目次
密着した人
サービス提供責任者 工藤 勇希さん
デザイン制作会社でデザイナーとして勤務したのち、訪問入浴介護の会社へ転職。現在は株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズの運営する訪問介護事業所「ケアリッツ錦糸町」にてサービス提供責任者(以下、サ責)として勤務。マネージャーの役割を担いながらヘルパー業務もおこなう。SNSで介護職に関する情報を発信している。
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【7:40】出勤

朝は8時前に出勤。通勤用バッグから仕事用の防水バッグへ中身を入れ替えたら出発の準備完了です。タイムカードや朝礼時間を設けていないため、出社したらすぐに訪問に出かけます。訪問スケジュールや申し送り事項はスマートフォンで確認します。事業所に寄らず、直接訪問先に向かっても構いません。

移動は電動自転車です。入社すると1人につき1台支給されます。
【8:00】1件目の利用者宅へ

利用者をデイサービスへ送り出すため、布担架で階段の移動介助をします。利用者に負担がかからないよう、声かけをしながら迅速かつ慎重におこないます。

送迎車を見送ったら1件目の業務完了。次の利用者宅へ向かいます。
【8:40】2件目の利用者宅へ

こちらは家族で利用するお宅で、2人の起床介助と排泄介助、服薬介助をおこないました。
【9:40】居宅介護支援事業所を訪問

空き時間を利用して居宅介護支援事業所を訪問しました。前日にケアマネジャーからメールが届いたので、その回答と相談をします。ケアマネジャーや看護師など多職種と繋がり、情報共有するのもサ責の大切な業務。顔を出して近況報告をすることも営業活動の一環です。
【10:00】3件目の利用者宅へ

こちらでは排泄介助と食事の準備、居室の清掃をおこないました。
【11:15】事務所に戻って事務作業

次の訪問まで時間があるため、事務所に戻って関係各所に電話したり、事務作業をおこなったりします。スタッフ間での利用者の情報共有も欠かせません。
【12:00】4件目の利用者宅へ

服薬確認と1週間分の食事の買い物代行をおこないます。ほかのスタッフへ業務の引き継ぎを兼ねて2名で訪問しました。

本人が希望したバナナやおにぎり、水などすぐに口にできるものに加え、総菜や冷凍食品を購入しました。薬は利用者に直接渡し、内服する過程もしっかりと見届けます。
【12:45】5件目の利用者宅へ

目の手術をした利用者の点眼介助をおこないます。こちらも業務の引き継ぎを兼ねて2名で訪問しました。

声かけをしながら自分で点眼してもらいますが、きちんと目の中にさすことができたか、容器の先端が眼球にあたっていないかなどに注意しながら支援します。同行したスタッフには手順のほかに、服薬カレンダーの位置や目薬の種類などを共有しました。
【13:00】昼食

この日はたまたま忙しく、お弁当を買って事務所で食べることに。街中を自転車で移動していることもあって、気になるお店を見つけたら試しに買ってみるそうです。
晴れた日は公園など屋外で食べることもありますが、スタッフ間の情報共有のために事務所に戻って食べることも多いそうです。利用者のケアにまつわる重要な情報はケアマネジャーに報告することもあります。
【14:45】6件目の利用者宅へ

午後の1軒目は入浴介助での訪問。爪切りや全身の皮膚状態の確認などもおこないました。
【16:00】7件目の利用者宅へ

こちらの利用者宅では掃除・環境整備と買い物代行をおこないます。環境整備とは利用者が安心・安全に生活できるよう、過ごしやすい空間に整えることです。また安否確認も兼ねています。

この日は体調確認、体温測定、室内での転倒がないかの確認や整理整頓などをおこないました。
こちらの利用者はガスの使用時に火の消し忘れのリスクが高いため、ヘルパーが訪問するたびに電気ケトルでお湯を沸かしておきます。
【17:00】事務所に戻って事務作業

次の訪問まで時間が空くため、事務所に戻って訪問介護計画書や担当利用者のモニタリングシート(毎月の状況報告書)の記入、スタッフへの共有メールなどの事務作業をおこないます。
計画書は作業がしやすいようExcelで管理されており、シンプルな内容であれば15分程度、複雑な支援計画であっても30〜40分ほどで作成できます。
【17:40】8件目の利用者宅へ

辺りはすっかり暗くなり、東京スカイツリーもライトアップされました。

この日最後の訪問は、全身の動きが不自由な利用者です。利用者がトイレ介助を希望しているため、二人体制で移動から排泄まで一連の介助をおこないます。
【18:30】事務所へ戻って業務終了

