サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?入居条件やサービス、有料老人ホーム・シニア向け分譲マンションとの違いなどを解説

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、見守りサービスやバリアフリー構造が備わっている、高齢者向けの賃貸住宅です。この記事では、サ高住で提供されるサービスや、ほかの高齢者向けの住まいとの違い、働く職種などを解説します。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?入居条件やサービス、有料老人ホーム・シニア向け分譲マンションとの違いなどを解説

目次

1. サービス付き高齢者向け住宅とは?

サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)とは、見守りや生活相談などのサービスを受けながら暮らせる、高齢者向けの住宅です。バリアフリーに配慮されており、単身や夫婦でも安心して、自宅のように自由度の高い生活を送ることができます。

2011年の「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」の改正により制度が始まりました。その後も増加を続け、2025年2月時点では全国に8,346施設、29万590戸のサ高住があります

入居条件・対象者

サ高住には法律で入居条件が定められており、以下のいずれかに該当する人が居住可能です。60歳以上であれば、自立の人でも入居できますが、一般的に要支援や要介護度2〜3までの人が暮らしおり、入居者の平均要介護度は1.8となっています

また、施設ごとに要介護度や認知症の有無など独自の条件を設けている場合もあります。

  • 60歳以上
  • 要支援・要介護認定を受けている人(60歳未満)

また、同居する人にも条件が定められています。配偶者であれば要支援・要介護認定を受けていなくても入居可能です。子どもなどの親族の場合は、認定を受ける必要があります。

  • 配偶者
  • 60歳以上の親族
  • 要支援・要介護認定を受けている親族
  • 特別な理由により同居させる必要があると知事が認める人

サ高住で受けられるサービス

サ高住には安否確認サービスと生活相談サービスの提供が義務付けられています。そのため、介護職や看護職などのケアの専門家が日中建物に常駐しています。

また、安否確認・生活相談だけでなく、多くのサ高住では食事や家事、介護、健康管理などのサービスを実施しています。一般社団法人高齢者住宅協会の調査によると、サ高住の96.4%で食事が提供されているほか、以下のようなサービスが提供されています。

サ高住で受けられるサービス

  • 状況把握・生活相談
  • 食事の提供
  • 入浴などの介護
  • 調理などの家事
  • 健康管理
  • 看取り

一般型と介護型の2タイプがある

サ高住には一般型と介護型の2種類があり、提供されるサービスが異なります。

 

一般型

介護型

特定施設入居者生活介護

×

安否確認・生活相談

食事

必須ではない

介護

外部サービス

施設内

看取り

×


一般型はサ高住全体の90.2%を占め、比較的自立している人や要介護度の低い人を対象としています。必須のサービスとして安否確認や生活相談が実施され、多くの場合、食事も提供されます。介護が必要な場合は、訪問介護など外部サービスを個別に利用できます。

一方の介護型は、介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けており、食事や入浴、排せつの介助などの介護サービスを施設内で受けられます。スタッフの配置基準も定められており、要介護度の高い人でも安心して暮らせる環境が整えられています。なお、厚生労働省の調査では、サ高住全体の25.3%が看取りにも対応しているとされています。

2. サ高住とほかの施設の違い

高齢者が暮らす施設にはさまざまな種類があります。ここではサ高住とほかの施設の違いについてみていきましょう。

有料老人ホームとの違い

サ高住と有料老人ホームは、施設について定める法律と、提供されるサービスが異なります。サ高住が高齢者住まい法による住宅なのに対し、有料老人ホームは老人福祉法で定められた介護施設です。

有料老人ホームにはいくつかの種類がありますが、ここでは「介護付き有料老人ホーム」と「住宅型有料老人ホーム」の2つを紹介します。

 

一般型サ高住

介護型サ高住

住宅型有料老人ホーム

介護付き有料老人ホーム

入居条件

  • 60歳以上
  • 要支援・要介護認定を受けている人(40歳以上)
  • おおむね60歳以上
  • 自立〜要介護の高齢者

特定施設入居者生活介護

×

×

主な提供サービス

  • 安否確認
  • 生活相談
  • 安否確認
  • 生活相談
  • 食事提供
  • 身体介護
  • 生活支援
  • 健康管理
  • 生活支援
  • 健康管理
  • 食事提供
  • 身体介護
  • 生活支援
  • 健康管理
  • 見守り

