就労継続支援A型・B型とは? 就労移行支援や就労定着支援との違いも解説

就労継続支援A型とB型。そして就労移行支援に就労定着支援など、障がい者の就労を支援する制度には色々あります。名称もよく似ていて、それぞれがどんな支援制度なのかきちんとわかってない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、これらの特徴や違い、なりたちについて解説します。

障害者の就労支援イメージ

1.就労継続支援とは? A型・B型をそれぞれ解説

就労継続支援は、一般的な事業所で働くことが難しい障がい者に向けた、職業訓練や生産活動を支援するサービスです。

年齢制限などはありますが、利用期間の制限はありません。

この就労継続支援には、どんな人を対象とするか、どんな支援をおこなうかで就労継続支援A型就労継続支援B型の2つがあります。

1-1.就労継続支援A型

就労継続支援A型の大きな特徴としては、事業所と雇用契約を結ぶことが挙げられます。

そのため雇用型とも呼ばれ、定められた給与も支払われます。

対象は18歳以上65歳未満で雇用契約に基づいた勤務が可能なものの、障がい・難病などにより一般企業への就職が難しい人です。

労働者として働きながら、同時に訓練も受けて就職のための知識・能力を身につけていきます。ここからさらに就労移行訓練を経て、一般企業への就職ができるように支援をおこないます。

1-2.就労継続支援B型

就労継続支援B型では、事業所との間に雇用契約は結ばないので、非雇用型とも呼ばれています。A型の仕事の内容が難しい障がい者、年齢・体力などから一般の企業で働くことができなくなった人などが対象です。

以下のいずれかに当てはまることが条件です。

1. 就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
2. 50歳に達している者または障害基礎年金一級受給者
3. 1及び2に該当しない者で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に関わる課題等の把握が行われている者

引用:厚生労働省/ 障害者の就労支援について

利用者には作業訓練などを通じて生産活動をおこなってもらい、できたものに対して賃金が支払われる仕組み。訓練を積んで就労継続支援A型、就労移行支援を目指します。

以前インタビューした、元生活支援員(障がい者をサポートする職種)の藤井さんは就労継続支援B型での仕事内容を次のようにお話ししてくれました。


私が配属された職場は就労継続支援B型で、そこでおこなっている支援事業は主に3種類ありました。

「パソコンを用いた一般的な事務スキルの習得」「附属病院やデイケアで、マッサージや指圧などをおこなうセラピストとしての技術習得」「お弁当の製造に携わる事業」の3つです。

私はその中の、お弁当製造の事業所でメインに働いていました。

お弁当を調理するっていうよりは、お弁当箱に料理を詰めていく作業ですね。

利用者さんといっしょにお弁当詰めをしていきます。必要に応じてお仕事の振り分けやお願いをしていました。

「障がいを持つ人への偏見をなくしたい」わたしが生活支援員の仕事を選んだ理由より抜粋

就労移行支援A型とB型の違い

2.就労移行支援との違い

就労 “継続” 支援は対象者が事業所の中で働くのに対し、就労 “移行” 支援は事業所で訓練を受けながら一般企業への就職を目指すもので、「一般企業に就労したい」という障がい者が対象です。

支援を受けられる年齢は18歳〜65歳未満までで、利用できるのは原則として2年まで。必要性があれば、最大12ヶ月の更新が可能です。

就労移行支援の特徴としては職業訓練・職場探し・職場への定着支援の3つの役割があります。

職業訓練の内容としては、ビジネスマナー、挨拶などのコミュニケーショントレーニング、パソコンの活用方法、基本的な読み書き・計算などのほか、履歴書の書き方なども習うことができます。さらに、その人に合わせた能力開発訓練や職場見学などもおこないます。

職場探しの支援では、その人の適性に応じた職場を探す必要があります。一般企業やハローワーク、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどと連携して利用者にとってよりよい職場探しをおこないます。

職場定着のためのサポートは、就職後も6ヶ月間は面談をおこなって、職場定着のための相談・問題などを解決します。

就労支援員として就労移行支援サポートをおこなっているAさんは、仕事内容とやりがいについて、インタビューで次のようにお話ししてくれました。

ー「就労移行支援」ではどのようなことをしているんですか?

通っている利用者さんに、お菓子の箱折りやチラシの封入封緘(ふうにゅう・ふうかん)などの軽作業をしてもらっています。あとは就職に向けて、ビジネスマナーや一般常識も教えています。

利用者さんは全員で20名くらい。職員はわたし含めて就労支援員が5名。いまの職場で働きはじめて2年半になりました。

ー仕事の大変な面はどんなところですか?

