目次
1.基幹相談支援センターとは
地域の障がい者支援の総合的な窓口
基幹相談支援センターとは、障がい者の地域における相談支援の総合的な窓口です。障害者総合支援法により規定されており、2021年4月時点で全国1,100ヶ所に設置されています。
設置主体は市町村ですが設置義務がないため、基幹相談支援センターを設置している自治体は約半数ほどです。窓口は市町村の役所や福祉センターなどの公共施設内にあることが多くなっています。
基幹相談支援センターの役割
基幹相談支援センターでは、障がい者やその家族からの相談に対応し、必要に応じて関係機関と連携して支援します。個別のケースだけでなく、地域全体の相談支援をまとめているのが特徴です。

総合的・専門的な相談支援の実施
障がいの種類や一人ひとりのニーズに応じ、どの障害福祉サービスを受けるべきかわからない場合も含め、総合的に相談に応じます。相談支援専門員をはじめとした専門の職員が、困りごとが複雑なケース(困難事例)にも対応します。
地域の相談支援体制強化の取り組み
相談者に直接対応するだけでなく、地域の相談支援事業者への専門的な助言・指導や、研修などによる人材育成も基幹相談支援センターの役割です。また、連絡会議を開催するなど相談事業者や民生委員ら地域の相談機関との連携強化も推進します。
地域移行・定着促進の取り組み
障害者支援施設、児童福祉施設や病院から、生活の場を地域に移行する人への支援をおこないます。具体的には、市町村が設置する移行支援協議会の運営を受託し、支援を実施します。
権利擁護・虐待防止
障がい者への虐待防止の取り組みや、成年後見制度利用支援事業の実施により、権利擁護・虐待防止を図ります。
基幹相談支援センターとほかの施設との違い
基幹相談支援センターと混同されやすい施設として、相談支援事業所と地域包括支援センターが挙げられます。
基幹相談支援センターとほかの施設との違い | |||
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基幹相談支援センター | 相談支援事業所 | 地域包括支援センター | |
主な支援対象者 | 障がい者や家族 | 障がい者や家族 | 高齢者や家族 |
他機関との連携 | 相談事業者への専門的助言・指導・研修などをおこなう | 支援対象者への個別支援が中心 | 必要に応じて介護事業所をはじめとする他機関へつなぐ |
働く職種 |
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相談支援事業所との違い
基幹相談支援センターと相談支援事業所の違いは、個別・直接的な支援の枠を超えた連携をおこなうかどうかです。
相談支援事業所は、地域での暮らし、障害福祉サービスの利用計画、障がい児の相談支援を担います。それに対し基幹相談支援センターは、個別の相談業務にも取り組みますが、相談支援事業所を含む関係機関同士の連携強化や、各事業所で対応がうまくいかない場合のサポート・指導もおこないます。
相談支援事業所について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
地域包括支援センターとの違い
基幹相談支援センターが障がい者の支援をおこなうのに対し、地域包括支援センターは高齢者を対象に介護・介護予防に関する支援をおこないます。各市町村に設置されており、センター数は2022年4月時点で5,400ヶ所余りとなっています。
地域包括支援センターについて、詳しくはこちらの記事で解説しています。
2.基幹相談支援センターで働く職種
基幹相談支援センターの具体的な人員配置基準はありませんが、地域の実情に応じて相談支援の中核的な役割を担えるよう、以下のような専門的な人員を配置することとされています。
相談支援専門員
相談支援専門員は、基幹相談支援センターや相談支援事業所などで、専門的な知見をもって障がい者支援の相談に応じます。
相談支援専門員になるには保育士や社会福祉士などの資格や、一定の実務経験があるうえで「相談支援従事者初任者研修」を修了しなければならないため、無資格・未経験で就くことはできません。
社会福祉士
社会福祉士は、障がい者だけでなく、生活に困りごとを抱えるあらゆる人の相談援助をおこなう国家資格です。試験の合格率は3割前後と難関で、就職先は公共機関のほか福祉施設や学校、病院など多岐にわたります。
精神保健福祉士
精神保健福祉士は心の病気や悩み、精神障がいを抱えている人を対象に、相談や社会復帰の支援をおこないます。国家資格であり、社会福祉士、介護福祉士とあわせて三福祉士と呼ばれます。
保健師
保健師は、乳幼児から高齢者までさまざまな人を対象に、保健指導を通じて病気の予防や健康維持を支える専門職です。保健所をはじめとする公共機関に勤めることが多く、検診や啓発活動に従事します。保健師になるには、看護師国家試験、保健師国家試験の両方に合格する必要があります。
基幹相談支援センターの業務に向いている人は?
基幹相談支援センターの業務に取り組むには、冷静に状況を把握できる人、ストレス解消ができる人が向いているといえるでしょう。
相談支援を受ける人の困りごとは、本人の障がいだけが原因とは限らず、自覚がなくても家族や周囲も支援を必要としているケースがあります。すでに何らかの支援を受けていても、支援機関同士の連携不足や、支援内容が実状に適していないために問題が生じていることもあります。相談者の悩みに寄り添うことはもちろん、家庭の状況なども踏まえた冷静な支援が求められます。
また、相談支援では特性のある人と接するほか、相談者の家族や連携機関など、さまざまな立場の人をつなぐ調整役を担うことになります。やりがいが大きい一方で人間関係に起因するストレスを抱えやすい環境でもあるため、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。
3.基幹相談支援センターを利用するには
基幹相談支援センターで相談支援を受けるには、直接電話や窓口などで相談するか、ほかの支援機関がつなぐことにより間接的に利用するケースがあります。
障がい者やその家族が支援を受けたいときや、どんな支援を受けるべきかわからないときは、居住地の基幹相談支援センターに直接相談することができます。窓口での相談は営業時間(開庁時間)内ですが、電話やメールでの相談、緊急時の対応は24時間受け付けているところもあります。
すでに支援を受けているほかの施設が基幹相談支援センターの支援や助言を求めた場合、利用者や家族はとくに申し込みなどをする必要はありません。専門的な助言や支援機関の連携強化により、なかなか解決しなかった問題の改善が期待できます。
4.地域の障がい者支援をまとめる
基幹相談支援センターは、障がいのある人や家族からの相談対応、地域の支援機関のサポート・連携強化を担う、地域の障がい者支援の中心的存在です。地域に根ざした多角的な障がい支援を受けたい・支援をおこないたい人は、居住地の基幹相談支援センターを調べてみましょう。