看護小規模多機能型居宅介護(かんたき)とは? 主な特徴、利用条件、スタッフの仕事内容・給料などを紹介

医療的ケアが必要な人の在宅生活を支えられるよう、小規模多機能型居宅介護に「訪問看護」の機能を加えた「看護小規模多機能型居宅介護」について紹介します。

看護小規模多機能型居宅介護とは?

1.看護小規模多機能型居宅介護(かんたき)とは?

1-1.概要・設立背景


看護小規模多機能型居宅介護(通称:かんたき、看多機)とは、「訪問(訪問介護)」「通い(通所介護)」「泊まり(短期入所)」の介護サービスに「訪問看護」の機能が加わった、介護と看護を一体的に提供する介護保険サービスです。

看護小規模多機能のベースとなっているのは、「訪問」「通い」「泊まり」3つの介護サービスを提供する「小規模多機能型居宅介護」です。従来の介護サービスでは、訪問ならホームヘルパー、通いならデイサービス、泊まりならショートステイと、それぞれ別の居宅サービスへ依頼する必要がありましたが、小規模多機能ではこれらを自由な組み合わせでひとつの事業所内で提供することができます。

しかし、要介護者の自宅での生活を推進する動きの中で、小規模多機能では対応しきれない「退院直後や終末期などの症状が不安定な時期に在宅生活を続けるための支援」「重度の要介護者を持つ家族の身近な相談先」が求められるようになりました。

こうした医療依存度の高い人の在宅生活を支えるため、2012年に新設されたのが「看護小規模多機能型居宅介護」です。設立当初はその成り立ちから「複合型サービス」という名称でしたが、提供するサービス内容のイメージがしにくいという指摘があり、2015年に現在の名称に変更されました。

看護小規模多機能は「地域密着型サービス」のひとつとして、地域包括ケアシステムの中心的な役割も期待されています。

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1-2.主な特徴


看護小規模多機能は、以下のような特徴があります。

◎サービス提供内容の自由度が高い
24時間365日運営、定額制で利用回数の制限がないため、「家族に急用が入り、デイサービス後にそのまま宿泊」「安否確認のための5分間の訪問」など、利用者の状況にあわせた組み合わせで、自由度の高いサービスを提供できます。

◎同じ事業所のスタッフが対応
ひとつの事業所内で訪問・通い・泊まりの提供ができるので、サービスを変えるたびにスタッフを変更したり新たに事業所を探したりする必要がありません。顔馴染みのスタッフが対応してくれる安心感があります。

◎医療処置にも対応できる
主治医との連携・指示のもと、看護職員による医療処置をおこなうことができます。

◎少人数定員
登録定員が29名と少人数のため、利用者一人ひとりと向き合った看護・介護をおこなうことができます。

1-3.活用事例


ここでは、実際に看護小規模多機能を利用した人の事例を紹介します。

■胃ろうを造設したAさん
Aさんは嚥下(えんげ)困難になり、栄養素を摂取するために胃ろうを造設しました。Aさんの家族は、スタッフに教わりながら胃ろうの対処をすることに。しかし進行性の症状のため家族では対応できず、近所の看護小規模多機能を頼ることになりました。

スタッフはAさんと家族をアセスメントし、訪問看護とデイサービス(通所介護)を利用することに決まりました。看護小規模多機能を利用することで、訪問看護だけでなく必要なときに長時間のデイサービスも利用できるようになり、家族は安心して仕事にも行けるようになりました。

■糖尿病のBさん
Bさんは糖尿病でインスリン注射が必要です。しかし訪問看護は週1回の利用にとどまり、糖尿病インスリン注射の管理ができませんでした。そこで、看護小規模多機能を活用し、インスリン注射の管理はもちろん、必要に応じて健康管理などにも来てもらえるようになりました。

1-4.利用条件・料金・定員


■利用条件


看護小規模多機能は、以下に該当する人が利用できます。

▼看護小規模多機能型居宅介護を利用できる人
要介護1〜5 の認定を受けている
・事業者と同じ市町村に住んでいる


利用するには、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)に相談し、その後条件に合う事業所が見つかれば面談・契約をおこない、サービス開始となります。

看護小規模多機能を利用する場合、その事業所専属のケアマネジャーに変更する必要があります。専属ケアマネジャーが担当することで、事業所と利用者の状況に応じて柔軟かつ迅速で継続的なサービス提供が可能になります。

なお、看護小規模多機能を利用しながら、ほかの事業者の訪問看護、訪問介護、通所介護、短期入所サービスを併用することはできません。訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、福祉用具貸与・販売、住宅改修は併用できます。

また、医療保険による訪問看護を受けている人も利用できます。

■利用料金


毎月の利用料は要介護度に応じた月額定額制のため、一ヶ月の介護保険利用限度額を上回るかどうかの心配なく利用することができます(宿泊費・食費などは別途)。

※月額費用の目安(1単位=10円、1割負担の場合)
 12,341円(要介護1)、31,141円(要介護5)

