
前編で医療事務の資格を取得し、無事に職業訓練校を卒業したSさん。しかしその後の転職活動は「誤算だった」と言いますが……?
>【職業訓練体験談|前編】職業訓練を受けるまで、授業やお金のこと
書類通過率は20%以下、転職活動の「誤算」

──転職活動はいつから始めましたか?
応募を始めたのが学校を卒業してすぐの10月からですが、学校に行っている最中も求人だけは見ていましたね。
──求人はどうやって探しましたか?
ハローワークとジョブメドレーとYahoo!のしごと検索(現在のスタンバイ)を使いました。
──どういった条件で探しましたか?
最初は近くの病院か薬局で、未経験可、月給20万円以上で探しましたね。
ただ、病院はすべて書類で落ちてしまったので……。クリニックや介護事務まで条件を広げて、20〜30件は応募したかなと思います。
──どの媒体から一番たくさん応募しましたか?
結局ハローワークですかね。医療・介護系の求人もたくさんありました。
応募するときに職員さんが「今も募集してますか?」とか、「男性で、年齢がこのくらいで、未経験なんですけど応募してもいいですか?」とか、その場で聞いてくれるので、ハローワークは安心感がありました。
──窓口でそんなふうに対応してくれるんですね。
それもありますし、担当さんに「今日行きますんで」って連絡すると、希望の条件に合致する求人票を用意しておいてくれるんですよ。
──決まった担当者の方がいるんですね。
はい、職業訓練を受けるときにハロートレーニングのコーナーで相談した人が担当になります。
──面接対策とか、職業紹介以外のサポートは受けましたか?
「しましょうか?」って言われたんですけど、それは断ったんですよ。「以前受けたんで」って。私の場合は相談というより「この求人に応募したいから電話してください」というお願いが多かったですね。
──職業訓練を受けたことや資格を持っていることは転職活動で有利に働きましたか?
そこが誤算だったんですよ……。医療事務は資格よりも経験なんですよ。あとは年齢や性別。もちろん求人票には書かれていませんが、それを気にし始めちゃうと何にも応募できませんから。
20〜30件応募して面接まで行ったのが5、6件でした。インテリアショップから介護に転職するときは8割は面接に行けていたので、本当に誤算でしたね……。
──確かに、年齢的にも30代半ばを過ぎると経験がより重視されますよね……。
医療事務の内定をゲット! しかしここでも誤算が

テキストにはたくさんの書き込みが。
──最終的にどこから内定をもらったんですか?
クリニックから1つ内定をもらいました。
応募していなかったんですが、求人を見ていたらスカウトをもらったところで。なかなか転職活動が思うように進んでいないときにそういうオファーをもらったのですごくうれしかったですね。それで最終的に11月からそちらで働くことにしました。
──希望する職種に就職できたんですね。
ただ、そこは2週間で辞めてしまって……。
──!!
入ってみたらベテランの事務員さんが1ヶ月後に産休に入ることになっていて。
──それは入職前には知らされていなかったということですか?
はい。しかもちょうどインフルエンザの予防接種のシーズンで1年で一番忙しい時期で、とても教えてもらうどころじゃない雰囲気で、職場の雰囲気もどんどん悪くなってしまって。
──未経験で入ってそれはつらいですね。
それでそこは女性社会というか、かなり当たられてしまって……。
院長は男性なんですが「受付は受付でうまくやってくれなきゃ」というタイプで。そのベテランの方が産休に入る直前に「このままではやっていけない」と相談したんですが、「そんなことを言われても、やるしかないでしょ」と言われてしまい、最終的に……。
──就職活動を乗り越えて「これからがんばるぞ!」って思っていたときにそれは傷つきますよね。
相当落ち込みましたね。辞めたら辞めたで「もう少しうまくやれたんじゃないか」とか「努力が足りなかったんじゃないか」とか「そもそも医療事務は向いていないんじゃないか」とか考えてしまって。
──そういったミスマッチは入職前には予想するのは難しいものですよね。
求人に「未経験でも研修をおこない、丁寧に指導します」って書いてあったんですよ。「それじゃ安心して働けるな」と思って入ったんですけど、蓋を開けてみたら全然そうじゃなかった……っていう(笑)。
──冷静に考えると、ベテランの後任が未経験で、しかも引き継ぎの期間がほとんどないって無理ですよね。
そうなんですよ(笑)。
落ち込む暇もなく転職活動を再開、出会った仕事は?

