
そもそも心療内科って、どういうところ?
最近、街中で目にする機会が増えた心療内科。しかし「精神科とはどう違うの?」と聞かれたら、きちんと答えられるでしょうか。
実は、心療内科も精神科も、「こころに関わる病気」を専門に診る科であるところは共通しています。ですが、扱う病状が異なるのです。
心療内科が診るのは、ストレスなどが原因となる胃腸の機能性障害や頭痛、気管支ぜんそくなど。心療内科は、強い緊張などストレスで引き起こされる「身体の不調」が専門領域です。女性に多い摂食障害なども、身体とこころの両面での治療が必要となるので対応疾患です。
心療内科は、いわゆる「心身症」といわれるものを扱う科ということを覚えておきましょう。
まぎらわしい?心療内科と混同しやすい多くの科
一方、精神科は、うつ、不眠、統合失調症など、「こころの病気そのもの」が対応疾患となります。幻覚、幻聴、妄想なども精神科が診る病気です。
精神科では、神経科や精神神経科などと表記がしてあったり、複数の科名が並んでいたりすることもあります。こうした場合も、精神科と考えてよいでしょう。
なお、神経内科というのは、手足の震えやパーキンソン病など、脳や神経に関わる内科で、精神科とは異なります。
心療内科は心因性の身体の不調、精神科はこころの病気そのもの。違いはこのようなことですが、実は、そのボーダーラインは厳密ではありません。より精神科に近い領域まで治療する心療内科もあり、規模や医師の方針によっても診療内容はそれぞれ異なります。心療内科と掲げている医療機関でも、軽い「うつ」などの治療をする場合もあるわけです。
また最近では、心療内科と共通するものにメンタルヘルス科やメンタルクリニックと名乗っているところもあります。カタカナ名にすることで、医療機関を受診する抵抗感が弱まる効果もありそうです。
心療内科での治療内容、看護師の役割はどんなこと?
心療内科は、主に心因性による身体の不調をもつ患者さんが受診されます。診察は、一般的な問診や心理テストなどからスタート。その後、より専門的なカウンセリングや心理療法、自立訓練、行動療法などを行います。治療は長期にわたることも少なくありません。また、病状によっては、ほかの科と連携しながら治療を行なう場合もあります。
では、心療内科での看護師の役割は、どのようなことでしょうか。実は看護師の業務は、ほかの科とさほど違いはありません。看護師として基本的な仕事が中心です。例えば患者さんの案内や介助、医師や臨床心理士などの補佐的な業務などが挙げられます。
また、心療内科は入院施設を持たないクリニックが多いので、夜勤がないのも特徴です。緊急を要する治療も少なめで、比較的安定した勤務環境といえるでしょう。
ただし、心療内科でも、精神科に近いクリニックがあることは、前に紹介した通りです。メンタルケアに興味があっても精神科はハードルが高い。そんな風に感じて心療内科を希望する人は、求人先の診療内容をよく調べておきましょう。
心療内科に向いているのはどんな人?
現在、一般的にも知られてきた心療内科ですが、そこで働く看護師には、向き不向きはあるのでしょうか。
前述したように緊急的な処置や入院施設がない場合が多いので、日常の業務には大きな変化は少ないでしょう。看護師として「医療処置が多い緊張感のある現場でバリバリ働きたい」。そんな人には、心療内科はやや不向きといえるのかもしれません。
また、「こころの病気」は回復がわかりづらく、治療も長期間にわたることが多いもの。ストレスの原因を取り除く相談や行動療法などは、息長くつきあうものになります。すぐに効果がわかるものではありません。そうした点では、看護師としての「やりがい」も感じにくいともいえます。
ですが反対に、じっくりと息長く患者さんを見守りたいという人に向いているのが心療内科です。変化の少ない毎日も「規則正しい生活を送りたい」という人になら向いています。
また、心療内科を訪れる方は、多かれ少なかれナーバスになっているもの。そのような人をリラックスさせて、治療しやすい環境をつくるには看護師の役割も小さくはありません。医師と患者さんをスムーズに取り次ぐ、コミュニケーション能力が問われます。患者さんへの何気ない声かけにも、ちょっとした心配りができる人が心療内科に向いているでしょう。
そしてなにより、「こころの病気」に関心がある人には、知識や経験を積めるまたとない職場です。
心療内科で働くメリットって、どういうことでしょう?
では、心療内科で働く看護師のメリットとはどんなことでしょう。
まずに挙げられるのは、看護師として飛び抜けた知識や経験が要求されないということです。また、前述したように、夜勤などの拘束が少なく、身体的な負担が少ない点もメリットといえるでしょう。プライベートを重視する人や、小さいお子さんのいる人などに向いている環境です。そして、職場によっては給料が高めの場合もあり、その点も期待できます。
もちろん、メンタルケアについての知識が身につくという点も、人によっては大きな魅力となるはずです。心因性の病気は、いまや珍しいものではありません。心療内科での経験は、プライベートで役にたつことも少なくはないでしょう。
また、心療内科の経験を生かして、さらにステップアップすることも可能です。
経験を生かしてスキルアップや資格取得を
心療内科で働き、さらに上を目指すなら資格取得も視野に入れてもよいでしょう。
メンタルケアに関連する資格では、「臨床心理士」「心理カウンセラー」などがあります。心因性の病気や精神病などの治療に直接携わる資格です。心療内科や精神科、学校や職場のカウンセラーなど、現在、活躍の場は広がっています。また、「臨床心理士」や「心理カウンセラー」と同様の資格ですが、「公認心理師」という国家資格も誕生しました。
もちろん、看護師として「こころの病気」のプロフェッショナルを目指す方法もあります。例えば精神科の看護領域では「精神科認定看護師」という認定看護師制度もあります。最新知識を身につけ、多くの取り組みを知ることで、よりよい看護を提供することができるでしょう。
心療内科の看護師はこれから狙い目?
看護師の仕事として、心療内科をすぐに思いつく人は少ないのかもしれません。ですが、こころの健康を害する人が増えている現在、心療内科を職場として視野に入れておいてもよいでしょう。
メンタルケアの分野は、ほかに応用が効くものでもあり、将来、ほかの科に移るとしても心療内科の経験はきっと役にたつはずです。
社会的なニーズも高まっている心療内科。今後、看護師としてチャレンジしたい職場としておすすめです。