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障がいや年齢、体力などの理由から一般的な事業所で働くことが難しい人を対象に、職業訓練や生産活動を支援する就労継続支援。今回は、非雇用型とも呼ばれる就労継続支援B型で働く生活支援員の一日に密着しました。
密着した人
生活支援員 山口みゆきさん
埼玉県出身、3児(男)の母。アパレル企業で働いたのち結婚。育児中は工場などさまざまな職場にてパートを経験。息子たちが夢に向かって頑張っている姿に刺激を受け、夢だった福祉業界への挑戦を決意。障害者グループホーム勤務を経て2021年4月から就労継続支援B型事業所「バリューワークス八潮」にて生活支援員として働く。
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【8:50】出勤・申し送り

自宅から自転車で通勤している山口さん。

到着後は掃除をし、その日の予定と出勤する利用者について確認します。

山口さん以外にも、管理者、サービス管理責任者、生活支援員の合計4名が出勤しており、全員がそろったら申し送りを始めます。前日に利用者間でトラブルがあったそうで、そのときの様子や今後の接し方について話しました。
山口さん「申し送りといっても、いつもコーヒーを飲みながら和気あいあいと話す感じです。管理者が堅苦しい雰囲気が苦手な人なので、談笑していると利用者さんが到着するという流れが多いですね」
【10:00】利用者の受け入れ・午前の業務開始

10時前には続々と利用者が出勤してきます。ほとんどがグループホームから送迎バスで通所します。
あいさつを交わして検温をおこなったあと、その日の作業を割り振ります。

就労継続支援にはA型とB型があり、バリューワークス八潮は利用者と直接雇用関係を持たないB型。病気や心身に障がいを持ち、雇用契約を結んで働くことが難しい人が通っています。
tips|就労継続支援・就労移行支援
就労継続支援A型:利用者が事業所と直接雇用契約を結ぶのが特徴で、一定の給与が支払われる。雇用契約に基づいた勤務が可能なものの、障がいや難病などにより一般企業への就職が難しい18〜64歳の人が対象。
就労継続支援B型:事業所とは直接雇用契約を結ばないため、非雇用型とも呼ばれる。A型の仕事内容が難しい障がい者や、年齢や体力などの理由により一般企業で働けなくなった人を対象としている。作業訓練などを通して生産活動をおこない、できたものに対して賃金が支払われる。
就労移行支援:一般企業などへの就労を目指す障がい者を対象に、職業訓練や職場体験の機会を提供するなどの支援をおこなう。サービス提供期間は原則2年。
就労定着支援:生活介護・自立訓練・就労移行支援または就労継続支援を利用して一般就労した障がい者に対し、就労や日常生活で抱える課題にアドバイスや指導をおこなう。
山口さんは利用者に作業を教えたり、自宅やグループホームでも一人で生活が送れるよう調理方法のレクチャーや買い物の同行などをおこなっています。

この日は17人の利用者が出勤。それぞれのスキルや希望に応じた業務をおこないます。
就労以外にも生活面で自立できるよう、昼食も自分たちで作ります。

山口さんが調理の指示やサポートの合間にも、軽作業をおこなう利用者に呼ばれることもしばしば。職員が連携を取り合い臨機応変に対応します。
山口さん「3人の男の子を育てている真っ最中なので、大人数の調理には慣れています。業務をしていると家事や育児の経験が活かされているな〜と感じることが多いですよ。20代前半の利用者さんが『お母ちゃん』って慕ってくれることもあり、子どものようにかわいいです」
【12:00】昼休憩


利用者と一緒に持参してきたお弁当を食べます。

お弁当が提供され昼食代がかかる施設もありますが、バリューワークス八潮では作りたての食事を無料で提供しています。
山口さん「ここでは毎日みんなで作って運んで、できたての温かいご飯を囲んでいます。昼食を楽しみに来てくれる利用者さんも多く、喜んで食べてくれるので家族みたいで温かい気持ちになるんですよ」
【13:00】午後の業務

午後は引き続き軽作業の補助や指導をおこないます。利用者は16時までには送迎車で帰宅するため、残りの作業に集中して取り掛かります。

「また明日来たい! って思ってもらえるよう、元気いっぱい送り出すのが日課」と話す山口さん。帰宅する利用者を明るく見送ります。

施設に戻り、残っている利用者と作業を再開。納期前はいつもより忙しくなりますが、利用者が無理のないペースでこなせる量を受注・納品していると言います。

15時ころ集荷のトラックが到着し、利用者と協力して10箱近くを運び納品します。次回の受注と納品の確認も欠かしません。

15時30分ごろには、残っていた利用者も全員帰宅します。送迎バス以外にも徒歩や自転車で通う利用者も必ず外で見送るそうです。
【16:00】残りの作業・片付け

利用者を必ず定時で帰すため、やりかけの作業や片付けは職員がおこないます。
【17:00】ミーティング

送迎に出ていた職員が戻ると、ミーティングを始めます。主に、この日の利用者の様子、体験や見学で来た人の今後の計画などを話し合いました。
山口さん「サービス管理責任者や施設管理者がとにかく明るいので、一日中笑いが絶えない職場です。これまで長続きした仕事がなかったんですけど、出社して一日があっという間で本当に天職に出会えたなと感じています。
入職したてのころは利用者さんが移行支援やA型にシフトできるようにと必死になっていたんです。でも、管理者に『コーチングじゃなくていいよ。毎日ここに通えることが奇跡だし、いつか利用者さんたちの人生においてあんな人もいたなって思ってもらえるくらいでいいんだよ』と言われてハッとしました。利用者さんに無理をさせてまでA型や移行支援に行かせなくてもいいんだと気付かされました」
【18:00】退勤

18時になったら退勤です。お疲れさまでした!
「教えるんじゃなくて、巻き込む」

育児がひと段落したとき、無資格・未経験ながら福祉の世界に飛び込んだ山口さん。就活にスポーツにと頑張る3人の息子たちがキラキラして見え、「自分もやりたかったことに挑戦してみよう」と入職を決意したそうです。
山口さん「福祉の世界はおろか、人に何かを教える経験すらありませんでした。でも漠然と人の役に立つ仕事に就きたいという思いがずっとあったので、仕事を始める前はとくに不安はなかったです。面接でいまの管理者とサービス管理責任者に出会って迷わず『ここだ!』と決めました。
最初は利用者さんも数人しかいなかったので、毎日みんなでラジオ体操や散歩したり、たこ焼きパーティーしたり(笑)。気づいたら定員(20人)ギリギリにまで利用者さんが来てくれるようになっていたんです。ここに来ると私も利用者さんも明るくなるし、帰りたくないって思うくらい楽しんでいます」
業務中に心がけていることを聞いてみました。
山口さん「教えることも大切だし必要なんですけど、巻き込んで一緒にやるという姿勢を意識しています。一人が作業をしていたらほかの人にも『○○さんも一緒にやってみる?』と聞いてみたり、私自身も一緒に参加してみたり。その日の予定になくても利用者さんの様子を観察してできそうなら声かけてみるなど、できることも人との関わりも広げていくイメージでしょうか。支援員としての立ち位置もありますが、自分も参加して一緒に成長していきたいなと思っています」

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