この記事をまとめると
- 失業手当の支給額は離職前の給与の50〜80%
- 受給するまでの期間は通常約2ヶ月後、特別な事情のある場合は1ヶ月後
- 受給条件は(1)ハローワークで転職活動をすること(2)雇用保険に一定期間加入していること
目次
1.失業手当(失業保険)とは?
失業手当(失業保険)は、失業中の生活を支えるための手当です。再就職の活動に専念できるよう、経済的な支援を目的としています。
正式には雇用保険の「基本手当」に該当しますが、一般的には失業手当や失業保険と呼ばれます。
tips|失業手当と再就職手当の違い
失業手当と似た手当として再就職手当があります。失業手当は再就職までの期間、失業者の生活を支えるために支給される手当ですが、再就職手当は就職したとき支給される手当となります。
再就職手当は早期就職を促すために設けられた制度で、失業手当の給付日数が3分の1以上残っていれば受給できます。再就職までの期間が短いほど多く受け取れる点が特徴です。
2.失業手当を受け取るための条件は?
失業手当は誰でも受け取れるわけではなく、次の2つの条件の両方を満たす必要があります。
条件1|転職活動に取り組んでいること
失業手当を受け取ることができるのは、仕事に就く意志と能力がある人です。具体的にはハローワークで求職の申し込みをしたうえで、求人に応募したり面接を受けたりすることが必要です。そのため、次のような人は失業手当の給付対象となりません。
仕事に就く意志と能力があると認められない人
- けがや病気の治療のため、すぐには仕事に就けない人
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには仕事に就けない人
- 定年などで退職し、しばらく休養するつもりでいる人
- 結婚を機に退職し、しばらく家事に専念するつもりでいる人 など
条件2|一定以上の被保険者期間があること
失業手当を受け取るには、雇用保険の被保険者期間が一定以上あることが求められます。必要な被保険者期間は、退職の理由や状況によって異なります。
自己都合で離職した場合
自己都合によって離職した人が失業手当を受け取るには、離職日以前の2年間において、被保険者期間が通算12ヶ月以上あることが条件となります。
自己都合による離職の例
- キャリアアップ目的の転職
- パワハラやセクハラに該当しない職場の人間関係への不満
- 独立・起業 など
やむを得ない理由で離職した場合(特定理由離職者)
やむを得ない理由で離職した人や、契約社員などで更新を希望しても雇用主から合意が得られなかった人は「特定理由離職者」に該当します。この場合、離職日以前の1年間において、被保険者期間が通算6ヶ月以上あることが条件となります。
やむを得ない理由による離職の例
- 体力の不足や、心身の障がい、疾病などの健康問題
- 妊娠、出産、育児
- 身内の介護
- 結婚に伴う引越し
- 転勤または出向に伴う別居の回避
- 勤務先の人員整理における希望退職 など
*参考:ハローワーク|特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要
会社都合で離職した場合(特定受給資格者)
勤め先の倒産や解雇など、会社都合で離職した人は「特定受給資格者」に該当します。この場合、離職日以前の1年間において、被保険者期間が通算6ヶ月以上となります。
会社都合による離職の例
- 倒産や解雇
- 事業所の廃止・縮小
- 事業所の休業が3ヶ月以上続いた
- 事業所の移転で通勤が難しくなった
- いやがらせやハラスメントを受けた
- 妊娠や出産を理由に不当な扱いを受けた
- 契約更新の確約があったが更新されなかった
- 当初提示された労働条件と実際の労働条件が大きく異なった
- 賃金がもともと支払われていた金額の85%未満に減った
- 離職前6ヶ月以内に長時間におよぶ時間外労働があった(3ヶ月連続45時間以上など)
- 賃金の3分の1を超える金額が期日までに振り込まれなかった など
*参考:ハローワーク|特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要
被保険期間の確認方法
保険者期間は、離職日を1日目としてさかのぼって計算します。

離職日が12月13日の場合、11月14日までを1ヶ月、10月14日までを2ヶ月として扱います。ただし、月の労働日数が11日未満かつ80時間未満の場合、その月は被保険者期間の対象外となります。
3.失業手当はいくらもらえる?