やっぱり利用者さんとのコミュニケーションですね。相手の気持ちがわかるようになるまでがとくに難しくて、わたしは今まで高齢者の人をケアするお仕事をしていたから、つい同じように接してしまって「老人扱いするな」と怒られることもありました。

【転職者インタビュー】就労支援員3年目27歳/転職3回より抜粋

3.就労定着支援との違い

就労定着支援とは、その名の通り、職場への定着支援をおこなうサービスです。今までも就労移行支援には定着支援サービスがあったのですが、自立を目指す障がい者が増えてきたことから、独立した制度として2018年にスタートすることになりました。

就労定着支援の対象となるのは、就労継続支援や就労移行支援、そのほか自立訓練サービスなどを経験して障がい者雇用枠での就労を含め一般就労した人です。

サービスは働きやすい環境づくりのお手伝いで、就労移行支援後の6ヶ月サポートが終わった、さらに半年後から受けられるようになり、1年ごとに更新、最長で3年間利用することができます。

具体的な支援の内容としては、障がい者が実際に働いてみて出てきた悩みやトラブルへの対応となります。例えば、同僚と上手にコミュニケーションが取れない、ミスが多く周囲から指摘される、生活リズムが変わったため朝起きられない、など。

こういった問題を解消するために、面談をしたり、職場の方から話を聞いて問題点を探ったりと、適切なフォローが必要となります。

4.就労支援のなりたち

これまで就労継続支援・就労移行支援・就労定着支援の3つを解説してきました。

それぞれの支援制度ができた背景を知っておくと、さらに理解が深まるので、ここで簡単に説明しましょう。

障害者雇用促進法」が施行されたのは1976年のこと。法律が施行されるのと同時に就労継続支援がスタートしました。それまで、障がい者が就職するのはなかなか難しい時代でした。

法律の施行後、「就労継続支援A型」や「就労継続支援B型」の福祉サービスを利用して、多くの障がい者が仕事のやり方や作業訓練を学びながら、就職していきました。

それからしばらく経ち、2006年。「障害者自立支援法」が施行され、就労移行支援がスタートしました。これは障がい者が福祉施設でなく、一般企業などに就職できるよう支援する制度です。就労移行支援事業所で就職に必要なことを学んで、一般企業に就職する人の数も増えました。

「就労継続支援」と「就労移行支援」の2つにより、就労する障がい者の数は確実に増加する一方、就職後の早期に離職してしまうケースが多いということがわかってきました。

障がい者が就職するまで手厚い福祉サービスがあっても、職場に定着のするための精神面、生活面でのフォローが何もなかったことが原因だと考えられます。この課題に対応するため、2018年に新設されたのが「就労定着支援事業」です。

このような時代の流れの中で、就労継続支援→就労移行支援→就労定着支援という順番に制度ができていきました。

5.最後に

障がい者の就職状況

引用:厚生労働省/ 障害者雇用の現状等

厚生労働省の発表した資料によると、障がい者の雇用者数はここ10年で大幅に増加しています。

しかし残念なことに、同資料の別レポートによると、就職1年後の職場定着率は約49〜70%。つまり離職率は3〜5割にもなっています。

障がい者の職場定着率

引用:厚生労働省/ 障害者雇用の現状等

「自分に合った仕事・職場」を探すことは、障がい者にとって、なかなか難しいのかもしれません。

障がい者の職業訓練や生産活動を支援す「就労継続支援」、一般企業への就労を目指し職業訓練、職場探し・職場への定着の支援をおこなう「就労移行支援」、就労移行支援後にさらにサポートし職場定着を促す「就労定着支援」。利用者はそれぞれの性質や特徴を理解して、自分に合うものを利用することが大切ですし、働くスタッフはその特徴をとらえて、適切なサポートをおこなっていくことが重要といえるでしょう。

読者の方へのメッセージ

一般就労と福祉的就労

就労継続支援A型と就労継続支援B型は、雇用契約の有無から一般就労と福祉的就労ともいわれています。特別支援学校の卒業生の多くが、就労継続支援B型を利用しています。就労継続支援A型では、事業所として一定の収益を上げることが目標となり、福祉的視点に欠ける側面も指摘されています。一方、就労継続支援B型では、作業受注先の開拓や営業面での弱さがあり、利用者へ支払う賃金の低さが課題となっています。

峯尾 武巳 (介護の会まつなみ 理事長) 2023/11/26

プロフィール

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身体障害者療護施設、知的障害児施設、特別養護老人ホームの勤務を経て、2003年から2018年まで神奈川県立保健福祉大学にて介護福祉学を専門に教鞭を執った。介護支援専門員の養成には、制度開始前から指導者という立場で携わり、埼玉・東京・神奈川を中心に法定研修講師を務めている。その他、認定介護福祉士養成研修など数多くの研修会講師も勤め、多方面で活躍をしている。

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