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ケアマネジャーが受ける必要のある研修とは?
ケアマネジャーは、介護保険サービスを利用するために必要なケアプラン(介護サービス計画書)を作成し、関係する事業者や医療機関、自治体などと連携しながら、利用者に最適な介護サービスを提供する仕事です。
ケアマネジャーになるためには、専門員証の交付や更新のタイミングで受講すべき研修がいくつかあります。まずは試験に合格し、実務研修を修了します。

またケアマネジャーになったあとは、5年ごとの更新が必要です。更新のためには、専門研修Ⅰ・Ⅱの受講、もしくは更新研修を受ける必要があります。

>ケアマネジャーの詳しいなり方や仕事内容はこちらの記事をチェック!
受講が義務付けられている研修は主に3つあり、それぞれの内容は次のとおりです。
介護支援専門員実務研修
ケアマネジャーの試験に合格後、1年以内を目処に受講が義務付けられています。介護支援専門員実務研修を修了しケアマネジャーとして登録されることで、はじめてケアマネジャーを名乗ることができます。
受講条件 | 介護支援専門員実務研修受講試験に合格していること |
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受講時間 | 87時間 |
研修内容 | ケアマネジャーとして業務をおこなううえで必要となる基礎知識や倫理観、技能について学ぶ。ケアプランの作成やアセスメントを習得する実習のほか、グループワークによる演習がある |
研修費用 | 全国平均57,017円 |
介護支援専門員専門研修Ⅰ
介護支援専門員資格登録簿に登録されており、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所などで働いているケアマネジャーを対象とした研修です。
受講条件 | 就業後6ヶ月以上の人で、居宅介護支援事業所などにおいて介護サービス計画の作成をおこなっていること |
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受講時間 | 56時間 |
研修内容 | 初任者〜中堅レベルのケアマネジャー向けの内容。共通講義に加えて就業先別(居宅・特養・老健・グループホームの4コース)の演習もある |
研修費用 | 全国平均33,312円 |
介護支援専門員専門研修Ⅱ
実務就業期間が3年以上かつ、介護支援専門員専門研修Ⅰを受講済みの人を対象とした研修です。
受講条件 | 就業期間が3年以上の人で、専門研修課程Ⅰを受講済みまたは受講中であること |
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受講時間 | 32時間 |
研修内容 | 中堅以上のケアマネジャー向けの内容で、支援困難事例への対応方法や技術などを学ぶ。事例をもとにした演習もおこなわれる |
研修費用 | 全国平均23,421円 |
更新研修(専門研修ⅠとⅡの内容に該当)
専門研修の受講要件に満たない実務経験者(就業後6ヶ月未満)、または介護支援専門員証の有効期間がおおむね1年以内に満了する人を対象とした研修です。専門研修ⅠとⅡの内容に該当するため、就業後6ヶ月目以降に専門研修Ⅰを、就業後3年目以降に専門研修Ⅱを受講するか、有効期間満了が近づいた時期に更新研修としてまとめて受けることもできます。
受講条件 | 有効期間満了まで1年以内の人 |
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受講時間 | 実務経験者は88時間/実務未経験者は54時間 |
研修内容 | ⅠとⅡの内容 |
研修費用 | 全国平均39,170円 |
実際に研修を受けた人の感想
実際にケアマネジャーの研修を受けたふたりに、研修内容や実施方法、受講した感想や課題などを聞きました。
ケアマネジャー8年目のSさん「新たな視点が得られたグループワーク」
話を聞いた人
ケアマネジャー8年目のSさん
福祉の専門学校で介護福祉士の資格を取得。社会福祉法人に入職後、老人ホーム、グループホームを経験し転職。デイサービスで経験を積んだのち、同法人内の居宅介護支援事業所に異動となりケアマネジャーに。現在は独立開業し、居宅介護支援事業をおこなっている。
──これまでどのような研修を受けてきましたか。
Sさん:介護支援専門員実務研修(以下、実務研修)と専門研修Ⅰ・Ⅱ、それから2022年に主任介護支援専門員研修を受けました。
──それぞれどんな内容だったか簡単に教えてください。
実務研修はケアマネジメント業務とは何かという基本的な内容でした。利用者さんが相談〜契約に至るまでの流れから、アセスメント、モニタリング、ケアプランの見直しまでの一連の流れについて学びました。
専門ⅠとⅡは更新のタイミングで受けました。ケアマネ業務のおさらいとか地域包括支援ケアシステムとはみたいな内容で、多職種連携についてなども学びましたね。ⅠもⅡも講義以外に4〜6名ほどのグループワークがありました。
──グループワークではどんなことを話し合うのでしょうか。
Ⅰでは、講師の先生が提示した事例に対して、各グループでアセスメントやケアプランの作成をします。Ⅱでは、家族支援が必要な事例や多職種連携が必要な事例といったテーマごとに1事例が選出され、事例提出者が発表をします。その事例に対して全体で質問を投げかけながらアセスメントをより深めていく時間があり、その後、各グループで課題を分析するといった内容でした。
「どんな課題があり、利用者にはどんな支援が必要か?」「テーマに沿った支援のポイントは?」などを考えて、グループごとに発表しました。