一般的に失業手当は、直近6ヶ月間に支払われた月収の50〜80%が支給されます。具体的には、過去6ヶ月の給料を180日で割った賃金日額と、離職時の年齢や雇用保険の被保険者期間に応じて、支給総額が決まります。詳しい計算方法について確認してみましょう。
STEP1|賃金日額を計算する
まず、次の計算式で賃金日額を求めます。
賃金日額 = 離職前6ヶ月間に支払われた給与*の合計額 ÷ 180日
*給与には通勤手当や役職手当などの各種手当は含まれるが、賞与(ボーナス)は含まれない
ただし、賃金日額には上限と下限があります。
賃金日額の上限と下限(2024年8月以降)
離職時の年齢 |
上限額 |
下限額 |
---|---|---|
29歳以下 |
14,130円 |
2,869円 |
30〜44歳 |
15,690円 |
|
45〜59歳 |
17,270円 |
|
60〜64歳 |
16,490円 |
STEP2|基本手当日額を計算する
次に、STEP1で求めた賃金日額に所定の給付率を掛けて基本手当日額を求めます。
基本手当日額 = 賃金日額 × 50〜80%
基本手当日額の給付率(2024年8月以降)
離職時の年齢 |
賃金日額 |
給付率 |
---|---|---|
60歳未満・65歳以上 |
5,199円以下 |
80% |
5,200~12,790円 |
80%~50% |
|
12,791円以上 |
50% |
|
60 〜 64歳 |
5,199円以下 |
80% |
5,200~11,490円 |
80%~45% |
|
11,491円以上 |
45% |
なお、基本手当日額にも上限と下限がありますのでご注意ください。
基本手当日額の上限と下限(2024年8月以降)
離職時の年齢 |
上限額 |
下限額 |
---|---|---|
30歳未満・65歳以上 |
7,065円 |
2,295円 |
30 〜 44歳 |
7,845円 |
|
45 〜 59歳 |
8,635円 |
|
60 〜 64歳 |
7,420円 |
STEP3|給付期間を確認する
給付日数は仕事を辞めた理由が自己都合か会社都合かによって異なります。なお、やむを得ない理由で離職した場合(特定理由離職者)も、自己都合で離職した場合と同じ期間の給付日数となります。
自己都合・やむを得ない理由で離職した場合の給付日数
雇用保険の被保険者だった期間 |
||
---|---|---|
10年未満 |
10年以上 |
20年以上 |
90日 |
120日 |
150日 |
自己都合で仕事を辞めた場合、給付日数は90〜150日となります。給付日数が最長の150日となるのは雇用保険の加入期間が20年以上ある人なので、多くの場合、給付日数は90日、長くて120日となります。
会社都合で離職した場合(特定受給資格者)の給付日数
離職時 |
雇用保険の被保険者だった期間 |
||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 |
1年以上 |
5年以上 |
10年以上 |
20年以上 |
|
〜 30歳 |
90日 |
90日 |
120日 |
180日 |
─ |
30 〜 34歳 |
90日 |
120日 |
180日 |
210日 |
240日 |
35 〜 44歳 |
90日 |
150日 |
180日 |
240日 |
270日 |
45 〜 59歳 |
90日 |
180日 |
240日 |
270日 |
330日 |
60 〜 64歳 |
90日 |
150日 |
180日 |
210日 |
240日 |
会社都合で仕事を辞めた場合、給付日数は90〜330日となります。上の表を見ると、子育てなどで出費の多い30〜50代が手厚く保障されていることがわかります。一方、20代の場合、給付日数は90日、長くても120日となるケースがほとんどです。
このように失業手当を受け取れる期間は多くの場合3〜4ヶ月程度ですので、転職活動は計画的におこなう必要があります。
STEP4|支給総額を計算する
最後に、STEP2とSTEP3で求めた基本手当日額に給付日数を掛けると、失業手当の支給総額がわかります。
支給総額 = 基本手当日額 × 給付日数
支給総額の計算シミュレーション例
条件
- 年齢:25歳
- 雇用保険の被保険者期間:3年
- 退職前6ヶ月月間の賃金:190万9,800円
(1)賃金日額の計算
賃金日額は、退職前6ヶ月間の賃金合計を180日で割った金額です。
賃金日額 =190万9,800円 ÷ 180日 = 1万610円
(2)基本手当日額の計算
基本手当日額は賃金日額に給付率を掛けた金額です。賃金日額が1万610円の場合、給付率は58.61%*となるので、次のように計算します。
基本手当日額 = 1万610円 × 58.61% = 6,219円
*離職時の年齢が25歳で賃金日額が1万610円の場合
(3)基本手当総額の計算
基本手当総額は基本手当日額に給付日数を掛けた金額です。離職時の年齢が25歳、雇用保険の被保険者期間が3年間の場合、失業保険の給付日数は90日になるため以下の計算となります。
基本手当総額 = 6,219円 × 90日 = 55万9,710円
4.失業手当はいつからもらえる?
