目次
1.訪問介護事業所とは
訪問介護の拠点となる事業所
訪問介護事業所は、利用者が可能な限り自立した日常生活を送れるようにするために、自宅での介護をおこなう訪問介護員(ホームヘルパー)をはじめとする介護職員が在籍している事業所です。身体介護、生活援助、通院等乗降介助の一部または全部を担います。
要支援1・2の人が対象の場合は介護予防訪問介護、要介護1〜5の場合は指定訪問介護(いわゆる訪問介護)となります。
訪問介護事業所数は増加している
厚生労働省の介護給付費等実態統計によると、訪問介護事業所数は2018年あたりで若干の落ち込みを見せたものの、2019年以降増加を続け3万5,000に迫る状況です。高齢化率のピークは2042年頃とみられており、今後も増加傾向で推移すると考えられます。

訪問介護員の有効求人倍率は15倍
厚生労働省の社会保障審議会が公表している資料によると、訪問介護員の有効求人倍率は14.92倍(2020年)と非常に高い数値となっています。
有効求人倍率とは求職者1人に対して何件の求人があるか示した指標で、大きければそれだけ売り手市場であることを意味します。つまり働き手を求める事業所が多く、求職者にとって有利な状況です。

全職種の有効求人倍率が1.5倍未満で推移していることを踏まえると、訪問介護員がいかに需要が高いかわかります。経験者はもちろん、未経験者や異業種から転職をしたい方にとっても挑戦しやすい状況だといえるでしょう。
2.訪問介護の仕事内容
訪問介護サービス利用までの流れ
介護保険サービスのひとつである訪問介護サービスは、ケアマネジャーが作成したケアプランにもとづいて契約・利用されます。

なお、介護サービス利用にあたって要介護度ごとに介護保険給付の区分支給限度額があり、その範囲内で必要なサービスを組み合わせて利用します(利用者負担は1〜3割)。要介護度別の区分支給限度基準額は以下のとおりです。
要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
---|---|---|---|---|
16,765単位 | 19,705単位 | 27,048単位 | 30,938単位 | 36,217単位 |
訪問介護の1日の流れ

訪問介護員の仕事は、まず事業所に出勤し、一日数ヶ所利用者宅を訪問、事業所に戻り記録や報告の作成をしてから退勤する流れになります。また、直行直帰を可としている事業所も多いようです。
▼訪問介護員の一日の仕事を動画で見る
tips|訪問介護でできること・できないこと
訪問介護でおこなえるサービスは、身体介護、生活援助、通院等乗降介助です。身体介護は直接利用者の身体に接触する介助、生活援助は利用者の日常生活を支援する身体に触れないサービス、通院等乗降介助は通院などでの乗車前後を含めた介助をいいます。
身体介護の例:食事や着替え、入浴、排泄などの介助
生活援助の例:本人の部屋の掃除、日用品の買い出し、本人の普段の食事の調理
訪問介護では、直接利用者の援助に該当しないことや、日常生活の範囲を超えるサービスはできません。具体的には、利用者本人ではなく家族のための家事や来客対応、普段の掃除ではない大掃除や部屋の飾り付けなどが含まれます。
また、訪問介護員は医療行為をおこなうことはできません。ただし、一定の条件のもと喀痰吸引等研修を修了している場合、喀痰吸引や経管栄養をおこなうことは可能です。
3.訪問介護事業所で働くには
訪問介護事業所の人員基準
訪問介護事業所で配置しなければならないのは、管理者、サービス提供責任者、訪問介護員です。それぞれの人員配置については、以下のように決められています。
管理者
1事業所につき1人、専任かつ常勤の管理者を配置しなければいけません。業務に支障がなければ同一敷地内にあるほかの事業所の仕事と兼務することもできます。
管理者になるために必要な資格はありませんが、訪問介護をマネジメントする立場として制度面の知識はもちろん、現場の業務にも精通していることが求められます。
サービス提供責任者
サービス提供責任者(サ責)は、専任かつ常勤で1事業所の利用者40人に対して1人(端数を増すごとに1人)配置されます。常勤換算で人員基準を満たしていれば問題ありません。
常勤のサ責が3人以上配置されており、かつそのうち1人が専任である場合は、通常は利用者40人に対しサ責1人の配置基準を50人に引き上げることができます。
>サ責の仕事内容や資格要件について、詳しくはこちらの記事で解説しています
訪問介護員(ホームヘルパー)
訪問介護員は、常勤換算で2.5人以上配置されます。訪問介護員になるためには、介護福祉士資格を持っているか、介護職員初任者研修、介護職員実務者研修、生活援助従事者研修のいずれかを修了している必要があります。
>訪問介護員(ホームヘルパー)について、詳しくはこちらの記事で解説しています
訪問介護の仕事は近年コロナ禍や介護職員の高齢化、物価高による経営難などさまざまな影響を受けながらも、働き手のニーズは高まり続けています。興味がある方はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。