利用回数にも上限はなく、各サービスの一日あたりの定員以内であれば何回でも利用が可能です。

■利用定員


事業所あたりの登録定員は29名と少人数なので、利用者同士の距離感も近く、アットホームな雰囲気になりやすいです。

▼看護小規模多機能型居宅介護の利用定員数
・1事業所あたりの登録定員:29人
・1日あたりの通いサービスの定員:最大18人
・1日あたりの泊まりサービスの定員:最大9人
※訪問サービスは定めなし(利用者の様態や希望による)


1-5.事業所数・利用者数


2012年のサービス開始以降、事業所数は毎年右肩上がりに増加しており、2017年度時点では全国で357施設でした(※1)。

利用者数も比例して増加傾向にあり、2016年時点の年間利用者数は約5,100人。1事業所あたりの平均利用者数は19人でした(※2)。

看護小規模多機能型居宅介護 要介護度別の利用者数の割合
(参考資料※3を元に作成)

要介護度別の利用者の割合を見ると、全体の約6割が要介護3以上の中重度者となっており、小規模多機能と比較すると介護度の重い利用者が多いことがわかります。

2.看護小規模多機能型居宅介護で働く

2-1.人員配置基準


看護小規模多機能では、訪問・通い・泊まりの各サービスで担当を固定化せず、柔軟に業務にあたります。

人員配置はおおむね小規模多機能の基準に沿っており、さらに看護職員を手厚く配置する構成になっています。以下の表のうち太字箇所は、小規模多機能と主に異なる部分です。

代表者 認知症対応型サービス事業開設者研修の修了者
または保健師もしくは看護師
管理者 常勤・専従であって、認知症対応型サービス事業管理者研修の修了者
または保健師もしくは看護師
日中 通い 利用者3人に対し、常勤換算で1人以上
(1人以上は保健師、看護師または准看護師
訪問 常勤換算で2人以上
(1人以上は保健師、看護師または准看護師
夜間 泊まり 時間帯を通じて2人以上(1人は宿直勤務可)
※宿泊利用者がいない場合は不要
※看護職員と連絡体制の確保が必要
訪問
看護職員 常勤換算で2.5人以上
ケアマネジャー 1人以上

2-2.スタッフの平均人数


■看多機と小多機の職種別従事者数(常勤換算)
看護小規模多機能型居宅介護 小規模多機能型居宅介護
介護職員 8.7人 8.9人
看護師 3.2人 0.5人
准看護師 1.0人 0.5人
保健師 0人 0人
理学療法士 0.2人 0人
作業療法士 0.1人 0人
言語聴覚士 0人 0人
ケアマネジャー 0.6人 0.7人
その他職員 0.6人 0.7人
合計 14.3人 11.3人
(参考資料※2より引用)

2015年の調査によると、1事業所あたりのスタッフの平均人数(常勤換算)は14.3人でした。このうち看護職員(看護師・准看護師・保健師)は4.2人で、小規模多機能の1.0人と比べると3人以上多くの看護職員が従事しています。

また、看護小規模多機能では理学療法士などのリハビリスタッフが0.3人従事している点も特徴と言えます。

2-3.仕事内容


「訪問介護」「通い」「泊まり」の主な仕事内容は、以下のとおり。小規模多機能での仕事内容と同様と考えてよいでしょう。

■訪問介護
・安否確認、健康チェック
・掃除、洗濯、調理、配食、ゴミ出しなどの生活援助
・食事介助、移動介助、排泄介助などの身体介助
・服薬介助
・通院・外出介助
・地域集会などの参加のための調整
※1回あたりの訪問時間:15〜60分程度

■通い・泊まり
・健康チェック
・食事介助、移動介助、排泄介助などの身体介助
・レクリエーションの企画・実施
・利用者の送迎
・事務作業


上記に加え、主に「訪問看護」でおこなう仕事内容には、以下のようなものがあります。

■訪問看護
・点滴、注射、褥瘡処置などの医療行為
・褥瘡、拘縮、肺炎などの予防
・末期がん患者へのペインコントロール(緩和ケア)
・ターミナルケア、看取りケア
・医療機器の管理、家族への指導
・服薬管理・指導


看護小規模多機能では、訪問看護・訪問介護を単体でおこなう場合と比べ、スタッフは利用者と過ごせる時間が長く、また看護職員と介護職員が近い距離で支援方針や情報を共有できる環境にあります。

利用者の健康状態、生活状況、精神状況の全体像を把握してケアに活かすことで、利用者の自立度が高まった事例も報告されています(※4)。看護と介護が密に連携をとることで、ケアの質を高めていきましょう。

