目次
1.ターミナルケア(終末期医療)とは
ターミナルケア(終末期医療)とは、終末期を迎えた人が、最期まで自分らしく過ごせるよう支援する医療・介護ケアのことです。主な目的は、痛みや不快感などの心身の負担をやわらげることで、積極的な延命治療はおこないません。
ターミナル期(終末期)とは?
ターミナル期(終末期)とは、病気や老衰が進行し、治療による回復が見込めず、余命が数ヶ月以内と判断される時期を指します。
日本医師会の報告書によれば、終末期の判断基準を「治療方針を決める際に、患者がそう遠くない時期に亡くなる可能性を配慮するかどうか」であるとされています。
2.ターミナルケアの業務内容
ターミナルケアで実施する内容は、身体的ケア・精神的ケア・社会的ケアの3つに分けられます。

身体的ケア
身体的ケアの主な目的は、呼吸困難や全身の倦怠感、痛みなどの終末期に現れやすい身体的な苦痛の緩和です。
具体的には、医師による投薬や点滴、酸素吸入などの医療的な処置を中心におこないます。加えて、介護職や看護師は、食事、入浴、排泄の介助、褥瘡(床ずれ)予防の体位変換など、日常生活全般をサポートし、患者や利用者が少しでも心地よく過ごせるように努めます。
精神的ケア
精神的ケアの主な目的は、不安や抑うつ、認知機能の低下、睡眠障害などの心の負担を軽減することです。
看護師や介護職が中心となり、不安に寄り添った傾聴や、家族や友人と過ごす面会時間の調整などをおこない、穏やかな気持ちになれるよう精神面を支えます。施設によっては、公認心理師・臨床心理士や専門カウンセラーによるセラピーを実施することもあります。
社会的ケア
社会的ケアの主な目的は、利用者とその家族の経済的負担の軽減です。
医療ソーシャルワーカーが中心となり社会福祉制度や保険制度に関するアドバイスや、各種手続きのサポートなどをおこないます。必要に応じて在宅移行のサポートや、相続、葬儀などの相談にも応じます。
3.緩和ケア・看取り介護との違いとは
ターミナルケアと緩和ケアの違い
ターミナルケアと緩和ケアは、どちらも苦痛をやわらげ、穏やかに過ごせるよう支援するケアですが、開始時期や対象となる人に違いがあります。
ターミナルケア |
緩和ケア |
|
---|---|---|
対象 |
疾患を問わず終末期を迎えた人とその家族 |
命にかかわる病気の患者とその家族 |
開始時期 |
患者が亡くなる可能性を考慮した時期から |
患者が診断を受けた直後から |
主なケア内容 |
医療的な緩和処置、心理的・社会的なサポート |
|
主な提供場所 |
病院・介護施設・自宅 |
病院 |
ターミナルケアは、治療による回復が見込めないと判断された終末期に始まるケアです。一方、緩和ケアは、がんや心血管疾患などの、命に関わる病気と診断された時期から実施されます。病気の治療と並行して提供され、病状の進行に合わせてその割合は徐々に高まります。

実際の現場では両者を厳密に区別することは難しく、ターミナルケアは緩和ケアの一部として実施されるのが一般的です。
ターミナルケアと看取りケアの違い
ターミナルケアと看取りケアは、開始時期と、主なケア内容、提供場所が異なります。施設によっては、これら2つの言葉が同じ意味合いで使われることもあります。
ターミナルケア |
看取りケア |
|
---|---|---|
対象 |
疾患を問わず終末期を迎えた人とその家族 |
|
開始時期 |
患者が亡くなる可能性を考慮した時期から |
医師が回復不可能な状態と判断した時期から |
主なケア内容 |
医療的な緩和処置、心理的・社会的なサポート |
日常生活の支援 |
主な提供場所 |
病院・介護施設・自宅 |
介護老人福祉施設・認知症対応型グループホーム・特定施設入居者生活介護・自宅 |
医療的な処置を中心とするターミナルケアとは異なり、看取りケアでは、主に食事、排泄、入浴・清拭などの、日常生活の支援をおこないます。
4.ターミナルケアをおこなう場所
病院
病院でのターミナルケアは、主に緩和ケア病棟で提供されます。主な対象はがん患者ですが、入院基準は医療機関によって異なります。
2024年6月時点で、緩和ケア病棟がある施設数は468施設、病床数は9,746床にのぼります。高齢化が進むなか、緩和ケア病棟の数は過去25年間で5倍以上に増加しており、今後さらに需要の増加が見込まれます。

