目次
1.児童養護施設とは?
家族による養育が困難な子どもが生活を送る場
児童養護施設とは、養育者の病気や障がい、離婚、子どもへの虐待などのさまざまな理由から、家庭での養育が困難な子どもたちが入所し、生活を送る施設です。児童福祉法に基づき設置され、子どもの自立を支援することを目的としています。
児童養護施設は全国に約600施設あり、約2万3,000人の子どもが暮らしています(2021年時点)。過去10年間で児童養護施設の数はやや増減が見られますが、入所する児童の数は減少していることがわかります。

児童養護施設の形態
児童養護施設には主に4つの形態があります。

大舎制
一つの建物内で20〜150人程度の子どもが集団生活を送ります。性別・年齢別に数人ずつ分かれて大部屋で暮らす形態です。大舎制は全体の22.3%を占めています。
中舎制
大きな建物内を13〜19人程度の少人数向けに区切り、小さな生活集団をつくって暮らします。浴室や食堂もそれぞれのスペースに完備されているのが特徴です。中舎制の割合はほかの形態に比べて低く、全体の4.6%となっています。
小舎制
敷地内に独立した家屋を建て、12人以下の小集団で生活を送ります。小規模なため、大舎制や中舎制より家庭に近い雰囲気で生活できるのが特徴です。児童養護施設の小規模化が進められていることから、全体の41.9%が小舎制となっています。
グループホーム型
一般の住宅などを活用し、定員6人で職員とともに暮らします。
2.児童養護施設で暮らす子どもの内訳
対象年齢
児童養護施設は、1歳から18歳までの子どもを対象にしています。ただし、必要に応じて20歳まで延長可能です。1歳未満の乳児は乳児院に入所します。
こども家庭庁の調査によると、児童養護施設に入所する子どもの平均年齢は11.8歳でした。年齢別の内訳では15歳が最多となっており、その後の年齢で徐々に減少しています。この理由として、親や親戚のいる家庭に戻る、就職などの事情が考えられます。

入所理由

2023年時点の入所理由で最も多かったのは「父または母の虐待・酷使(27.8%)」であり、次いで「父または母の放任・怠だ(18.8%)」「父または母の精神疾患(15.5%)」と続きます。1980年代には「父母の行方不明」や「父母の離婚」が多くの割合を占めていましたが、時代とともにその理由も変化していることがわかります。
また、知的障害や発達障害などの障がいを抱える児童の入所も増加しています。
平均在所期間

児童養護施設の平均在所年数は5.2年です。最も多くの割合を占めているのが1年未満で、年数が長くなるにつれ児童数も減少していますが、12年以上の在所者数は2,000人近くいることから、在所期間の二極化が伺えます。
3.児童養護施設で働く職員の資格と仕事内容
職員の配置基準
職種 | 人数 |
---|---|
施設長 | 1人 定員30人未満の場合は児童指導員が兼務 |
児童指導員・保育士 | 2歳未満1.6人につき1人 3歳未満2人につき1人 3歳以上4人につき1人 6歳〜18歳5.5人につき1人 |
看護師 | 乳児がいる場合1.6人につき1人以上 |
嘱託医 | 1人 |
栄養士 | 児童41人以上の場合1人 |
調理員 | 定員90人未満の場合4人、以下30人ごとに1人 すべての調理業務を外部委託する場合は配置不要 |
職業指導員 | 1人 実習設備を設けて職業指導をおこなう場合 |
個別対応職員 | 1人 |
家庭支援専門相談員 | 1人 |
心理療法担当職員 | 1人 心理療法の実施が必要な児童が10人以上の場合 |
施設長
施設の運営、職員の管理、運営方針を定めるなど、責任者としての役割を担います。施設長になるには、下記いずれかの要件を満たす必要があります。
- 医師であり、精神保健または小児保健に関して学識経験を持つ
- 社会福祉士の資格を持つ
- 児童養護施設の職員として3年以上の勤務経験がある
- 児童福祉司または社会福祉主事の任用資格があり、相談援助業務に3年以上従事し、指定の講習会の課程を修了
- 社会福祉施設の職員として3年以上勤務し、指定の講習会の課程を修了
児童指導員・保育士
保護者に代わり、子どもの養育を中心的に担います。子どもたちに身近な存在として、学校への送り出しや幼児の寝かしつけなど日常生活をサポートします。
児童指導員になるには以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 児童福祉の養成校または施設を卒業
- 社会福祉士または精神保健福祉士の資格を持つ
- 大学や大学院で所定の専門課程を修了
- 教員免許状を持ち、都道府県知事が適当と認めた場合
- 中学・高校を卒業、またはこれと同等以上の資格を持つと認められた人が、児童福祉事業に2年以上従事した場合
- 児童福祉事業に3年以上従事し、都道府県知事が適当と認めた場合
看護師
0〜1歳までの乳児が入所している場合、看護師の配置が必要です。近年では、被虐待児や発達障害のある児童の増加により、乳児がいない施設でも看護師を配置するケースが増えています。主な業務は感染症の予防や健康管理、投薬管理などです。
嘱託医
常勤ではなく、施設からの依頼を受けて診察や健診をおこないます。
栄養士
子どもの発達状況や栄養状態に応じて、日々の献立や食事を作ります。また、保育士や児童指導員から子どもたちの食べ残し状況などを聞き、食事内容の見直しもおこないます。入所児童数が40人以下の場合、栄養士の配置は必須ではありません。
調理員
栄養士の献立に基づき、日々の食事を作ります。食育を目的に子どもたちと一緒に調理や後片付けをすることもあります。
職業指導員
実習や講習を通じて、職業の選択に必要な情報提供や技術指導、アドバイスをおこないます。
個別対応職員
被虐待児の増加を受け配置された専門職で、虐待を受けた子どもへの一対一の対応や、保護者援助をおこないます。
家庭支援専門相談員
ファミリーソーシャルワーカーとも呼ばれ、保護者支援を通じて子どもの家庭復帰をサポートします。退所後の相談援助や、地域の子育て家庭の相談対応も業務の一つです。
家庭支援専門相談員として働くには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 社会福祉士または精神保健福祉士の資格を持つ
- 児童養護施設において児童の指導に5年以上従事
- 児童福祉司の任用資格を持つ
心理療法担当職員
虐待などにより心理療法を必要とする子どもに対し、カウンセリングや遊戯療法を実施します。子どもの安心感・安全感の再形成をおこない、自立支援を目的としています。
4.子どもの成長を間近で支える
児童養護施設は、虐待や親の病気などにより家庭での養育が難しい子どもの心身をケアし、自立を支援する施設です。親に代わって複数の子どもを養育するファミリーホームや、一定期間家庭に迎え入れて養育する里親への委託が進められたことなどから、過去10年で児童養護施設に入所する子どもの数は2割程度減少しています。しかし、依然として保護を必要とする子どもが4万人以上存在しています。
児童養護施設では、24時間体制で複数の専門職が連携をとりながら子どもを見守り、養育します。家庭的な生活を目指して施設の小規模化が進められている一方、職員の不足や負担の増加も課題となっています。
以前、なるほど!ジョブメドレーがインタビューした児童養護施設で働く保育士は、仕事の魅力を次のように話していました。
児童養護施設には、保育所や学校とは異なる接し方ができるという魅力もあります。児童養護施設に興味を持った人は、ぜひ求人をチェックしてみてください。