目次
1.ソーシャルワーカーとは
ソーシャルワーカー(Social Worker)とは、社会生活で何らかの困難を抱える人を支援する、福祉分野の専門職の総称です。病気や障がい、虐待、貧困、引きこもりといったさまざまな生きづらさ・生活しづらさを抱える人たちの話を聞いてニーズを汲み取り、必要な支援サービスにつなげたり関係機関と協力したりしながら、問題の解決・改善に向けて援助します。
厚生労働省のデータによると、全国のソーシャルワーカーの就業者数はおよそ53万人(2020年時点)、平均年齢は45.2歳(2023年時点)となっています。
2.ソーシャルワーカーの種類と働く場所
ソーシャルワーカーは、働く場所や役割によってさまざまな名称で呼ばれます。高齢者施設では「生活相談員」「支援相談員」、医療機関では「医療ソーシャルワーカー」「精神科ソーシャルワーカー」、教育機関では「スクールソーシャルワーカー」、児童福祉分野では「こども家庭ソーシャルワーカー」「児童福祉司」などです。
多様なソーシャルワーカーの中から、代表的なものをいくつか紹介します。
生活相談員
特別養護老人ホームや有料老人ホーム、デイサービス、ショートステイといった高齢者施設で働くソーシャルワーカーのことを生活相談員と呼びます。利用者とその家族の相談に応じ、入退所の手続きや施設での暮らしの調整などをおこないます。
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医療ソーシャルワーカー(MSW)
主に医療機関において、患者やその家族を援助するのが医療ソーシャルワーカー(Medical Social Worker)です。入院中や退院後の生活の問題や不安に対して、関係各所との調整や必要な支援を紹介し、問題の解消につなげます。
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>医療ソーシャルワーカー(MSW)とは?
>【コロナ禍インタビュー】医療ソーシャルワーカー 39歳 男性の場合
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精神科ソーシャルワーカー(PSW)
精神病院や保健所、社会復帰施設などで精神障がい者に援助をおこなうのが精神科ソーシャルワーカー(Psychiatric Social Worker)です。社会復帰に向けた生活支援や就労・就学支援、家族への支援、権利擁護活動などをおこないます。
スクールソーシャルワーカー(SSW)
小・中・高校や特別支援学校などで児童・生徒が抱えるさまざまな問題に対応するのがスクールソーシャルワーカー(School Social Worker)です。不登校、いじめ、家庭内暴力といった問題に対し、本人への働きかけのほか、教員や保護者、教育機関などとも連携を取りながら改善を目指します。
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>スクールソーシャルワーカー(SSW)とは?
こども家庭ソーシャルワーカー
子どもや妊産婦、子育て世帯に関する問題に対応する新しい資格として、2022年に創設されたのがこども家庭ソーシャルワーカーです。児童相談所やこども家庭センター、児童福祉施設などで妊娠出産や育児、保護者の問題などに幅広く対応します。
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コミュニティソーシャルワーカー(CSW)
コミュニティソーシャルワーカー(Community Social Worker)は、都道府県や市区町村に設置されている社会福祉協議会や、高齢者支援の総合窓口である地域包括支援センターなどに所属し、地域福祉の推進や高齢者支援に関する業務をおこないます。支援を必要とする人を適切な福祉サービスにつなげたり、ニーズに基づく新たなサービスの開発、地域の関係機関のネットワークを構築したりするなど、地域福祉に関する幅広い役割を担います。
ケースワーカー(CW)
病気や障がい、家庭の問題などさまざまな困りごとを抱える人の相談に応じ、支援につなげる人をケースワーカー(Case Worker)、または現業員と呼びます。ケースワーカーは障がい者や低所得者向けの福祉事務所をはじめとした公的機関で公務員として勤務します。
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3.ソーシャルワーカーになるには