失業手当は申請してすぐに受け取れるわけではありません。特別な事情のある人で約1ヶ月、通常は約2ヶ月かかります。それでは、失業手当を申請してから受け取るまでの流れについて詳しく確認してみましょう。
失業手当を受け取る流れ

退職後、10日〜2週間程度で以前の勤務先から離職票が届きますので、まずはそれをハローワークに持参して求職の申し込みをおこないます。このときハローワークの職員と面談をおこない、受給資格が決定します。
7日間の待機期間を経たあとに雇用保険受給説明会に出席し、雇用保険受給資格者証を受け取ります。初回の失業認定日は受給資格決定から約4週間後となりますので、指定された日に必ずハローワークに行って失業認定を受けてください。
ここまでは全員共通ですが、そのあとは仕事を辞めた理由によって初回の失業手当を受け取るまでの流れが異なります。
自己都合による離職の場合
7日間の待機期間のあと、さらに2ヶ月間の給付制限期間があります。この期間が明けた2回目の失業認定のあとに初めて失業手当が振り込まれます。初回の失業手当は、給付制限期間が明けてから2回目の認定日前日までの金額となりますので、15日分前後になります。これ以降は会社都合で辞めた場合と同じ動きとなります。
なお、2025年4月1日以降、給付制限期間が1ヶ月に短縮されます。さらに、給付制限期間中に自ら教育訓練などを受けた場合は、給付制限は適用されず基本手当が受給できるようになります。
会社都合・自己都合でも正当な理由による離職の場合
初回の失業認定の1週間後に失業手当が振り込まれます。7日間の待機期間がありますので、初回の失業手当は20日分前後になります。これ以降も4週間に一度ハローワークで失業認定を受けることで、最大28日分の失業手当を受け取れます。
用語解説|失業認定とは?
失業認定とは、失業手当を受け取る条件の一つである「仕事に就く意志と能力がある」ことを認めてもらうことを指します。具体的には4週間に一度の失業認定日に雇用保険受給資格者証を持参してハローワークに行き、転職活動やアルバイトの状況について申告します。このときに虚偽の申告をすると不正受給とみなされてしまいますので、必ず正直に申告しましょう。
失業手当の申請に必要な書類
失業手当を申請するには次の書類が必要です。以前の勤務先から離職票が届くまでに10日〜2週間程度かかります。届いてから慌てることのないよう、その間にほかの書類を準備しておきましょう。
退職から10日〜2週間後に前の勤務先から届く
・個人番号を確認できる書類
マイナンバーカード、通知カード、個人番号記載の住民票のいずれか
・身元を確認できる書類
運転免許証、マイナンバーカードなど
・本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
ネット銀行や外資系銀行は振込先として指定できない場合があるため注意
・証明写真(2枚)
おおむね半年以内に撮影したもの、正面上半身、タテ3.0cm×ヨコ2.4cm
*参考:ハローワーク|雇用保険の具体的な手続き
5.失業手当に関するよくある疑問
Q.失業手当受給中にアルバイトをしてもいい?
A.失業手当を受給中でもアルバイトはできますが、次の4つの点に注意しましょう。
- 待機期間中の7日間はアルバイトをしない
失業手当の申請をしたあとの待機期間中にアルバイトをすると、その分だけ待機期間が延長されます。アルバイトをするのは待機期間を終え、初回の失業認定を受けたあとにしましょう。 - 1日の勤務時間を4時間以上にする
1日の勤務時間が4時間未満だと「内職または手伝い」と見なされ、収入額によっては失業手当が減らされてしまいます。アルバイトをするなら1日の勤務時間が4時間を超えるものを選びましょう。ただし、1日4時間以上働いた日は支給対象になりません。 - 1週間の勤務時間を20時間未満にする
通常、1週間に20時間以上働くと雇用保険の加入対象となります。つまり「就職した」と見なされ、失業手当を受け取れなくなる可能性があります。シフトを決めるときには1週間の勤務時間が20時間を超えないよう調整してもらいましょう。 - 失業認定日に必ず申告する
4週間に一度の失業認定日に虚偽の申告をすると「不正受給」と見なされ、受け取った失業手当の3倍の金額を返さなくてはなりません。働いた日数や収入は正確に申告しましょう。
失業手当は求職者の人が安心して転職活動に集中できるように支給されるものです。アルバイトが本分になってしまっては本末転倒ですので、メリハリをつけて活動しましょう。
Q.失業手当受給中も健康保険や年金の支払いは必要?
