目次
1. 療養型病院(療養病床)とは
療養型病院とは、慢性期の患者に医療ケアやリハビリテーションをおこなう「療養病床」がある病院の通称です。療養病床は長期療養の患者が利用する病床(ベッド)で、入院は1年を超えることもあります。なお、法律上は「療養型病院」という名称は存在せず、療養病床がある医療施設を「療養病院」「療養型病棟」と呼ぶ場合もあります。
2024年12月時点で日本には病院が8,055施設あり、そのうち3,331病院に療養病床があります。また、1日平均の患者数は、入院している患者全体113万3,001人のうち、22万7,045人が療養病床を利用しています。
病床は医療法で5種類に分けられる
日本の病院の病床は、医療法によって以下の5種類に分類されています。
特定の病気の人が入院する病床
- 結核病床
- 感染症病床
- 精神病床
そのほかの病気の人が入院する病床
- 一般病床
- 療養病床
このうち、結核病床・感染症病床・精神病床には、それぞれ指定された病気の人が入院します。そのほかの病気で入院する場合、治療のステージによって一般病床か療養病床のどちらに入院するかが分かれます。
療養病床に入院できる対象者
療養病床は慢性期の患者を対象としています。慢性期とは、長期間にわたって治療が必要な状態を指し、入院期間は1年以上になるケースもあります。なお、厚生労働省が2023年におこなった調査では、病床種類別の平均入院日数は、一般病床の15.7日に対して、療養病床では119.6日となっています。
2. 療養型病院(療養病床)で働く職種と一般病床との違い
療養病床には、さまざまな職種の配置が義務付けられています。また、一般病床とは患者の治療ステージが違うため、各職種の配置基準が異なります。
療養病床 |
一般病床 |
|
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患者48人につき1人 |
患者16人につき1人 |
|
患者4人につき1人 |
患者3人につき1人 |
|
看護補助者 |
患者4人につき1人 |
ー |
患者150人につき1人 |
患者70人につき1人 |
|
病床数100以上の病院に1人 |
病床数100以上の病院に1人 |
|
適当数 |
適当数 |
|
適当数 |
適当数 |
3. 療養型病院(療養病床)と介護医療院の違い
かつて患者が入院する療養病床には、医療療養病床と介護療養病床(介護療養型医療施設)の2種類がありました。このうち、介護療養病床は医療の必要性の低い高齢者が長期的に入所するケースが多く、社会保障費を圧迫することが課題となっていました。そのため、2018年に介護療養病床の後継として介護医療院がスタートし、介護療養病床は2024年3月をもって廃止されました。
医療保険が適用される療養病床と、介護保険で運営される介護医療院とでは、入所する人の「医療区分」が異なります。医療区分とは、患者の医療の必要性を3段階で示す基準です。
療養病床には原則的に、医療区分3(人工呼吸器を使用している状態など)と医療区分2(筋ジストロフィー、パーキンソン病関連疾患など)の患者が入院し、看取りやターミナルケアにも対応しています。一方、介護医療院は要介護認定を受けていることが条件で、医療区分1(医療区分3・医療区分2に該当しないケース)の人も入所できます。
療養病床 |
介護医療院 |
|
---|---|---|
対象者 |
医療区分2〜3 |
医療区分1〜3 |
適用される保険 |
医療保険 |
介護保険 |
提供サービス |
医療 |
医療・介護 |
4. 療養型病院を利用する
療養型病院利用の流れ

STEP1:入院を希望する療養型病院を見学する
療養型病院への入院は長期間になる可能性もあります。そのため、希望する病院に行ったことがない場合は、どのような病院なのか見学してみると安心です。
STEP2:紹介状・看護サマリー・必要書類を提出する
主治医が作成した診療情報提供書や、看護師が患者の病歴や看護内容をまとめた看護サマリーを提出します。病院によっては検査データが必要になるケースもあります。
STEP3:受け入れ可能か判定を受ける
提出された資料を基に、療養型病院の医師が受け入れ可能かどうか判断します。
STEP4:空床が出るまで待つ
受け入れ可能な場合でもすぐに入院できるとは限りません。満床の場合は空きが出るまで待機します。空床が確保できたら、入院日を決定し入院します。
療養型病院の費用
療養型病院に入院する場合の費用は、病気の種類や入院期間によって大きく異なります。医療費や食事代については、医療保険によって定められた額が必要で、医療費の自己負担は一般的に1〜3割です。
また、個室など快適な入院環境を希望する場合は、追加で負担がかかります。さらに病院によっては、衣類やタオルのレンタル費用がかかる場合もあります。
5. 療養型病院で働くメリット・デメリット
メリット
療養型病院には慢性期の患者が入院しています。そのため、一般病床と比べると入院が長くなり、看護師や医師などと接する期間も長くなります。急性期の患者の多い一般病床とは異なり、働くうえでは以下のような点がメリットといえるでしょう。
- 患者とじっくり向き合える
- 落ち着いた環境で勤務できる
- 慢性期ならでは専門性が身につく
デメリット
一方で、慢性期の患者が多いため、新たな知識を得たり、手技の技術を高めたりできるシーンは少ないかもしれません。また、食事や排泄などで患者への介助も必要になります。そのため、勤務先の候補とする際は、以下のようなデメリットを意識すると良いでしょう。
- 多様な症例の知識やスキルアップにつながりにくい
- 身体的な負担が大きいケースもある
6. 療養型病院は患者とじっくり向き合える職場
療養型病院は療養病床をメインとする病院です。慢性期の患者が治癒を目指して入院するため、入院期間は1年以上になるケースもあります。
入院期間が長くなるため、じっくりと一人ひとりに向き合える職場です。大変さを伴いますが、患者が回復し元気になっていく姿を見られることは、やりがいのひとつといえるでしょう。