──それぞれの研修を受けてみて良かった点はありますか?
専門ⅠとⅡでおこなわれたグループワークでは、いろんなケアマネの話から課題の捉え方や、支援の方向性などさまざまな視点を学べたのが良かったです。他人の思考方法が見られるのでケアプラン作りの参考にもなりました。あと、自分が立てたプランに質問が寄せられるので、アセスメントで足りない部分に気づくきっかけにもなりましたね。
──では、反対に課題に感じたことがあれば教えてください。
受講時間が長い。やはりこれに尽きるかと……。常に学んでいかないとついていけない仕事なので、知識のアップデートや理論も必要ですが、どこも慢性的な人手不足なので業務にも影響出ますしね。
グループワークはためになりましたが、座学の部分は日々ケアマネ業務をしていればわかる内容ですし、個人的に学べるレベルに感じました。
──なるほど。では、研修内容をもっとこうしてほしいなどの要望はありますか?
実務で使える具体的なアドバイスやツールの紹介が欲しかったです。ケアマネの役割や理想論は教えられるのですが、実地指導が入ったときにひっかからないための記録の書き方や、多職種連携で使えるツールとその使い方なんかが知りたかったです。実務で困るのはこういう点なので。
事前に実務で困ったことをアンケートで取って、それに答えてもらうのが理想ですね。多くても6日以内には納めてほしいです。
あと、更新制度はやめてほしいです。国家資格でも更新しない資格はたくさんあるので。
ケアマネジャー1年目のデンセツノカイゴさん「オンライン研修よりも集合研修が理想」
話を聞いた人
ケアマネジャー1年目のデンセツノカイゴさん
介護福祉士としてケアハウスに10年間勤務。2022年にケアマネジャー資格を取得し、所属する法人の別施設にてケアマネジャーとして就労したばかり。ブログでは、介護施設におけるおもしろエピソードやほっこり話などを自作のマンガで発信している。
──介護福祉士として働きながらケアマネジャーの試験に合格したそうですね。その後の実務研修はどのように受けましたか?
デンセツノカイゴさん:研修の実施方法は受ける地域によって違いますが、座学もグループワークもオンラインだったので会社で受けました。87時間の研修を一日5〜8時間に分けて合計12日くらいでしたね。講義ではAチームとBチームそれぞれ100人前後が同時に受けて、グループワークでは5〜6人で話し合う感じです。
──会社で受けられたのは良かったですね。オンライン講義はどのような印象でしたか?
知らない人同士だし、講師もあまりディスカッションに入ってきてくれなかったのでやりづらさを感じました。進行役や書記など役割が与えられるんですが、コミュニケーションが取りづらいので最初は進行もままならなかったです。
内容に関してはケアマネが地域で果たす役割や、関わる職種について理解できたのは良かったです。これまで介護の現場しか経験してこなかったので、新たな視点は得られましたね。ただ、内容が難しくて頭に入ってこなかった部分もありました……。
──また5年以内に更新研修がありますね。
更新研修については賛否も分かれるところですが、個人的にはもっと短いスパンであって良いかなって思ってます。たしかに長時間で大変だなとは思うんですが、実際に業務を経験してみると行き詰まることも多いと思うので。
──研修内容をもっとこうしてほしいなどの要望はありますか?
参考書に沿った内容を講師が話すという感じだったんで、もっとグループワークの時間が多いほうがためになるかと。まだ実務についていない段階で受けたので、よりイメージしやすくなりそうかなと。あとは、オンラインより集合研修のほうが温度感が伝わってくるし、同業者同士の繋がりが築けて良さそうだなと思いました。
参考
- 東京都福祉保健局|介護支援専門員の資格及び研修の体系
- 厚生労働省|介護支援専門員専門研修ガイドライン
- 厚生労働省|全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料