目次
- 1. 小規模多機能型居宅介護とは?
- 対象者・利用条件
- 小規模多機能型居宅介護で提供するサービス
- 施設数・利用者数
- 2. 小規模多機能型居宅介護で働く
- 小規模多機能型居宅介護で働く職種
- 小規模多機能型居宅介護の介護職の仕事内容
- 働くメリット
- 働くデメリット
- 小規模多機能型居宅介護の給料
- 3. ほかの施設との違い
- 訪問介護(ホームヘルプ)との違い
- デイサービスとの違い
- ショートステイとの違い
- 看護小規模多機能型居宅介護(かんたき)との違い
- 4. 小規模多機能型居宅介護を利用する
- 小規模多機能型居宅介護を利用する流れ
- 小規模多機能型居宅介護を利用するメリット
- 小規模多機能型居宅介護を利用するデメリット
- 小規模多機能型居宅介護の料金
- 5. 利用者の生活を包括的に支える小規模多機能型居宅介護
1. 小規模多機能型居宅介護とは?
小規模多機能型居宅介護とは、「訪問」「通い」「宿泊」の介護を組み合わせ、ひとつの事業所で提供する介護保険サービスです。2006年4月の介護保険制度改正で開始された地域密着型サービスのひとつで、「小多機(しょうたき)」とも呼ばれています。
利用者の居宅への訪問や、事業所への通所をとおして、入浴・排せつ・食事などの介護や、調理・洗濯などの家事のサポート、機能訓練などをおこないます。
対象者・利用条件
小規模多機能型居宅介護は、要支援1・2または要介護1〜5の認定を受けた人が利用できます。地域密着型サービスに分類されているため、原則として、利用者が住んでいる自治体の事業所を利用します。
また、小規模多機能型居宅介護には定員があり、利用者の登録は1事業所あたり29人までです。1日あたりの利用人数にも上限があり、「通い」はおおむね15人以下、「宿泊」はおおむね9人以下とされています。
なお、小規模多機能型居宅介護は比較的介護度の低い利用者が多く、2024年4月時点では利用者全体のうち、要介護1が26.8%、要介護2が24.2%を占めています。
小規模多機能型居宅介護で提供するサービス

小規模多機能型居宅介護では「訪問」「通い」「宿泊」の3領域でサービスを提供しています。それぞれ、「訪問」は訪問介護、「通い」はデイサービス、「宿泊」はショートステイに相当するサービスを受けられます。
サービス内容 |
|
---|---|
訪問 |
施設での食事・排泄・入浴の介助、リハビリ など |
通い |
自宅での掃除・調理の支援、食事・排泄・入浴の介助 など |
宿泊 |
施設での短期間の宿泊 |
なお、小規模多機能型居宅介護を利用しながら、ほかの事業所の訪問介護・通所介護・ショートステイを併用することはできません。
施設数・利用者数
2006年の開始以降、小規模多機能型居宅介護は全国に普及し、2023年の施設数は5,523ヶ所となりました。また、利用者数も増加しており、約14万8,600人が利用しています。
2. 小規模多機能型居宅介護で働く
小規模多機能型居宅介護で働く職種
小規模多機能型居宅介護には、さまざまな職種の配置が義務付けられています。
職種 |
条件・配置基準 |
|
---|---|---|
代表者 |
認知症の介護従事経験か、保健医療・福祉サービスの経営経験があり、認知症対応型サービス事業開設者研修を修了した人 |
|
管理者 |
3年以上認知症の介護従事経験があり、認知症対応型サービス事業管理者研修を修了した常勤・専従の人 |
|
日中・通い |
利用者3人につき1人以上(常勤換算) |
|
日中・訪問 |
1人以上(常勤換算) |
|
夜勤 |
時間帯を通じて1人以上(宿泊利用者がいない場合は不要) |
|
宿直 |
時間帯を通じて1人以上(随時の訪問サービスに支障がなければ、事業所内での宿直でなくて良い) |
|
従業者のうち1人以上 |
||
1人以上(小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修を修了した人) |
小規模多機能型居宅介護の介護職の仕事内容
小規模多機能型居宅介護では、利用者の多様なニーズに応えるため、仕事内容も幅広くなっています。3領域のサービスごとの主な仕事内容は以下のとおりです。
仕事内容 |
|
---|---|
訪問 |
身体介護、生活援助、安否確認、バイタルチェック、服薬介助、通院・外出介助 など |
通い |
身体介護、バイタルチェック、レクリエーション、リハビリ補助、送迎 など |
宿泊 |
身体介護、バイタルチェック、服薬介助、口腔ケア、夜間巡回、レクリエーション、リハビリ補助、送迎 など |
働くメリット
小規模多機能型居宅介護は定員が少ないため、利用者一人ひとりと接する時間が長くなります。さらに「訪問」「通い」「宿泊」のさまざまなサービスを提供する施設なので、働くうえでは以下のような点がメリットになるといえるでしょう。
- 利用者とじっくり向き合える
- 幅広いスキル・経験が身につく
- 提供サービスの制約が少ない
働くデメリット