──それで、そのあとすぐに転職活動を再開されたんですね。
はい、すぐにしました。
──離職したことはハローワークとかにも報告しましたか?
ハローワークにも、ジョブメドレーにも、それから職業訓練校にも辞めたことを報告しました。訓練校には卒業から1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後に近況を報告しなければならないので。「内定もらいました!」って報告して、それから1ヶ月経たずして「辞めちゃいました」って……。
──切ないですね……。訓練校の方はどんな反応でしたか?
「大丈夫ですか? Sさんなら次がすぐに見つかりますよ」と励ましてくれました。
──その後の転職活動はどのように進めましたか?
今度はマイナビとかリクナビとか、メジャーどころの転職サイトにも全部登録して、総力戦で臨みました。これまで使っていたサービスも引き続き利用したんですが、新着求人以外は見覚えのある求人ばかりだったので。
──ハローワークは引き続き同じ方が担当してくれたんですか?
はい、同じ方が担当してくれました。
──応募する求人に変化はありましたか?
介護事務まで視野を広げてみたりとかもしました。
──医療事務と介護事務だと介護事務のほうが通りやすかったりしましたか?
そうですね、介護事務のほうが通りやすかったです。どんな思惑があるのかわからないところではあるんですけど(笑)。
──現在働いている場所は、どういう経緯で応募したんですか?
ハローワークで見つけたんです。訪問介護事業所なんですけど「完全に事務です」ということを強調していたんですよ。
──事務だけで、現場の仕事はありませんよと。
募集人数も5人で、ほかより給料も少し良くて。
──いい条件だったんですね。選考ではどういった部分を評価してもらえたと思いますか?
おそらくは「介護の経験がある」ということだと思います。
面接のときに社長さんと少し話す時間があったんですが、「事務にも介護の知識や資格を持っていることに価値がある」という考えの方で、社長自身もケアマネの資格を持っているんですよ。
なので、介護の実務経験があって、介護福祉士の資格を持っていることを評価されたんじゃないかなと思います。
──事務の仕事そのものには資格は必要ありませんけど、現場のことを理解しているって大事ですよね。
私自身「現場の気持ちがわかる」ということは強みだと思って面接に向かったので。
──今の職場の満足度はどうですか?
まだ1ヶ月ちょっとなんですけど、今のところとくに不満はありません。
訪問介護事業所なので利用者の方と接するのも電話応対くらいしかないし、ずっとパソコンの前に座って作業するのって「耐えられるのかな?」とかいろいろ思ってたんですけど、やってみると大丈夫でした。
仕事内容に関しては100点満点って感じですかね。人間関係も良好です。
──今後のキャリアプランはどう描いていますか?
今後は事務職で経験を積んでいって事務の責任者になったり──、それから新人教育をやりたいなとずっと思ってたんですよ。
というのも「辞めてほしくない」んですよ。とくに若い人たち、20代とか。せめて自分が働いているところでは気持ち良く働いてほしいというか、長く続けてほしいというか。
結婚とか出産とか親の介護とかで辞めてしまうことはしょうがないと思うんですけど、嫌になったとか、仕事がつらすぎてとか、そういう理由で辞めてほしくないなって気持ちがずっとあって。
──それは自分の実体験から?
そうですね。
──介護の世界に戻ってみて、介護の仕事についてどう思いますか?
私が感じることは「介護に地位とか名誉とか関係ないな」ということですね。タワマンに住んでいるような裕福な人でも「介護って必要なんだな」と思います。
──人は等しく年を取り、介護が必要になる、ということですね。
偏見なんですけど、そういう人って「介護保険は使わない」とか「認知症にならない」みたいな変な思い込みがあったんですが、「そういう人にも介護は必要なんだな、そりゃそうだよな」って(笑)。
あと、訪問介護のヘルパーさんに「この仕事が好き!」って人がいるんですよ。その人を見ていると「この仕事も捨てたもんじゃないな」って思います。
──職場に1人そういう方がいると、周りにもいい影響を与えますよね。
その人に「私はずっと現場にいたくて、事務作業とかしたくないんですよ!」って言われて、そういう部分を自分ができたらその人はもっと現場の仕事に徹せられるのかなと。
業界全体が今そういう環境にないんですよ。とにかく人手が足りなくて、何から何まで全部やらなきゃいけない。
──小さくてもいいので「こうしたい」という自分の意思があれば、それを育てていけるので、今の職場はいいご縁になりそうですね。
そうですね、今の仕事を続けていきたいですね。
転職活動に臨むみなさんへ ──“軸”を持って、妥協せず取り組んで
──最後に、職業訓練を受けてよかったことや、もっとこうだったらいいのに、という要望はあったりしますか?
そうですね、やっぱり試験対策じゃなくて実務に結びついているほうがいいのかなって思いました。とくに医療事務については。
でも、毎日学校に通って、クラスメイトがいて、勉強に集中できる環境って貴重なんだなと思いました。就活にしろ、勉強にしろ、仲間がいたから前向きになれましたよね。情報もいろいろ入ってきますし。
結果的に資格はそんなに重要じゃなかったんですけど、資格を取ったときには「これで内定もらった!」みたいな気持ちになりました。

3ヶ月間でこれだけ学んだ。「やりきった」自信は次につながるはず。
──確かに、そういう自信は大事ですね。「できることはやったぞ」みたいな。
面接で自信なさそうに話していても採用したいと思わないでしょうからね。
ハローワークでは希望すれば面接のロールプレイングもしてくれるので、転職活動をしたことがない人は、ほかのサービスと並行してハローワークも利用したほうがいいと思います。
──最後に何か転職活動中の方にメッセージはありますか?
「やりたい仕事」でもなんでもいいので、何か“軸”を持って妥協せずに取り組んだほうがいいと思います。
私自身、前の仕事を辞めてから再就職するまで半年以上あって気持ちが萎えるときもあったんですけど、どこかに必ず自分に合った職場があると思うので。
──就職をゴールにするのではなく、やりたいことを実現することをゴールにしたほうがいいんですね。Sさんの場合は、どんな軸を持っていたんですか?
定年まで働きたいと思っていたので、福利厚生も含め長く働けるかどうかですね。定年まで現場にはいられないなと思って、事務の仕事を希望したのもありますし。
それと、医療・福祉・介護の業界ってことですね。ほかの業界も見たんですけど自分の中で「応募しよう」という気持ちにまではなりませんでした。
なんだかんだこの仕事が好きなのかな。絶対必要な仕事だし、人の役に立てているという実感も持ちやすいと思います。
──いい職場と出会えて本当によかったです。今日は貴重なお話をありがとうございました!