
1.社会福祉主事とは
1-1.そもそも「主事」「任用資格」とは
1-2.「社会福祉主事」はいつできた?
2.社会福祉主事の仕事内容
3.社会福祉主事になるには
3-1.社会福祉主事任用資格が必要
3-2.資格の取り方・必要な科目
3-3.任用資格の証明はどうやってする?
3-4.資格を活かして働ける場所
4.社会福祉主事の給料
5.最後に
1.社会福祉主事とは
1-1.そもそも「主事」「任用資格」とは?
「社会福祉主事」とは、都道府県や市町村の福祉事務所に配置され、社会福祉によるサポートをおこなう職員です。ここでいう「主事」とは、公的機関や各種法人、団体に置かれる職員の職名の一種となります。
また、その社会福祉主事に任用されるための資格を「社会福祉主事任用資格」といいます。ここでいう「任用資格」とは、特定の職業や職位に就く際に必要になる資格のことです。
「任用資格」は取得するだけでは効力を発揮しないため、任用資格を取得し、地方公務員試験に合格し、福祉事務所に配属されてはじめて「社会福祉主事」を名乗ることができます。
ちなみに「社会福祉主事任用資格」を持ち、民間の病院や介護施設などで利用者さんの社会福祉相談に乗っている方は「社会福祉主事」とは呼びません。どの職種として採用されたかにもよりますが、多くは「医療ソーシャルワーカー」や「生活相談員」として働いています。
▼医療ソーシャルワーカー・生活相談員についてはこちらの記事もご覧ください
生活相談員とは・仕事内容、資格要件、給料などを調査しました!
1-2.「社会福祉主事」はいつできた?
1950年(昭和25年)5月に制定された同資格は、社会福祉の資格の中で最も古いものとして知られています。
日本では戦後の1946年(昭和21年)に日本国憲法を制定。同法の第25条では、国民が「健康で文化的な生活を営む権利」として生存権を保障し、社会福祉がととのえられるようになりました。
この社会福祉を具体化する法律として福祉六法(生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法、老人福祉法、母子および寡婦福祉法)が制定され、同法がさだめる「援護・育成又は更生の措置に関する事務」をおこなう機関として、福祉事務所が設置されるようになりました。都道府県及び特別区を含む市は、福祉事務所の設置が義務付けられています。
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生活保護法:経済困窮者を支援
児童福祉法:子どもを支援
身体障害者福祉法:身体障害者を支援
精神薄弱者福祉法:知的障害者を支援
老人福祉法:老人を支援
母子および寡婦福祉法:1人親とその子どもを支援
福祉事務所:福祉六法がさだめる社会福祉支援をおこなう行政機関。福祉事務所で働くためには、公務員試験に合格する必要がある
社会福祉主事:福祉事務所で働く公務員。任用資格の取得と公務員試験の合格をもって、はじめて社会福祉主事となる
都道府県や市の福祉事務所には、社会福祉主事を必ず配置する義務があります(町村は任意設置とされている)。厚生労働省によると、令和4年4月現在、全国の福祉事務所は1,250ヶ所、そのうち都道府県が205、市は999ヶ所となっています。
参考:厚生労働省「福祉事務所」
2.社会福祉主事の仕事内容
社会福祉主事は福祉事務所で現業員(ケースワーカー)または査察指導員(スーパーバイザー)として働きます。以下でそれぞれの役割をみてみましょう。
現業員(ケースワーカー)
福祉事務所を訪れる人の相談に乗り、生活保護申請書の受付をおこなう。各家庭に応じた生活保護費の検討・金額の見直しのため、家庭や入院先などを訪問し、生活状況を記録に残す。職業安定所(ハローワーク)などで仕事を探すように指導したり、生活面の問題を解決できるような情報提供をおこなったりすることも役割のひとつ。
査察指導員(スーパーバイザー)
生活保護の申請書を確認したり、申請者の面接をおこなったりして、受給資格の有無を調査する。調査対象は個人や家族の生活状況、資産、収入、職業など。生活保護費の受給者および受給希望者を訪問する現業員の指導・助言もおこなう。福祉事業法により、7名の現業員につき1名の査察指導員の配置が義務づけられる。
3.社会福祉主事になるには
3-1.社会福祉主事任用資格が必要
社会福祉主事になるには、「社会福祉主事任用資格」を取得したうえで、公務員試験に合格し、都道府県や市町村の福祉事務所へ配属される必要があります。
3-2.任用資格の取り方・必要な科目
社会福祉主事任用資格を取得するための試験はなく、大学や通信教育における科目履修によって取得することができます。おもなルートは5つです。

A.【大学・短期大学卒業ルート】
大学または短期大学において、厚生労働大臣が指定する社会福祉に関する科目から3科目以上を修めて卒業する。
<社会福祉に関する科目>出所:厚生労働省「ページ9:社会福祉主事任用資格の取得方法」
B.【通信教育課程ルート(1年)】
全国社会福祉協議会が経営する中央福祉学院の社会福祉主事資格認定通信課程または日本社会事業大学の通信教育過程を修了する。
C.【養成機関ルート(1〜4年)】
社会福祉主事養成機関で指定の科目(22科目・1,500時間)を修めて卒業する。養成機関の多くは2年制または3年制の専門学校。2021年1月時点では、全国に33校の養成機関がある。関東には9校。
D.【講習会ルート】
都道府県等がおこなう講習会で指定の科目(19科目・279時間)を修める。
E.【国家資格取得ルート】
社会福祉士、精神保健福祉士等の国家資格を取得する。
3-3.任用資格の証明はどうやってする?
社会福祉主事の任用資格には、国や自治体が発行する「資格証明書」はありません。そのため、資格取得者は履修済みの科目が記載された大学の成績証明書および卒業書を雇用先に提出することになります。
なお、一部の大学では履修した科目のうち指定科目を抽出した履修証明書を発行してくれるところもあるので確認してみるとよいでしょう。
3-4.資格を活かして働ける場所
社会福祉主事はおもに地方公務員として社会福祉事務所で働きますが、知識・経験を活かして、児童福祉施設や母子福祉施設、老人介護福祉施設、身体障害者福祉施設、知的障害者福祉施設、一般病院などで働くことも可能です。
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4.社会福祉主事の給料
社会福祉主事は、地方自治体の「一般職」または「福祉職」として採用され、給料は公務員給与規定に沿った額となります。 2021年の地方公務員給与実態調査結果(総務省)では、一般職員全体の平均月収は40万6,290円、福祉職に限ると同34万333円でした。
5.最後に
2021年の生活保護受給者数は約204万人で、2015年をピークに減少傾向にあります。世帯のパターン別では母子家庭の割合が減少し、高齢者世帯が増えてきており、生活保護受給者の半数以上が65歳以上となっています(厚生労働省「世帯類型別の保護世帯数と構成割合の推移」)。
2025年にはいわゆる団塊世代全員が75歳以上を迎えます。高齢者を支援する社会福祉主事の役割はますます大きくなることが予想されます。
キャリアの面では、社会福祉主事の実務経験を活かして民間の病院や介護施設で働いたり、その他社会福祉系の資格取得に挑戦することも可能です。国家資格である「社会福祉士」の受験資格には、社会福祉主事としての実務経験4年以上も含まれる(別途、短期養成施設等の修了が必要)ので、ご興味のある方は参考にしてみてください。