1.ヤングケアラーとは?
大人に代わって家事や家族の世話を日常的におこなう子ども
病気や障がいを抱える家族の介護やケア、幼いきょうだいの世話を日常的におこなう子どもをヤングケアラーといいます。
文部科学省と日本総研が小学6年生と大学3年生を対象におこなった実態調査によると、小学6年生の15人に1人、大学3年生の16人に1人がケアをおこなっている家族が「いる」と答えています。

園児のヤングケアラーも存在
同調査によると、家族の世話をしている人のうち小学校入学前からケアをしている人が17.3%、低学年(小学1〜3年)からケアをしている人が30.9%いることもわかっています。ヤングケアラーの一部は保育所や幼稚園に通いながら家族のケアをおこなっているのです。
背景の一つに家族構成の変化が挙げられます。核家族化や共働き、ひとり親家庭の増加により、家庭内の誰かが病気や要介護状態になった場合、子どもに負担が行きやすい家庭が増えています。また、晩婚・晩産化により親や祖父母の年齢が上昇し、幼いうちからケアの担い手になりやすいことも理由の一つです。
2.ヤングケアラーが抱える問題
ヤングケアラーは日常的にどんなケアをおこなっているのでしょう。厚生労働省は10の例を挙げています。

掃除や洗濯などの家事、幼いきょうだいの世話、障がいや病気のある家族の介護、家計を支えるための労働などさまざまです。
日本には古くから「家族の面倒は家族がみるもの」という倫理観が存在します。童話や時代劇でも子どもが親の看病をしたり、親に代わって労働をしたりする姿が描かれ、それが親孝行と捉えられていました。しかし現代社会においては、子どもが家族のケアに時間を費やすことがさまざま問題に発展することがわかっています。下記はその一部です。
<進路に関わる>
勉強やスポーツにあてるはずの時間を家事や介護へ費やし、学力や運動能力の低下が懸念されます。それにより進路が狭まったり、進学や就職を諦めるケースも見られます。
<子どもらしい過ごし方ができない>
成長期に十分な睡眠が取れない、友だちと遊ぶ時間を奪われ交友関係を築けないなどの問題が発生します。
<相談する相手がいない・相談しない>
家庭状況を知られたくないと学校や周囲に隠す子どももいます。また、家族のケアをすることは当たり前であり、問題だと自覚していない可能性があります。
<ダブルケアのリスクが生じる>
幼いきょうだいの面倒と親や祖父母の介護を同時に担わなければならない環境に置かれる子どももいます。そこに自身の病気が重なると、家族全員の生活が破綻する危険性があります。
3.ヤングケアラーを巡る支援の動き
国・自治体の支援
厚生労働省は、2022年度から2024年度をヤングケアラー認知向上の集中取り組み期間と定め、「ヤングケアラー支援体制構築モデル事業」を開始しました。具体的には下記の取り組みがおこなわれています。
ヤングケアラー支援体制構築モデル事業の内容
- 自治体にヤングケアラー・コーディネーター(自治体と民間事業団体、相談者と福祉サービスをつなぐ役割)を配置し、情報収集や適切な支援につなげる
- 福祉・医療・介護・教育などの関係機関や専門職に研修をおこなう
- オンラインサロンの開催、ピアサポート等を設置し相談窓口を整備する
各都道府県では専門の相談窓口の設置が進んでいます。窓口では社会福祉士や保育士、臨床心理士などの専門職が相談に応じ、ヤングケアラーを発見した場合、医療機関や介護事業所などの支援機関と連携しながら必要な支援をおこないます。
民間の支援
2022年度から栃木県、福井県、大分県、横浜市、福岡市の「児童家庭支援センター」で、ヤングケアラー支援のモデル作りが開始されます。施設には社会福祉士や公認心理師などの職員が在籍し、就学や就労、生活に関する相談に応じるほか、精神的なケア、食事や掃除の家事援助など負担を減らす支援をおこなう予定です。
栃木県内の児童家庭支援センターでは、ヤングケアラーのいる家庭にお弁当を配りながら関係性作りを進めています。家庭の要望を聞きながら、効果的な支援策を探っていく方針です。
個人でできること
民生委員として話を聞くことや、子ども食堂の配膳ボランティア・遊び相手など、地域によってできることがあるかもしれません。地域のボランティア活動について調べてみてください。
4.まずはヤングケアラーを知ることが大切
メディアやドラマでも取り上げられ、目にする機会が増えたヤングケアラー。家事や介護に忙殺され、かけがえのない時間を犠牲にしている現実を知ることと、手を差し伸べることが大切です。
しかし当事者やその保護者の中には「介入されたくない、特別扱いされたくない」と思っている人も存在します。
周囲の大人が実情や本人たちの心情を理解し、適切な支援へと繋げられる体制作りが進められることと、相談できる体制が広がることを切に願います。
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