目次
1.児童福祉司とは
子どもや保護者を支援する児童相談所の職員
児童福祉司とは、子どもの福祉に関する子どもや保護者からの相談に応じ、支援や調査をおこなう職種です。児童福祉法で定められた児童相談所の業務を担う地方公務員です。
2022年現在、児童相談所は全国に228ヶ所あり、任用予定者を含め5,783人の児童福祉司がいます。児童虐待防止対策の強化により、2024年度までに6,850人までに増員される予定です。
児童福祉司の仕事内容
児童福祉司の業務は、児童相談所でおこなう児童福祉に関する相談、調査、支援です。支援が必要な子どもや家庭からの相談に応じることはもちろん、一時保護や児童福祉施設への入所の手配といった業務もおこないます。
- 子ども、保護者などからの児童福祉に関する相談に応じる
- 必要な調査、社会診断*をおこなう
- 子ども、保護者などに必要な支援・指導をおこなう
- 子どもだけでなく家族へのアプローチも含めた関係調整をおこなう
主な相談内容としては、以下のようなものがあります。
児童相談所が対応する主な相談内容 | |
---|---|
養護相談 | 虐待、保護者の病気や離婚などで子どもが家庭で生活できなくなったときの相談 |
育成相談 | 子どもの落ち着きがない、学校に行きたがらない、チックや夜尿などの心配があるときの相談 |
非行相談 | 家出、窃盗、乱暴、薬物などの習慣があるときの相談 |
知的・身体障がい相談 | 知的・ことばの発達の遅れや肢体不自由、自閉傾向などがあるときの相談 |
里親に関する相談 | 里親として家庭で子どもを育てたいときの相談 |
児童福祉司とほかの仕事との違い
児童相談所を含む児童福祉サービス・施設では、児童福祉司のほかにも児童の支援に関わる職種が働いています。とくに児童福祉司と混同されやすい児童心理司、児童指導員との違いは以下のとおりです。
児童心理司
児童心理司(心理判定員)は、児童福祉司と同じく児童福祉法で定められた職種ですが、心理学的技法に基づいた支援をおこなう点が児童福祉司と異なります。行政機関・民間施設のどちらも勤務先となり、児童相談所で働く場合は児童心理司、それ以外の児童福祉施設で働く場合は心理判定員と呼ばれます。
児童相談所の配置基準では児童福祉司2人に対し児童心理司1人以上とされており、2022年現在で全国に2,347人配置されています。現状は児童心理司が不足しているため、厚生労働省は2024年までに配置基準を満たすよう是正することを目指しています。
児童指導員
児童指導員は支援を必要とする子どもたちの育成や生活指導をおこなう職種で、児童福祉司が児童相談所全般の業務を担うのに対し、児童指導員は児童相談所の一時保護所の業務を主に担うのが特徴です。そのほか、民間を含めた児童福祉施設でも働く仕事です。
児童相談所など行政機関で働く場合は公務員として、民間施設の場合はその職員として勤務します。
2.児童福祉司になるには何が必要?
任用資格を取り地方公務員試験に合格する
児童福祉司として働くには、任用資格の要件を満たしたうえで、地方公務員試験に合格して児童相談所に配属される必要があります。任用資格とは特定の職務に就くために必要な資格のことで、児童福祉司そのものは資格ではありません。
児童福祉司任用資格の対象となる福祉・教育関連の資格取得後、一定の実務経験を経て都道府県に採用されると児童福祉司になることができます。また、一部の資格や、大学や専門学校で特定の課程を修了している場合、実務経験なしで任用資格を得ることができます。

児童福祉司の任用資格一覧
児童福祉司になるための「資格のみルート」「資格、実務経験・講習会ルート」にあるように、任用資格の対象となるのは医療・福祉・教育に関わる以下の10資格です。このうち医師、社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師以外の資格は指定施設における一定の実務経験と講習会の受講が必要であり、実務経験の要件は資格によって異なります。
具体的な実務経験の要件は下記のとおりです。
資格 | 実務経験 |
---|---|
社会福祉主事 |
|
助産師 保健師 教員(1種) |
指定施設で1年以上相談援助業務に従事 |
看護師 保育士 教員(2種) 児童指導員 |
指定施設で2年以上相談援助業務に従事 |
指定施設とは、社会福祉士および介護福祉士法、精神保健福祉法による厚生労働省令で定める施設で、保健所や地域包括支援センターなどの公的機関、児童相談所を含む児童福祉施設、障害福祉施設、精神科病院や乳児院、保育所などが含まれます。
児童福祉司になる最短ルートとは?
児童福祉司になる最短ルートは「福祉関連の課程修了ルート」で、具体的には以下の二通りです。
- 都道府県知事が指定する児童福祉司等養成校を卒業し地方公務員試験を受ける
- 大学で心理学、教育学、社会学を専修し卒業後、指定施設で1年(以上)実務経験を積む
児童福祉司等養成校は国立武蔵野学院、国立障害者リハビリテーションセンター学院の2校で、いずれも修業期間は1年です。受験資格が大学院に入学できること(学部卒相当)になるため、児童福祉司になれるまでの期間は大学を卒業して1年の実務経験を積む場合と同じです。
3.児童福祉司の将来性
児童虐待の相談件数が10年間で倍増していることを受け、2022年に決定された「新たな児童虐待防止対策体制総合強化プラン」では、2024年に向けて児童福祉司を約1,000人増員することを掲げています。2022年度から2023年度においては、人口170万人あたりの児童福祉司の配置数が、78人から86人に増員されました。

また、2024年4月からは改正児童福祉法が施行され、児童相談所が取り組む入所措置や一時保護の環境整備がおこなわれます。そのためにも人員の充実が図られており、国と都道府県により採用活動への補助金を支出する「児童福祉等専門職採用活動支援事業」などが展開されています。
児童福祉司は児童福祉向上の機運とともに、需要が高まる仕事だといえるでしょう。