目次
1.スクールソーシャルワーカー(SSW)とは
多角的な観点から児童を支援する専門職
スクールソーシャルワーカー(SSW)は、児童・生徒が生活のなかで抱えているさまざまな問題の解決を図る専門職です。文部科学省が2008年から導入を開始しました。
児童・生徒が抱える問題には、不登校、いじめ、暴力行為、虐待などがあります。これらの問題の背景には家庭や周囲の問題などが複雑に絡み合っていることから、さまざまな環境や要因を見て課題解決をおこなう必要があります。
スクールソーシャルワーカーは問題の原因を児童・生徒の発達状況や行動特性にあると考えるのではなく、家庭や周囲の環境に着目して支援をおこなうのが特徴です。そのため、本人への働きかけだけでなく家庭や学校、公的機関などと連携をとりながら改善を試みます。
スクールソーシャルワーカーの仕事内容
スクールソーシャルワーカーの主な仕事内容には、直接支援と間接支援があります。
直接支援
- 児童・生徒、保護者との相談(面談・家庭訪問・電話 など)
- 児童・生徒、保護者と学校を関係機関につなぐ
間接支援
- 児童・生徒の問題に関する情報収集と課題分析、支援方法の策定
- 校内ケース会議の開催
- 連携機関への情報提供、支援体制の構築
- 教職員の相談対応、研修の実施 など
2.スクールソーシャルワーカーの現状
配置する学校は増加傾向
スクールソーシャルワーカーの数は3,091人(2021年時点)で、配置先として最も多いのは小学校です。

小学校で働くソーシャルスクールワーカーの数は多いものの、それぞれの学校数に対する配置状況を見てみると、中学校とほぼ同程度であることがわかります。
学校数 | SSWの配置数(割合) | |
---|---|---|
小学校 | 18,980校 | 12,021人(63.3%) |
中学校 | 9,944校 | 6,283人(63.2%) |
高等学校 | 4,791校 | 1,483人(31.0%) |
参考|一般財団法人日本私学教育研究所「学校数の推移(令和5年度)」
支援内容の内訳

支援内容では不登校(26.0%)、家庭環境(21.8%)の合計が半数近くを占めています。
小中学校における不登校児童数は29万9,048人と過去最多(2022年度時点)となっており、スクールソーシャルワーカーには、児童・生徒を取り巻く環境や関係性の改善が期待されています。
スクールカウンセラー・こども家庭ソーシャルワーカーとの違い
似た職種にスクールカウンセラー(SC)があります。スクールソーシャルワーカーが児童・生徒の置かれている環境へ働きかけて問題解決を図るのに対し、スクールカウンセラーの主な支援内容は児童・生徒の悩みを聞き、カウンセリングやアドバイスを通じて心のケアをおこなうことです。ソーシャルワーカーとスクールカウンセラーは児童の状況を共有するなど連携して支援に努めます。
また、2024年度にこども家庭ソーシャルワーカーが新設されます。子ども家庭福祉分野に専門性を持つ新たな資格として創設され、虐待や貧困など子育て世帯を取り巻くさまざまな課題に対応する職種です。スクールソーシャルワーカーが主に学校に配置されるのに対し、こども家庭ソーシャルワーカーは児童相談所や市区町村の虐待相談対応部門、民間の児童養護施設や乳児院、児童家庭支援センター、保育所などの幅広い職場に配置されます。
>こども家庭ソーシャルワーカーの詳細はこちら
こども家庭ソーシャルワーカーとは?
3.スクールソーシャルワーカーになるには
資格または技術・経験が必要

スクールソーシャルワーカーとして働くには、福祉の専門資格である社会福祉士、精神保健福祉士、心理学の専門資格である臨床心理士や公認心理師いずれかの資格が要件となっていることが多いです。
ただし、なり手不足などの課題を抱える地域や学校においては、知識や経験に応じてスクールソーシャルワーカーとしての就労が認められるケースもあります。
福祉系有資格者ルート
社会福祉士または精神保健福祉士は、資格取得後に日本ソーシャルワーク教育学校連盟が実施する教育課程を修了する必要があります。
心理系有資格者ルート
臨床心理士または公認心理師は、指定された保健福祉系の大学院へ進学し、卒業することが必要です。
特例ルート
上記以外にも、福祉・教育分野における専門的な知識や技術、経験があり、以下の業務が遂行可能と判断されれば就労できる場合があります。
- 問題を抱える児童・生徒が置かれた環境への働きかけ
- 関係機関等とのネットワークの構築、連携・調整
- 学校内におけるチーム体制の構築、支援
- 保護者、教職員等に対する支援・相談・情報提供
- 教職員等への研修活動 など
スクールソーシャルワーカーの保有資格

スクールソーシャルワーカーの保有資格は、社会福祉士(63.9%)精神保健福祉士(33.9%)の順となっており、福祉関連の有資格者が多いことがわかります。この理由には、心理系の資格より福祉系の有資格者が多いことや、福祉系の資格は就労までのハードルが比較的低いことなどが考えられます。
4.スクールソーシャルワーカーの給料と将来性
平均年収 | 割合 | |
---|---|---|
正職員 | 464万円 | 6.1% |
契約職員 | 295万円 | 64.0% |
パートタイム職員 | 241万円 | 28.9% |
派遣職員 | 200万円 | 0.6% |
公益財団法人社会福祉振興・試験センター|社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査(令和2年度)結果報告書より作成
スクールソーシャルワーカーの平均年収は正職員で464万円、契約職員で295万円という結果でした。また、正職員として就業している割合は6.1%となっており、9割以上が非正規雇用の職員です。雇用形態による賃金格差が大きいため、正規雇用の拡充や処遇改善が必要です。
児童・生徒が抱える問題は多岐にわたり、とくにいじめや不登校の件数は増加しています。専門職や学校、関連機関などが連携をとって早期に防止し対応することが大切です。
スクールソーシャルワーカーの配置・活用状況は自治体ごとに差があるため、学校や地域における格差をなくし、児童・生徒に必要な支援を届けることが期待されます。
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参考
- 文部科学省|スクールソーシャルワーカー活用事業に関するQ&A
- 文部科学省|児童生徒の教育相談の充実について