目次
1.短時間正社員とは
短時間正社員とは、フルタイムの正社員と比べて、1週間の所定労働時間が短い正社員を指します。厚生労働省の定義では、労働契約期間の定めがなく(無期労働契約)、基本給や賞与、退職金の算定方法がフルタイムの正社員と同等である社員とされています。
一般的な正社員の労働時間は、1日8時間、週40時間程度ですが、短時間正社員はこれよりも短い時間または日数で働きます。この制度は、仕事と育児・介護・学業を両立させたい人や、体調に不安がある人でも、キャリアを諦めずに働ける職場づくりに役立ちます。
短時間正社員と時短勤務の違い
所定労働時間よりも短い時間で働く方法としてほかに挙げられるのが、時短勤務です。短時間正社員との違いは、基準となる法律の有無と適用条件、雇用形態、制度を利用する時期にあります。
短時間正社員 |
時短勤務 |
|
---|---|---|
基準となる法律 |
なし(会社の任意) |
あり(育児・介護休業法) |
適用条件 |
育児や介護以外の理由でも可 |
育児・介護それぞれの理由ごとに、定められた条件を満たす必要がある |
雇用形態 |
正社員 |
正社員、契約社員、パート、アルバイト |
制度を利用できる時期 |
入社時から利用可 |
雇用期間が1年未満の人は対象外 ※会社独自の制度を設けている場合は例外あり |
時短勤務について詳しくはこちら
>時短勤務(短時間勤務)はいつまでできる? 給与や残業代、転職時の注意点を解説
短時間正社員とパートとの違い
パートもフルタイム勤務者より、短い時間で働くことが一般的ですが、雇用契約と待遇が異なります。
短時間正社員は期間を定めない雇用契約を結びますが、パートは有期契約が一般的です。また、短時間正社員は、フルタイム正社員を基準として評価や基本給、賞与などの待遇面が決まりますが、パートの多くは時給制が適用されています。
2.短時間正社員の労働条件
短時間正社員として働くうえで気になる、雇用保険や健康保険などの社会保険や、実際の労働時間、給料の扱いは以下のとおりです。
社会保険
社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、介護保険、労災保険、雇用保険の5つに大別され、いずれも要件を満たせば、短時間正社員も加入できます。すべての労働者に適用される労災保険、40歳以降に健康保険と一緒に徴収される介護保険を除く各保険の加入条件は、以下のとおりです。
健康保険・厚生年金保険
- 1週間の労働時間が20時間以上
- 1ヶ月あたりの決まった賃金が8万8,000円以上
- 雇用期間の見込みが1年以上
- 学生でない
- 社会保険に加入することについて労使間で合意している
雇用保険
- 勤務開始時から最低31日間以上働く見込みがあること
- 1週間の労働時間が20時間超
- 原則、学生ではない
社会保険について詳しくはこちら
>社会保険完備(社保完備)とはどんな意味?
労働時間
短時間正社員は、フルタイム正社員と比べて所定労働時間が短いと定義されており、1日8時間、週40時間より短い時間で働きます。
勤務時間は、就業規則や制度に基づき、9時〜16時、10時〜17時、11時〜18時など柔軟に設定することもできます。また、1日の労働時間は変えずに、週の労働日数を5日から4日などに減らすことも可能です。このように、労働者の希望や状況に応じて利用しやすい制度設計が望ましいとされています。
医療・福祉の職場に多い、夜勤や早朝勤務、休日出勤なども、短時間正社員であっても可能です。ただし、未就学児を養育する労働者から請求があった場合は、短時間正社員に限らず夜勤をさせることは禁じられています。
給料
短時間正社員として働く場合は、労働時間の短縮に伴い、給料も下がるのが一般的です。フルタイムから短時間正社員に転換する場合は、減った労働時間に比例して減額し、入社時から短時間の場合は、フルタイムとして働いた場合の賃金を算出してから、労働時間に応じて減額します。
3.短時間正社員で働くメリット・デメリット
短時間正社員で働く前に知っておきたい、メリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット
ワークライフバランスが取りやすい
短時間のため、育児やプライベートとの両立が図りやすくなります。また、副業可としている職場では、ダブルワークに挑戦することも可能です。
キャリアを築ける
正社員としての就労経験がなかったり、ブランク明けだったりすると、フルタイムで働くことに不安を感じるかもしれません。しかし、短時間から始めれば徐々に慣れることができ、自分のペースでキャリアを積み重ねられます。
雇用期間の定めがない
短時間正社員は期間の定めがないため、雇い止めの心配がありません。また、基本給や賞与の算定方法がフルタイム正社員と同等のため、収入の増減への不安も軽減されます。
デメリット
収入が減る可能性がある
フルタイムより短い時間で働くため、一般的に給料は低くなります。これまでフルタイムで働いてきた人にとっては、家計への影響を事前に確認することが大切です。
求人が少ない
厚生労働省の調査によると、短時間正社員制度を導入している企業は約17%となっています(2023年時点)。そのため、フルタイム正社員やパート・アルバイトなどのほかの雇用形態と比べると、求人数は少ないのが現状です。
4.短時間正社員の求人を探す際のポイント
短時間正社員の求人を探す際は、労働時間だけでなく以下の項目も確認しましょう。
業務内容
短時間労働になることで、任される業務内容や責任、役職が変わってしまうケースがあります。時間の短縮に応じて業務量は減っても、フルタイム正社員と変わらない評価、キャリア形成のチャンス、業務設計がおこなわれているかを見極めましょう。
待遇面
賃金、評価、キャリア形成において、フルタイムの正社員と比べて大きな待遇差がないかチェックしましょう。また、同じ内容の業務をおこなうのに、正社員とパート・アルバイト、有期契約社員で不合理な待遇差を設けることは「パートタイム・有期雇用労働法」で禁じられています。同じ労働時間で働く非正規社員の募集がある場合は、業務内容や責任の範囲について確認しておくことをおすすめします。
働き方
短時間正社員であっても、夜勤や早朝勤務、休日出勤を求められる企業もあります。変則的な出勤があり得る職場では、短時間正社員にも適用されるのか事前に確認すると良いでしょう。また、対応が難しい場合は、事前に伝えておくことが大切です。
5.フルタイムの課題を解消する働き方
短時間正社員は、フルタイム正社員よりも短い時間で正規としての就労経験が積める雇用形態です。育児や介護などの理由を問わず利用でき、幅広い人にとって柔軟な働き方といえます。
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参考
- 厚生労働省|「短時間正社員制度」導入・運用支援マニュアル
- 厚生労働省|短時間正社員