介護保険サービス

外部サービス

施設内

外部サービス

施設内

介護職員

×

×

契約

賃貸借契約

賃貸借契約

主に利用権

主に利用権


介護付き有料老人ホームは、介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けており、施設内で介護サービスが提供されます。一方、住宅型有料老人ホームはその指定を受けていないため、介護が必要な場合は、訪問介護などの外部サービスを個別に利用する仕組みです。

シニア向け分譲マンションとの違い

サ高住とシニア向け分譲マンションは、住宅やサービスに基準があるかどうかが異なります。サ高住が高齢者住まい法でバリアフリーや見守りについて規定されているのに対し、シニア向け分譲マンションには法律による取り決めはありません。

シニア向け分譲マンションは、主に自立の人を対象としており、娯楽施設やレクレーションが充実している物件が多くあります。

 

サ高住

シニア向け分譲マンション

入居条件

  • 60歳以上
  • 要支援・要介護認定を受けている人(40歳以上)
  • 主に60歳以上
  • 主に自立の人

根拠となる法律

高齢者住まい法

なし

主な提供サービス

  • 安否確認
  • 生活相談
  • 食事提供 など
  • 食事提供
  • 娯楽施設
  • レクレーション など

介護保険サービス

介護型:施設内

一般型:外部サービス

外部サービス

介護職員

介護型:◯

一般型:×

×

契約

賃貸借契約

所有権

3.サ高住を利用する

サ高住への入居の流れ

サ高住への入居の流れ

STEP1:情報収集・資料請求

安心して暮らせるサ高住を見つけるため、情報収集が重要です。まずは都道府県に登録されているサ高住の情報を、サービス付き高齢者向け住宅情報提供システムで検索してみましょう。気になるサ高住を見つけたら、資料を請求して、サービスや費用がニーズと合うか確認します。

STEP2:見学

一般的な賃貸住宅と同様に、サ高住も事前に見学しておくと安心です。実際にサ高住を訪問することで、施設や職員の雰囲気など資料にはない情報も得られます。

STEP3:体験宿泊

施設によっては体験宿泊が可能な場合もあります。食事や住み心地を確認できる機会になるので、積極的に活用しましょう。

STEP4:申し込み・審査

入居を希望するサ高住が決まったら、入居の申し込みをして審査を受けます。

STEP5:契約・入居

審査に通ったら入居日を決め、賃貸借契約を進めます。スムーズに入居できるよう、契約と同時に、不用品の処分など引っ越し準備を進めておくと良いでしょう。

サ高住の費用

サ高住で暮らすためには、敷金と月額利用料(家賃とサービスの費用)が必要です。部屋の広さやサービスに応じて費用は大きく異なりますが、一般的に敷金は0円〜数十万円、月額利用料10万円〜30万円程度といわれています。なお、法律で権利金などは設定できないことになっています。

サ高住に入居するメリット

自立・要支援・要介護度1〜2でも入居しやすい

一般的にサ高住は特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームと比べ、自立や要支援、要介護度の低い高齢者でも入居しやすい環境です。また、長期入院などの場合でも、事業者から一方的に解約できないことになっているため、安心して長く暮らせます。

有料老人ホームなどと比べて初期費用が低額

サ高住に入居する際は敷金などの初期費用がかかりますが、敷金は0円〜数十万円とされています。有料老人ホームに入る場合、数百万円の負担がかかる場合もあります。

自由に暮らせる

サ高住は自立の高齢者も多いため、多くの施設では外出・外泊にルールはありません。有料老人ホームでは外出・外泊を許可制とする施設もあるため、サ高住は生活の自由度が高いといえるでしょう。

サ高住に入居するデメリット

一般的な賃貸住宅に比べ家賃が高い

サ高住には安否確認・生活相談が義務付けられているほか、9割以上の施設で食事が提供されています。そのため、一般的な賃貸住宅より月額の負担は高まります。

要介護度・症状によっては入居できない

サ高住は物件ごとに入居条件が異なります。そのため、寝たきりなどで要介護度が高かったり、認知症だったりする場合は入居できない可能性もあります。

介護施設より見守りは少ない

サ高住全体の9割以上を占める一般型には、日中の見守りのみが義務付けられています。医師や看護師が常駐していないサ高住もあるため、入居者の状況に合わせて施設を選ぶ必要があります。

