目次
多職種連携・多職種協働とは?
さまざまな職種が連携して働くこと
多職種連携とは、医療・福祉の場において患者や利用者に関わるさまざまな職種が連携し、それぞれの専門性を発揮しながら職務にあたることを指します。
一方、多職種協働は異なる専門性を持った職種が集まり、同じ目的に向けて協力して働くことを指します。
ニュアンスはやや異なりますが、多職種連携と多職種協働で明確な違いがあるわけではありません。
多職種連携・多職種協働の目的
多職種連携・多職種協働の目的は、複数の専門性をかけ合わせることで、患者や利用者に対し適切な治療・ケアを提供することです。
医療や福祉のサービスを必要とする人は、病気や障がい、経済的困窮、社会からの孤立などの困難を複合的に抱えているケースもあります。さまざまな職種が関わり専門性を発揮することで、課題解決に向けた適切な支援や質の高いサービスの提供につなげられます。
チーム医療、地域包括ケアとの違い
多職種連携・多職種協働と似たような内容を指す言葉に「チーム医療」と「地域包括ケア」があります。
チーム医療は一人の患者に対し、複数の医療専門職がそれぞれの専門性を発揮しながら連携して治療やケアをおこなうことを指し、多職種連携・多職種協働の一部にチーム医療が含まれます。
一方、地域包括ケアとは、高齢者が医療や介護が必要になっても住み慣れた地域で自立した生活を続けることを目的に、医療・介護・予防・住まい・支援を確保するという考え方です。多職種連携・多職種協働は地域包括ケアを実現するための手段の一つです。
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多職種連携・多職種協働で大切なこと3つ
1.尊重する姿勢を持つ
多職種連携・多職種協働では異なる専門性を持つさまざまな職種が関わります。医師・歯科医師、看護師、理学療法士などの医療従事者、ケアマネジャーや介護職などの介護従事者、さらには地域の民生委員など、領域が異なる職種が意見を交換し患者や利用者を支援します。
ある職種では当たり前のことが、別の職種では通用しないこともあります。視点の違いがあることを理解したうえで、お互いを尊重する姿勢をもって連携することが大切です。
2.丁寧・円滑なコミュニケーションを心がける
患者や利用者に関する情報共有は多職種連携・多職種協働における要です。コミュニケーションをとるのは時間も労力もかかりますが、定期カンファレンスや連絡ノートなどを通じて丁寧におこなうことが大切です。
専門用語に頼りすぎずわかりやすく言い換える、相手の意見にも耳を傾ける、こまめな報告・連絡・相談を心がけることで、円滑なコミュニケーションが図りやすくなります。
3.専門分野の知識・技術を高める
多職種連携・多職種協働のためには、それぞれの職域における知識や技術が問われるため、自分の分野における専門性をしっかりと身につけていることが前提となります。
多職種連携・多職種協働のなかで力を発揮したい人は、専門性を高めるために研修などを通してスキルアップを図ると良いでしょう。
多職種連携・多職種協働の例
多職種連携・多職種協働はどのような場面でおこなわれているのでしょうか。ここからは過去にインタビューした看護師と薬剤師の実践例を紹介します。
訪問看護における多職種連携
Nさん 30代(取材時)
──医師やケアマネジャーさんなど、他職種との連携はどのくらい発生しますか?
看護師は医師の指示のもと動くので、診療内容が変わったときなどは確認のために先生に電話しますね。
──ケアマネジャーさんの場合はどうですか?
少なくとも月1回は必ず連絡をとりますし、訪問の合間に空いた時間があればケアマネさんの事業所に行って情報共有することも多いですね。
──同僚のリハビリ職の方との連携は、どんなやり取りがありますか?
お互いの専門分野が違うので、看護の知識でわからない疑問をリハ職の方に聞いたら即答してもらえて助かった、みたいなことは多いですよ。もちろん逆もありますし。
訪問診療と同じで、リハビリも看護と一緒には入れませんけど、時々どんなリハビリをしているか知るために同行することもあります。「今はこんな内容のリハビリをしていて、こうやってADLを上げているのか」って感じですね。
こういった多職種連携が取りやすいのは、同じ事業所で働いているからこそですね。
引用:【在宅医療・介護の仕事】看護師に聞く“患者さんを24時間看る”訪問看護の仕事とは?より
在宅薬剤師の多職種連携
Tさん
──「多職種連携」の言葉が出てきましたが、どのようなやり取りが?
看護師やヘルパーさんと連携することがあります。ただたまたま訪問のタイミングが重なることはありますが、直接的な接点はあまり多くはないですね。
患者さん宅には「申し送りノート」を用意していることが多いので、共有事項があれば各担当者が記入し、互いに目を通すような使い方をしています。
あとは電話で連絡したり、先ほどの多職種連携のツールを使うことも。
医療や介護を提供する場は病院や自宅、施設などさまざまで、関わる職種も多岐にわたります。一つの視点からではなく複数の専門性をかけ合わせておこなう多職種連携・多職種協働は、適切な支援やサービスの提供につながります。その実現のためには、職種の違いを越えて協力し合う関係性を築き、自身の専門性を発揮することが大切です。