社会福祉士などの資格を求められることが多い
ソーシャルワーカーは働く場所や業務によって求められるスキルや資格が異なります。一般的には、国家資格である社会福祉士、精神保健福祉士を保有していると就職で有利になる、もしくは資格要件として設けている職場が多いようです。
社会福祉士とは?
社会福祉士及び介護福祉士法に基づく国家資格で、約31万人の有資格者がいます(2024年5月末時点)。高齢者福祉、障がい者福祉、児童福祉、母子・父子福祉、医療福祉などのあらゆる分野において生活課題を抱える人の相談に応じ、支援をおこなう専門家です。
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精神保健福祉士とは?
精神保健福祉士法に基づく国家資格で、約11万人の有資格者がいます(2024年5月末時点)。社会福祉士が生活課題を抱えるあらゆる人を対象とするのに対し、精神保健福祉士は精神障がいを持つ人を対象に、日常生活の支援や社会復帰の促進、家族支援をおこなう専門家です。精神保健福祉士と精神科ソーシャルワーカー(PSW)を同義とすることもあります。
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公務員の場合は社会福祉主事資格が必要
ケースワーカーをはじめ、都道府県や市区町村の福祉事業所で公務員ソーシャルワーカーとして働く場合は、公務員試験の合格と社会福祉主事の任用資格が必要となります。任用資格とは、公務員が特定の業務に就くときに必要となる資格のことです。
社会福祉主事任用資格は、福祉系大学や専門学校を卒業する、規定の講習会を受講する、社会福祉士や精神保健福祉士などの国家資格を取得するといった方法で得ることができます。
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>社会福祉主事とは?
4.ソーシャルワーカーの仕事内容
主な業務内容
ソーシャルワーカーの仕事内容は多岐にわたります。支援を必要とする人々の事情や家庭環境、地域などによって同じケースはひとつもなく、個々の事例に応じて最適な支援方法を模索する必要があります。
また、目の前の支援対象者の対応に限らず、地域全体の福祉制度や社会システムに働きかけることも重要な仕事のひとつです。支援を必要とする人に必要な情報を届けるにはどうあるべきか、ソーシャルワーカーに助けを求める前の予防策を考え、実践することが求められます。
ソーシャルワーカーの主な業務内容
- 支援対象者やその家族との面談、家庭訪問
- 相談内容の記録、事務作業
- 援助計画の作成・評価・見直し
- 支援相談者と必要なサービス・機関のあっせん
- 支援対象者の公的手続きの代行、権利擁護
- 情報提供、啓蒙活動
- 関係機関(行政、非営利団体、民間企業等)との連絡・調整、関係の構築 など

一日の流れ

5.ソーシャルワーカーの給料
厚生労働省のデータによると、ソーシャルワーカーの年収は全国平均で425.8万円でした(参照:2023年賃金構造基本統計調査)。
また、2022年度のハローワーク求人の全国平均の月収は22.9万円でした。
6.ソーシャルワーカーの将来性
近年の高齢化や核家族化、経済の低迷などの社会の変化により、人々の暮らしにはさまざまな困難が生じています。高齢化による老老介護や8050問題、家庭内暴力や児童虐待、いじめや非行、失業による生活困窮者の増加やひきこもり、外国人労働者の問題など多岐にわたり、その内容も複雑化しています。これらに対応する専門職としてソーシャルワーカーの活躍が期待され、今後も高い需要が続くといえるでしょう。
ニーズの高まりに伴い、ソーシャルワーカーが活躍する場所も増えています。これまでに紹介した職場以外にも、司法領域や民間企業、独立して個人事務所を開いているソーシャルワーカーもいます。
支援対象者が抱える問題は容易に解決できないことも多く、その問題の深刻さに圧倒されてしまうこともあるかもしれません。しかし、それでも支援対象者に向き合い、葛藤し、より良い援助のあり方を探って関わり続けることが求められます。その先にあるのが、ソーシャルワーカーのやりがいといえるのかもしれません。

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参考
- 木下大生、藤田孝典『知りたい!ソーシャルワーカーの仕事』岩波書店(2015)
- 空閑浩人『ソーシャルワーク論』ミネルヴァ書房(2016)
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