2-4.働くメリット・デメリット


看護小規模多機能で働くメリットとデメリットをまとめます。

<メリット>


◎ 看護と介護の知識・経験を幅広く身につけられる
「訪問看護」「訪問介護」「通い」「泊まり」のサービスをひとつの事業所内で提供するため、看護と介護の幅広い知識と経験を得られます。そのほか、臨機応変に業務にあたる適応力や判断力、コミュニケーション力などの総合的なスキルを磨ける環境です。

◎ 提供サービスの制約が少ない
定額制で利用回数に上限がなく、サービス内容の制約も少ないため、利用者からのさまざまな要望に応えることができます。

◎ 一人ひとりに向き合った看護・介護ができる
少人数定員なので、利用者一人ひとりとの交流を大切にしながら、じっくりと向き合ったケアができます。

<デメリット>


△ 仕事の対応範囲が広い
「訪問」「通い」「泊まり」のサービスを提供するためには、それだけの知識や経験が必要です。これまで「訪問のみ」「通いのみ」など、特定のサービスのみを担当してきた人には、その業務範囲の広さにはじめは戸惑うかもしれません。

△ 夜勤・宿直がある
24時間365日運営しているため、夜勤や宿直があります。夜勤や宿直を希望しない場合は、日勤のみで募集している求人を探すか、採用担当者へその旨を相談してみてもいいでしょう。

△ 症例が少ない
少人数定員であることから、大規模施設のようにさまざまな症例の利用者と接する機会は多くありません。利用者と長期にわたって関係を築いていきたい人が向いています。

2-5.スタッフの給料


看護小規模多機能で働くスタッフの平均給料はどのくらいでしょうか? 2020年6月にジョブメドレーに掲載されていた看護小規模多機能の求人を集計したところ、以下の金額となりました。

看護師/准看護師 介護職/ヘルパー
正職員(月給) 30.1万円 21.6万円
契約職員(月給) 30.0万円 18.4万円
パート・バイト(時給) 1,453円 1,117円

これらの金額には夜勤手当や交通費、賞与などは含まれていないため、実際の支給総額はさらに高い可能性があります。また、看護小規模多機能の事業所はまだ数が多くないため、数値はあくまで参考としてください。

2-6.サービス評価


2015年度の制度改正から、看護小規模多機能型居宅介護事業所はサービスの質の改善・向上を目的として、事業所による「自己評価」と、第三者による年1回以上の「外部評価」を実施し、結果を公表することが義務付けられています。

(1) 自己評価


従業員全員を対象に「スタッフ個別評価」を実施。スタッフ一人ひとりが自身の取り組みや関わりについて振り返りをおこないます。
その後「スタッフ個別評価」を持ち寄り事業所全体でミーティングを開き、それぞれの考え方や取り組み状況に関する認識の違いなどを話し合い、事業所全体の振り返り・改善点などをまとめます。

(2) 外部評価


利用者やその家族、地域の医療関係者、市町村の職員、地域住民などの第三者に出席してもらい「運営推進会議」を開催します。事業所による「自己評価」結果をもとに、第三者の公正な立場からサービス内容を見直すことで、課題点や改善点を明らかにします。

(3) 評価結果の公表


外部評価の結果は、利用者へ送付するとともに、「介護サービス情報公表システム」や事業者のホームページでの掲載、市町村窓口や地域包括支援センター、事業所内での掲示などにより公表します。

評価結果の公表については、サービスの利用者だけではなく、看護小規模多機能型居宅介護での仕事を探している求職者にとっても参考になります。適正な運営がされているか、地域関係者からどのような評価を受けているのかなど、気になる事業所をチェックしてみるといいでしょう。

3.今後の展望


看護小規模多機能の制度が開始して8年が経ちました。事業所数は着実に増えてはいるものの、急速に進む高齢化の需要に対して供給はまだ追いついていません。

看護小規模多機能の事業所は、小さな施設規模で複合的なサービスを提供する特性から、看護職員数の確保などの運営課題も少なくなく、新規参入事業者が伸び悩む原因にもなっています。そうした中、2018年度の介護報酬改定では「訪問体制強化加算」が追加されるなど、普及に向けた制度改正が進められています。

「多角的に利用者を支えたい」「家族の幅広いニーズに応えたい」といった想いを持って働くスタッフが多いと聞く看護小規模多機能型居宅介護。看護・介護職員としてのスキルアップをはかりたい人や、さらなるやりがいを求めている人は、近くの事業所を調べてみてはどうでしょうか。

<看護小規模多機能型居宅介護の求人を探す>

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看護師/准看護師
管理職(介護)
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■参考資料
※1:看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091038.html

※2:小規模多機能型居宅介護及び看護小規模多機能型居宅介護(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000169140.pdf

※3:平成30年度介護給付費等実態統計の概況(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/kyufu/18/index.html

※4:看護小規模多機能型居宅介護のサービス提供の在り方に関する調査研究事業報告書(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000133781.pdf

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