A.失業手当を受給している期間も、健康保険や年金の保険料が発生します。
健康保険料は、退職した会社で加入していた健康保険に継続して加入して保険料を納める方法と、国民健康保険に加入して保険料を納める方法の2種類があります。
退職した会社で加入していた健康保険に継続して加入する場合は、離職日から20日以内に健康保険組合または全国健康保険協会支部にて申請手続きをおこないましょう。ただし、会社負担がなくなる分、保険料の自己負担額が高くなります。
国民健康保険制度を利用する場合は、会社の健康保険を脱退してから14日以内に役所の保険業務担当窓口にて加入手続きをおこないましょう。国民健康保険制度では、やむを得ない理由や会社都合による退職の場合、保険料が減免される場合があります。保険料の減免は地域によって条件が異なりますので、利用する際は自治体のホームページまたは役所にて確認してください。
年金は、国民年金の第1号被保険者として保険料を支払う必要があります。ただし、所得が一定以下の場合、保険料の納付が免除される制度が利用できます。免除された場合、老後に受け取る基礎年金額は減額減りますが、10年以内に追納すれば減額されません。
Q.失業手当受給中に扶養に入れる?
A.配偶者がいる人であれば「扶養に入れてもらう」という選択肢がありますが、それには年収130万円未満である必要があります。健康保険や年金の扶養は確定金額ではなく“見込み金額”で判断されるため、基本手当日額が一定額以上だと扶養に入れません。厚生年金の場合は3,612円と定められていますが(参考:日本年金機構)、健康保険の場合は加入先によって誤差(3,610〜3,612円)がありますので、必ず確認してください。
なお、失業手当の給付制限期間中(2ヶ月間)については収入がないため扶養に入ることができます。
扶養について詳しくはこちらの記事で解説しています。
>扶養控除とは? 配偶者控除や「103万円の壁」などを解説
Q.失業手当は確定申告が必要?
A.失業手当の給付金はすべて非課税ですので、確定申告の必要はありません。
ただし、本業(勤務先の業務)以外に、副業や不動産所得などによって年間20万円以上の所得(利益)があった場合は、確定申告の必要があります。
年度途中で退職して、年末調整を受けていない人の場合、確定申告をすることで、納めすぎた税金が還付される場合があります。
>【2025年変更点あり】確定申告はいつからいつまで?初めてでもわかるやり方、書類、期間をわかりやすく解説
6.失業時には公的支援制度の活用を
再就職先の目処が立っていないまま仕事を辞めたときには、なるべく速やかにハローワークで失業手当の申請をしましょう。
失業手当は申請から一定期間をおかないと受け取ることができませんので、申請が遅れるとその分支給も遅れてしまいます。失業手当を受け取ることができるのは仕事を辞めてから原則1年以内ですので、申請が遅れたがために「もらえるはずのお金がもらえなかった……」といったことのないようにしましょう。
また、再就職先が決まったときに給付日数が3分の1以上残っていれば、再就職手当も受け取れます。早く就職すればするほど再就職手当の金額も高くなるので、転職活動のモチベーションも上がりますね。
さらに、ハローワークでは再就職に向けてさまざまな職業訓練もおこなっています。職業訓練は原則無料で受講することができ、介護職員初任者研修や実務者研修といった介護関連の資格を取得することもできます(参考:都立職業能力開発センター)。
失業中は不安も多いですが、自分に合った仕事、安心して働ける職場を見つけるためにこのような公的支援制度も積極的に活用しましょう!
参考
- ハローワークインターネットサービス|雇用保険手続きのご案内
- ハローワークインターネットサービス|基本手当について