4.サ高住で働く

サ高住で働く職種

一般型のサ高住には、介護職や看護師などケアの専門家が日中、常駐することが定められています。ただし、介護施設のような人員基準はありません。

一方、介護型のサ高住は介護保険の特定施設入居者生活介護の指定を受けているため、介護付き有料老人ホームと同様の扱いとなり、以下の職種の配置が義務付けられています。

職種

配置基準

管理者

1人※兼務可能

介護職員看護職員

10:1※要支援者の場合

3:1※要介護者の場合

生活相談員

100:1

機能訓練指導員

1人以上※兼務可能

計画作成担当者

介護支援専門員1人以上※兼務可能

サ高住で働くメリット

入居者とじっくり向き合える

サ高住は入居者にとって「終の住処」になる可能性もある施設です。そのため、入居者との関わりは長期的なものになります。入居者の生活に寄り添い、支える仕事はやりがいにつながるでしょう。

接遇やマナーが学べる

サ高住には自立や要介護度の低い人も暮らしています。居住者とのコミュニケーションの機会が多いため、しっかりとした接遇やマナーが求められます。

負担が軽い施設もある

サ高住では主に自立や要介護度の低い人が生活しているため、特別養護老人ホームなどと比較すると、移乗介助やおむつ交換などの体力的にハードな作業が少ない施設もあります。

サ高住で働くデメリット

自立や要介護度の低い入居者が多いため、介助技術などのスキルアップにつながりにくい可能性があります。職場を探す際には、入居者の要介護度や介護業務の作業量などをチェックするようにしましょう。

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5.サ高住の登録基準

サ高住は国が定める制度のため、認定を受けるための登録基準があります。

 

登録基準

住宅

  • 各専用部分の床面積は、原則25㎡(約13.7畳)以上
  • 各専用部分に、台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備えたものであること
  • バリアフリー構造であること

サービス

  • ケアの専門家が少なくとも日中建物に常駐し、安否確認サービスと生活相談サービスを提供すること
  • 常駐しない夜間の時間帯は、緊急通報システムにより対応すること

6. サ高住は自立・要支援の高齢者の「終の住処」

サ高住は高齢者の暮らしに適したサービス・設備を備えた住宅です。介護職や看護職の見守りがあるため、自立や要支援の高齢者にとって、晩年を過ごす住宅の選択肢となっています。

働く職員にとっても、サ高住は自立した暮らしを維持している高齢者が多いため、入居者とじっくり向き合うことができ、接遇やマナーを身につけられる環境です。ジョブメドレーでは、サ高住の求人をはじめ、高齢者の暮らしをサポートするさまざまな職種の求人を幅広く扱っています。特定のキーワードで検索もできますので、あなたに合った職場を探してみてください。

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参考

読者の方へのメッセージ

サ高住は高齢者のアパート

サ高住は、高齢期の住まいの選択肢の一つとして誕生しました。サ高住の職員の役割は、ホテルのコンシェルジュのようなものだと思います。コンシェルジュはフランス語で本来「集合住宅(アパルトマン)の管理人」という意味です。一般型か介護型かにかかわらず、住まいであることを忘れずに、高齢者が暮らしやすくなるような接遇を心がけてほしいと思います。

峯尾 武巳 (介護の会まつなみ 理事長) 2024/02/27

プロフィール

「なるほど!ジョブメドレー」は、医療介護求人サイト「ジョブメドレー」が運営するメディアです。医療・介護・保育・福祉・美容・ヘルスケアの仕事に就いている人や就きたい人のために、キャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。仕事や転職にまつわるご自身の経験について話を聞かせていただける方も随時募集中。詳しくは「取材協力者募集」の記事をご覧ください!
身体障害者療護施設、知的障害児施設、特別養護老人ホームの勤務を経て、2003年から2018年まで神奈川県立保健福祉大学にて介護福祉学を専門に教鞭を執った。介護支援専門員の養成には、制度開始前から指導者という立場で携わり、埼玉・東京・神奈川を中心に法定研修講師を務めている。その他、認定介護福祉士養成研修など数多くの研修会講師も勤め、多方面で活躍をしている。

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