出勤時と同様にバッグの中身を入れ替えたら帰り支度は完了です。急ぎの共有事項などがなければ、事業所での残業などは基本的にないそうです。お疲れ様でした!
【インタビュー】なぜデザイナーから介護職へ?
以前はデザイン制作会社でデザイナーとして勤務していた工藤さん。なぜ介護業界へやってきたのでしょう。そして今後どう活動したいか、展望を聞きました。

──なぜデザイナーから介護職へ転職したんですか?
工藤さん:デザイナー時代は毎日終電過ぎまで仕事をして、時には始発で帰る生活をしていました。そんな無理をした生活で体調を崩してしまい、休職することになったんです。今後について悩んでいたところ、介護の仕事をしている友人から訪問入浴のドライバーの仕事に誘われて、それが福祉業界に入ったきっかけです。
常に笑いのある介護の仕事が思いのほか楽しくて、すぐ介護職員初任者研修をとりました。
──どんなところに介護職のやりがいを感じますか?
利用者さまに「待ってました」とか「ありがとう」って毎日言われるんですよ。こんなに人から必要とされて、お礼を言われる仕事はないなと思っています。そこが自信に繋がりますし、気持ちのいいことですね。
──逆にきついと思う瞬間はありますか?
命に直結する仕事なので、お別れがあることでしょうか。なので、なるべく気持ちが入り込みすぎないようにしています。もしお別れのときが来てもプロとして対応ができるよう、後輩にも日頃から気持ちの整理の仕方は伝えています。
──密着していて、利用者に対してとてもフランクに接していると感じました。
もちろん、初めからフランクに接しているわけではないですよ(笑)。失礼にあたらないよう、徐々に距離を詰めたりしながら信頼関係を形成しています。
利用者さまごとの価値観に合わせて、人によっては失礼のない範囲でくだけたコミュニケーションをとることによって、短い訪問時間のなかで自然な声が聞けたりするんです。
利用者さまの中には、ご病気の関係で単語を切ってお話ししたほうが理解しやすい方もいます。例えば「お薬飲めましたか?」と聞くより、「お薬 / 飲めた?」と聞くのもテクニックの一つです。
──細かい気遣いをしている、というか常に気を張っているんですね。
一人ひとりに合わせた話し方も大事ですし、家の中にある物の位置が変わっていないかなども見ています。帽子が移動していたら外出されたのかなとか、ありえない位置に物があったらなにかあったのかなとか。食べ物の量、水の量も目で見て、気になったらお聞きします。お洋服や髪型がいつもと違ったら必ず触れるようにしています。
あとは、利用者さまが介護士になにを求めているかは気をつけています。訪問したらすぐに排泄介助をしたほうがいいのか、後回しにして水分補給や室温管理などを先にしたほうがいいのか、表情や発言から汲み取るようにしています。
状態に不安があれば、その場でケアマネや看護師さんに報告してリスクを防ぎます。

──そういえば、ケアリッツは朝礼やタイムカードがないですよね。訪問介護事業所にしては珍しいのでは?
そうなんですよ。効率化できるところはしっかりと効率化していこうというのがケアリッツの方針で、わざわざ朝礼で集まったり帰りに申し送りしたりもなく、必要な情報共有は基本的にオンライン上で完結させています。自宅からの直行直帰もルール的には全然OKです。
あと、うちの訪問介護スタッフは基本的にみんな正社員採用なんですよ。それもあって年代は20〜40代が多く、活気がありますね。
──後輩を指導する機会が多いと思うんですが、“良いヘルパー”とはどんなヘルパーだと教えていますか? そういったヘルパー像はありますか?
相手の気持ちを理解できることはもちろんですが、なにより“気づけること”が大切で、それができるのが良いヘルパーだと思います。技術は時間の経過や研修で身につけられますが、“気づく力”は意識して鍛えないと磨くことは難しい。ご本人や家の中には常に目を配って、体調、肌の色、物の位置など確認するよう教えています。
──これからどのように働いていきたいなど、展望はありますか?
なんでしょう……介護職を胸を張れる職業にしていきたいなと思っています。本気で格好いい仕事だし、誰にでもできる仕事だとも思っていません。
なので、新しい層に向けた介護業界の良さや情報発信などもおこなっていきつつ、多職種と情報を共有し合える場の企画・提供をして幅広くアピールできたらと思います。
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