目次
1.ファミリー・サポート・センター事業とは
地域で育児を援助する事業
ファミリー・サポート・センター事業(通称ファミサポ)とは、育児の支援を受けたい人と支援したい人とをつなぐ公的サービスのことです。2015年から「地域子ども・子育て支援事業」のひとつとして位置付けられています。運営主体は、市区町村や委託を受けた団体です。
依頼可能な子どもの年齢は自治体ごとに異なり、多くは生後数ヶ月から小学6年生までを対象としています。
ファミリー・サポート・センターは、依頼会員(援助を依頼したい人)と提供会員(援助をおこなう人)のマッチングや連絡調整などをおこないます。援助場所はサポート内容や依頼者の希望に応じて異なり、依頼会員宅や提供会員宅、センターが借りている施設などさまざまです。
tips|提供会員になるには
提供会員になるには、いくつかの研修を修了する必要があります。研修には、子どもの発達や遊び、世話などに関する内容のほか、AED(自動体外式除細動器)の使用方法や心肺蘇生法など救急対応に関する研修などがあります。
また、援助の依頼と提供どちらも希望する人は「両方会員」になることも可能です。
2.依頼できるサポート内容
ファミリー・サポート・センター事業に依頼できる主な内容は次のとおりです。自治体ごとに内容が異なるため、利用に際してはセンターに確認しましょう。
子どもの預かり
保護者の急病や兄弟・姉妹の学校行事、冠婚葬祭のほか、リフレッシュや買い物などさまざまな場面で理由に制限なく利用できます。
学校や習い事の送迎
保育所や放課後児童クラブ(学童保育)、習い事などへの送迎も援助内容のひとつです。学校終わりの子どもを迎えに行き習い事まで送る、習い事が終わった子どもを自宅まで送るなど送りのみ・迎えのみの依頼も可能です。
ただし、施設によっては保護者以外が送迎する場合、事前登録が必要なところもありますので、あらかじめ確認しましょう。
食事やおやつの提供
事前にアレルギーの有無などを確認したうえで、保護者が調理した食事や購入したものを提供します。一部の自治体では提供会員が簡単な調理をしたり、保護者と相談したうえで決めたメニューを調理したりするところもあります。
病児・病後児の預かり
病気などにより保育所や学校に行けない子どもを預かります。登園・登校後に体調が悪化した子どもの送迎や、委任状があれば病院への付き添いも可能です。早朝・夜間など緊急時の預かりや、宿泊を伴う子どもの預かりを実施しているセンターもあります。
3.利用方法・時間・料金
利用の流れ

ファミリーサポートを利用するには、まず近くのファミリー・サポート・センターを探し、会員登録をおこないます。自治体によっては、登録に際して説明会への参加などが求められます。
最寄りのファミリー・サポート・センターはこちらから検索できます。
>一般財団法人女性労働協会|サポートセンター検索
依頼が必要になったらファミリー・サポート・センターへ連絡し、提供会員の紹介を待ちます。依頼会員と提供会員双方でサポート内容や子どもの状態などを確認したのち、センターを介して依頼をしたら、援助開始となる流れです。
サポート終了後に依頼会員から提供会員へ報酬を支払います。提供会員は活動内容を記載した報告書を作成し、センターや依頼会員に提出します。
利用可能時間
ファミリーサポートを利用できる時間は自治体ごとに異なり、午前8時30分ころから午後5時ころまでのところがほとんどです。
病児・病後児の預かりや早朝・夜間など緊急時の預かりを実施しているセンターでは、午前6時から午後10時までなど幅広い時間で対応しています。
利用料金
料金は自治体ごとに異なります。「令和2年度全国ファミリー・サポート・センター活動実態調査結果」によると、平日の日中1時間あたりの利用料金で最も多かったのは「700円台(43.4%)」、続いて「600円台(33%)」「500円台(12.2%)」という結果でした。
早朝・夜間に預ける場合は、1時間あたり100〜200円ほどの割増料金が設定されているところがほとんどです。
宿泊料金は1泊あたり「5,000円台(31.6%)」が最多で、「3,000円未満(22.8%)」「1万円以上(21.1%)」と続きます。
また、ひとり親家庭や低所得世帯、育児と介護をおこなうダブルケア世帯、障がい児、多胎児のいる家庭などは、利用料の減額や優先利用などの支援が受けられます。
4.ファミリー・サポート・センター事業の実施状況
実施している自治体の数
ファミリー・サポート・センター事業を実施している自治体の数は、982市区町村です(2022年時点)。事業の実施には、会員数20人以上を集めることが要件となっていますが、実施要件が満たせない地域は近隣の市町村と合同で事業をおこなうことも可能です。
会員の内訳とサポートした子どもの年齢
会員の内訳

2020年度のファミリー・サポート・センター事業の会員数は69万6,813人で、依頼会員が53万6,577人なのに対し提供会員は12万5,761人となっています。
提供会員数は2018年度の11万8,388人から7,000人ほど増えていますが、依頼会員数は同じ期間に5万人以上増加しており、ニーズに追いついていないのが現状です。主な理由には、問題が生じたときの責任が重いことや時間のなさ、報酬の低さなどがあります。
登録者の年代
依頼会員は30〜40代が約9割を占めています。一方、提供会員は40代以降の登録が多く、とくに家事・育児などが落ち着く50代が最多です。
サポートした子どもの年齢

サポートを実施した年齢は1〜8歳が多く、保育所や幼稚園に入るタイミングから、まだ一人で習い事などに通わせるのは不安な低学年の子どもへの支援ニーズが高いようです。
活動内容の内訳

活動内容の上位3つは保育所や習い事、放課後児童クラブへの送迎となっています。共働き世帯の増加により、送迎ニーズが高まっているようです。
5.よくある質問
ここからは、ファミリー・サポート・センター事業に関するよくある質問と回答を紹介します。
Q.ファミリーサポートはなぜ安いのですか?
ファミリー・サポート・センター事業は市区町村または受託団体が運営しており、事業にかかる費用を負担するため国・都道府県・市区町村から「子ども・子育て支援交付金」が交付されているからです。
利用料金は自治体ごとに異なり、平日の日中であれば1時間あたり500〜700円のところがほとんどです。
Q.ファミリーサポートは自宅に来てもらえますか?
ファミリーサポートの実施は依頼者宅や提供者宅、自治体が借りている施設でもおこなわれます。
Q.子どもの急な体調不良やケガが起きたら?
ファミリーサポート活動中に子どもの体調が悪化した場合は、依頼会員への連絡が必要です。サポート中の事故やケガについては依頼会員とファミリー・サポート・センターに連絡し、緊急の場合は救急車を呼ぶなどの対応をおこないます。
また、ファミリー・サポート・センター事業を実施する自治体では、ケガや事故に備え保険に加入していることがほとんどです。サポート中に提供会員や子どもが損害を被った場合や、損害賠償を負った場合に補償されます。
参考
- 一般財団法人 女性労働協会|令和2年度 全国ファミリー・サポート・センター活動実態調査結果
- 一般財団法人 女性労働協会|子育て援助活動支援事業(ファミリー ・ サポート ・ センター事業)における提供会員の確保方策等の取組事例に関する調査研究報告書
- 厚生労働省|子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)の実施について