介護施設
特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)などの介護施設でも、ターミナルケアが提供されています。病院と比べると医療的な処置には限りがありますが、利用者同士や職員とのコミュニケーションがとりやすいため、孤独感の軽減につながるといわれています。
全国老人保健施設協会が2023年度に実施した調査(回答数1,179施設)によれば、約8割の施設が「看取りに対応している」と報告されています。介護施設で最期を迎える人は年々増加しており、今後、施設におけるターミナルケアのニーズが高まると予想されます。
自宅
自宅でのターミナルケアは、「在宅ターミナルケア」や「在宅緩和ケア」「在宅ホスピス」とよばれ、主に在宅療養支援診療所や訪問看護ステーション、看護小規模多機能型居宅介護などで提供されています。
ケアの内容は、介護施設のターミナルケアと大きく変わりませんが、住み慣れた環境は利用者にとって安心感につながります。また、緩和ケア病棟や介護老人保健施設の入所を待つ間のつなぎとして利用されることもあります。
近年、そのニーズは高まっており、厚生労働省が2020年に公表したデータによると、在宅ターミナルケアの実施件数は年間1万件を超え、2012年と比較すると3倍以上に増加しています。

5.ターミナルケアを提供するうえで大切なこと
利用者の意思を尊重する
ターミナルケアにおいて最も大切なことは、利用者やその家族の意思を尊重することです。日々利用者と対話を重ね、どのようなケアを望んでいて、どのような最期を迎えたいのか理解する姿勢が求められます。
また、一度意思確認をしても、時間とともに考えが変わることもあります。そのため、その時々の気持ちに寄り添い、意向の変化にも柔軟に対応することが重要です。
多職種との連携を密にする
ターミナルケアは、医師や看護師をはじめとして、介護職やリハビリ職などの多職種との連携が欠かせません。利用者の状態や希望などを密に共有することで、それぞれの専門性を発揮しやすく、結果としてより満足度の高いケアへとつながります。
正しい知識を身につける
終末期の患者は、心身ともに繊細な状態です。そのため、小さな変化も見逃さず、迅速に対応することが求められます。
現場での経験に加えて、民間資格の「終末期ケア専門士」の資格取得や、看護師を対象とした「特定行為研修」などの受講をとおして、終末期ケアや緩和ケアに関する知識を深めることで、質の高いケアの提供につながります。
6.介護保険における訪問看護ターミナルケア加算
訪問看護ターミナルケア加算は、在宅で過ごす終末期の要介護認定者にターミナルケアを提供した場合に算定できる加算です。2024年度の介護報酬改定以降、報酬単位は2,000単位から2,500単位に引き上げられました。
算定要件
介護保険における訪問看護ターミナルケア加算の要件は以下のとおりです。
- 死亡日または死亡日前14日以内に、2回以上訪問し、ターミナルケアをおこなっていること
- 24時間連絡可能で、必要に応じて訪問看護をおこなえる体制を整備していること
- 主治医との連携のもと、訪問看護におけるターミナルケアに関わる計画と支援体制について、利用者とその家族などに説明をおこない、同意を得ていること
- ターミナルケアの提供について、利用者の身体状況の変化など、必要な事項が適切に記録されていること
※ターミナルケア加算は1人の利用者に対して1事業所に限り加算可能。介護保険のターミナルケア加算を算定した場合、主治医の特別な指示があった場合を除いて、他制度の保険によるターミナルケア加算は算定できない
7.最期まで尊厳ある生活を支援する
ターミナルケアは、終末期を迎えた人の身体と心の痛みをやわらげながら、その人らしく尊厳ある最期を迎えられるよう支えるケアです。医療従事者や介護職にとって、死と向き合う時間が長く、精神的負担が大きい仕事ですが、一人ひとりの生き方に寄り添うことができる仕事です。
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