目次
1.NICU(新生児集中治療室)とは
NICU(Neonatal Intensive Care Unit:新生児集中治療室)は、早産や低体重、そして先天性の疾患や障がいがある新生児のケアをおこなう治療室です。NICUに入院するのは通常産後一度も帰宅していない新生児で、心電図、人工呼吸器、輸液ポンプ、新生児用の保育器などの医療機器がそろい、24時間体制で高度な治療・管理をおこないます。
人員配置は、新生児医療担当医師が24時間常駐、看護師は3床(新生児3人)に対し1人以上と定められています。新生児の体重が2,000gを超え状態が安定し、自宅でのお世話ができるようになったら退院、またはGCU(新生児回復室)に移ります。早産の場合は出産予定日から1ヶ月程度で退院することが多いようです。感染予防のために面会は赤ちゃんの両親に限られていることが多くなっています。
2.NICU看護師の仕事内容は?
バイタルチェック
NICUにおける看護師の仕事内容は、新生児のバイタルチェックと看護が大きな割合を占めます。体温、体重、点滴の量、、モニター確認や管理をおこない、わずかでも異変があればすぐに医師の指示をあおぎます。
新生児の日常的なケア
そのほか、呼吸器の管理や薬剤の管理と投与をおこなったり、母乳・ミルクの授乳(飲めない場合は母乳塗布や経管栄養)やオムツの交換も看護師の役割です。発達が未熟で自力で動けない新生児がストレスなく過ごせるよう、ポジショニング(良肢位保持)や子宮内の状態に近づける環境調整などのディベロップメンタルケア(新生児の発達を促すケア)をおこないます。
家族の精神的なケア
赤ちゃんの親に対する精神的なケアも、NICU看護師の重要な役割。出産の負担による心身の不調や、子の入院の不安を抱えている家族へのサポートのほか、赤ちゃんの状態が落ち着いてきたら沐浴指導など育児手技アドバイスをおこないます。
3.NICU看護師に向いているのはどんな人?
コミュニケーション力とストレス耐性が必要
もとより看護師は協調性とストレス耐性が求められる仕事ではありますが、NICU勤務はその業務の特殊性から、とくにこれらのスキルが必要だといえるでしょう。
NICUでは重症の新生児の看護をしつつ、ただでさえ不安の多い産褥期にさまざまなショックや疲労を抱えた家族とも関わります。不安を与えないよう注意を払うことはもちろん、本来触れ合う時期に離れて過ごす赤ちゃんと家族の愛着形成の橋渡しになるよう、日々の様子を伝えることも大切です。
また、体の異変を自ら伝えることができず、環境の変化に非常に弱い新生児のモニタリングでは些細な変化も見逃してはいけません。NICUは命を預かるプレッシャーや、ときに全力を尽くしても亡くなってしまうなど高い緊張感とストレスにさらされる現場でもあります。看護師自身がつぶれてしまわないようストレス解消法を模索したり、配慮はしつつも感情移入しすぎないなど、過酷さへの適応力も求められます。
4.NICUで働くメリット・デメリットは?
NICU勤務のメリット
NICUでは重篤な疾患などを抱える新生児が処置の対象となるため、一般病棟やICUでは経験することができない特殊な症例知識や高度な医療スキルを得られる点は大きなメリットといえます。
また、NICUではほかの病棟にはない医療機器を扱うため、それらの知識や操作技術を学べるところも大きな強みでしょう。
NICU勤務のデメリット
NICUでは、基本的には新生児しかケアをしません。新生児は大人と比べ大幅に身体が小さく、投与する薬剤の適量やバイタルの正常値が異なるため、NICUでの勤務から一般病棟へ戻ったときにその違いに戸惑ってしまうかもしれません。
また、NICUでは24時間体制で新生児の容態変化に注意を払わなければなりません。勤務中、常に気を張り詰めているのは想像以上に負担になることも。慢性期や成人の病棟とは違ったストレスがかかる点は気をつける必要があります。
5.NICUで働くやりがいは?
NICUにいる新生児は生まれたときから重篤な疾患やハンデを抱えています。弱っていた新生児が懸命な治療によって、徐々に元気になっていく姿を見られるのは何物にも代えがたい感動と喜びがあるでしょう。NICUで働くことで、ほかの診療科では得がたい大きなやりがいを感じられるでしょう。
6.NICU看護師として働くときに有利な資格
NICU看護師になるために改めて資格を取得する必要はないものの、新生児看護をおこなううえで持っているとプラスになる資格を紹介します。
助産師
周産期医療の一角を担うNICUにおいて、分娩介助や妊産婦受け入れの経験を持つ助産師は、まさに専門性を発揮できる資格となります。ただし、産科で助産師が不足している場合はNICUではなく産科に配属される可能性があります。
新生児集中ケア認定看護師
新生児集中ケア認定看護師とはリスクを抱えた新生児のケアや処置に関する知識と技術を習熟し、特化していると認められた認定資格です。取得するためには通算5年以上の実務経験(うち3年以上は認定分野での実務経験)をもって講座を受講する必要があります。新生児看護を経験し、さらにスキルを高めたいと考えている人は検討してみましょう。
特定看護師
特定看護師とは、特定行為を実施するための研修を修了することで、通常の看護より幅広い医行為をおこなうことができる看護師です。修了した特定行為で医師による指示書の範囲内であれば、直接指示を待たずに処置をすることができます。
特定行為の研修をすべて修了し、さらに修士課程を修了・試験に合格することでより広い医行為が可能になる診療看護師(NP)資格もあります。
7.やりがいある現場で専門性を発揮しよう
生まれたばかりの新生児を相手にする仕事は、そう多くありません。NICU勤務は高い緊張感がありますが、唯一無二のやりがいを感じられることもあるでしょう。興味のある人はNICU設置病院の求人を探してみませんか?