平均と比べて高いものの、夜勤や命を預かる業務の責任の重さに対し「賃金が見合わない」と感じるケースがあると考えられます。また、男性看護師は全産業平均よりも低い年収であるため、賃金面での不満が高まっている可能性があります。

看護師の給料について詳しくはこちら
【都道府県別】看護師の給料ランキング!3位埼玉、2位兵庫、1位は?

理由3:休暇が取りにくい

一般的に看護師の勤務形態はシフト制です。限られた人員でシフトを組むため、欠勤時には代理を探す必要があります。また、連休を取るとほかの人に負担がかかるなど、休みを取りにくい場合があります。

また、職場によっては、年末年始やゴールデンウィークといった休暇シーズンに休みが取りにくいこともあります。とくに子育て世代の看護師にとって、保育園が休みの日や、学校行事の日に子どもと過ごせないことは、ストレスの要因となっているようです。

4.看護師の離職率を改善した成功事例

働き方や人間関係による離職問題は、業務の見直しや相談環境を設けることで改善が期待できます。ここからは、実際に離職率が改善した事例を3つ紹介していきます。

(1)マスクの色分けによって残業時間が減少

業務量を減らさずに残業時間のみを削減した事例として、日勤と夜勤でマスクの色を変えた取り組みがあります。マスクの色を変えて職員の勤務終了時刻を可視化することで、医師が指示を出す看護師が明確になり、職員が時間をより意識するようになるといった効果がみられました。

その結果、マスク2色制の導入の前後を比べると、残業時間が毎月1割以上減少しました(出典:産経新聞|マスク色分けで残業時間減少 一目で分かる看護師の働き方改革)。

(2)評価制度の見直しで離職率が低下

評価制度を見直した事例では、現場の不公平感を減らすことに成功しています。

働き方改革の恩恵を受けた職員がいる一方、ほかの職員に負担が集中するケースは少なくありません。そこで「評価項目の達成度に応じて賞与や昇給額が上がる評価制度」と「やむを得ない理由で勤務が制限された場合でも一定以上の待遇を保証する制度」を同時に設け、全職員のモチベーション向上を図りました。

その結果、制度導入前の離職率が15〜20%だったのに対し、導入後は5〜9%へ低下させることに成功しています(出典:日経メディカル|離職率が半減! 中小病院の人事考課の工夫とは)。

(3)情報の周知徹底で年休の取得率が向上

有休の取得率を向上させることで、職員の離職率が改善した事例もあります。

冊子や院内新聞を発行して病院の労働条件を周知し、基準が曖昧だった有休申請方法を見直すことで、職員の有休取得率が向上しました。これにより、離職率の改善にもつながっています(出典:ふくおか地域医療支援サイト|勤務環境改善取組事例:医療法人社団敬信会 大法山病院)。

5.長く働ける職場選びの3つのポイント

(1)年収だけでなく福利厚生もチェック

就職先の条件面を比べるときは、給与だけでなく福利厚生も確認しましょう。想定年収が低くても、住宅関係の補助や、保育補助、旅行やレジャーの補助・優待などを活用すれば、結果的に手元に残るお金が増える可能性があります。

(2)勤務形態をチェック

先に紹介した調査結果から、3交替と2交替で勤務する看護師は「人手不足で仕事がきつい」と感じやすい傾向があることがわかりました。そのため、働きやすさを重視して職場を選ぶなら勤務形態もチェックしましょう。

(3)教育体制をチェック

スキルアップやキャリアアップを目指したい方は、研修制度や資格補助などの教育体制をチェックしましょう。

病院によって、マンツーマンで指導してもらえる「プリセプター制度」や、所属病棟以外の病棟をローテーションしながら研修を受けられる「ジョブローテーション制度」、外部講師を招いた「院内研修」など、さまざまな教育体制があります。

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6.離職の前にチェック!転職活動で考えるべき3つのこと

(1)転職の目的を決める

求人を探す前に、まずは転職の目的を決めましょう。例えば、待遇や働き方、人間関係や教育体制など、転職を考え始めたきっかけと理由を明確にします。次に、転職の目的を叶えるために次の職場で実現したいことを考えます。このときは「成長できる環境で〇〇に挑戦したい」など、ポジティブな面に目を向けて考えましょう。

退職理由と次の職場で実現したいことをまとめることで、転職の軸と目的を明確にできます。

(2)スキルやキャリアの棚卸しをする

今までの仕事内容や実績を振り返り、スキルやキャリアを整理しましょう。自分の強みやアピールポイントが明確になり、応募書類の自己PRや、面接で使えるエピソードが見つけやすくなります。

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(3)転職の条件を絞る

仕事内容、収入、働き方、福利厚生など、転職先に求める条件を整理しましょう。その際、必須条件と希望条件に分けて優先順位をつけます。

例えば、残業時間の長さに悩んで転職活動を始めたのに、給料の高さだけで転職先を選んでしまうと、同じ理由で辞めたくなる可能性があります。

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7.看護師が働く病院以外の職場は?

看護師が活躍できる場所は、病院だけではありません。看護師の約3割が病院以外でも活躍しています。

*5%未満の社会保険施設・助産所・事務所・保健所・養成所/研究機関などは「その他」に合算

病院以外で働く看護師が最も多いのは診療所(クリニック)で、全体の13.7%を占めています。診療所とは、病床数が19床以下の医療機関を指します。診療所は、病院ほど難度の高い処置をおこなう機会が少ないほか、日曜・祝日休み、夜勤なしの院が多いため、比較的ゆとりを持って働ける環境といえるでしょう。

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次に看護師が多い職場は介護保険施設(7.7%)です。介護保険施設では、高齢者や要介護者が日常生活を送るための支援をおこないます。特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、デイサービスなどがあり、看護師はそれぞれの施設で利用者にあわせた医療サービスを提供します。

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訪問看護ステーション(5.4%)では、利用者の自宅や利用している施設へ訪問し、看護サービスを提供します。定期的に利用者の自宅へ訪問するため、患者との関係が深めやすく、2022年に実施された看護師の仕事に対する調査では、一般病棟や介護施設と比べて、やりがいを感じやすい職場という結果となっています。

*参照元:日本医療労働組合連合会|2022年 看護職員の労働実態調査「報告書」

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8.離職率はあくまで判断材料の一つ

正規雇用看護職員の離職率は11.8%です。しかし、個人病院の既卒正規雇用者は34.4%と高い一方、岩手県の正規雇用者は6.5%と低いなど、勤務先の規模や地域によって大きな差があります。

看護師が仕事を辞めたいと思う理由は、働き方や賃金、仕事内容などさまざまです。これらの悩みが現職で改善されない場合、転職を視野に入れるのもひとつの手です。ジョブメドレーでは、勤務時間の特徴や、福利厚生、給与などの条件を絞って求人を検索できます。今後のキャリアを見据えて、納得できる職場を探してみてください。

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