小規模多機能型居宅介護は利用者に24時間対応する施設です。また、施設内だけでなく訪問の仕事もあります。そのため、勤務先の候補とする際は、以下のようなデメリットを意識すると良いでしょう。
- 幅広い業務を覚える必要がある
- 施設によっては夜勤がある
- 臨機応変な対応が必要なケースがある
小規模多機能型居宅介護の給料
ジョブメドレーに掲載されている求人(2025年4月時点)をもとに、小規模多機能型居宅介護の給料を算出しました。なお、各種手当や残業代などは含みません。実際の賃金はこれより高くなる可能性があります。
平均時給 |
平均月収 |
平均年収 |
|
---|---|---|---|
介護職/ヘルパー |
1,197円 |
22万7,696円 |
318万7,744円 |
看護師/准看護師 |
1,535円 |
28万513円 |
392万7,182円 |
介護支援専門員 |
1,452円 |
26万6,827円 |
373万5,578円 |
*年収は「月収の総平均 × 14ヶ月(ボーナスは月給の2ヶ月分)」で試算
*求人数50以上の職種ごと賃金データ
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3. ほかの施設との違い
小規模多機能型居宅介護が提供するさまざまな支援と、類似した介護保険サービスがいくつかあります。主な違いはサービス内容や利用するタイミングです。
訪問介護(ホームヘルプ)との違い
小規模多機能型居宅介護と訪問介護は、サービス提供の柔軟さが異なります。小規模多機能型居宅介護は利用者の希望に合わせ、訪問時間やサービス内容を柔軟に決められます。
提供サービス |
|
---|---|
小規模多機能型居宅介護 |
利用者の状況に応じ訪問時間、サービス内容を決められる。短時間や夜間も対応可能 |
訪問介護 |
決められた時間に訪問する。サービス内容が決められており、計画を立てやすい |
デイサービスとの違い
小規模多機能型居宅介護とデイサービスは、利用の自由度が異なります。小規模多機能型居宅介護は定員の範囲内であれば、必要なときだけ滞在することができます。
提供サービス |
|
---|---|
小規模多機能型居宅介護 |
必要なときに、必要なサービスを受けられる。レクリエーションなどは少ない |
デイサービス |
決められた日に通所。規定されたサービスを受ける。レクリエーションなどが充実している |
ショートステイとの違い
小規模多機能型居宅介護とショートステイは、宿泊の自由度が違います。小規模多機能型居宅介護は宿泊日を調整しやすく、「通い」のあとにそのまま「宿泊」することも可能です。
提供サービス |
|
---|---|
小規模多機能型居宅介護 |
柔軟に宿泊日を調整できる |
ショートステイ |
事前の予約が必須 |
看護小規模多機能型居宅介護(かんたき)との違い
小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護は、「訪問看護」のサービスを提供できるかが異なります。
看護小規模多機能型居宅介護は、小規模多機能型居宅介護に「訪問看護」の機能を加え、介護と看護を一体的に提供する介護保険サービスです。そのため、要介護1以上を対象としており、介護度の重い人や終末期への医療的ケアが可能です。
小規模多機能型居宅介護 |
看護小規模多機能型居宅介護 |
|
---|---|---|
対象者 |
|
要介護1〜5 |
提供サービス |
訪問・通い・宿泊 |
訪問・通い・宿泊 + 訪問看護 |
4. 小規模多機能型居宅介護を利用する
小規模多機能型居宅介護を利用する流れ

担当ケアマネジャーや地域包括支援センターが事業所を紹介します。利用者と事業所が面談・契約したうえで、サービス提供が開始されます。なお、利用者が実際に小規模多機能型居宅介護を利用する場合、利用開始以降は担当ケアマネジャーが、小規模多機能型居宅介護の担当者に変わります。
小規模多機能型居宅介護を利用するメリット
- ひとつの事業所で訪問・通い・宿泊のサービスを受けられる
- 月額定額で費用がわかりやすい
- 顔馴染みのスタッフから継続的に支援を受けられる
小規模多機能型居宅介護では、利用者の状態や家庭の事情に応じて柔軟にサービスを組み合わせることができます。複数の事業所と契約する必要がないため、調整の手間や心理的な負担が軽減されるのも特長です。
小規模多機能型居宅介護を利用するデメリット
- 外部サービスの利用に制限がある
- 利用頻度によっては割高になる
- 規模どおりに利用できない可能性がある
小規模多機能型居宅介護を利用する場合、ほかの事業者の訪問介護・通所介護・ショートステイは利用できません。また「訪問」だけなど、サービスの一部をほかの小規模多機能型居宅介護の事業所に依頼することも禁じられています。また、利用人数に1日あたりの上限があるため、希望する日に利用できない可能性があります。
小規模多機能型居宅介護の料金
料金
小規模多機能型居宅介護は月額定額制で、要介護度に応じて利用者の負担が決まっています。また月額の料金に加え、食費・おむつ代・宿泊費などの日常生活費なども必要です。利用者負担が1割の場合で、1ヶ月あたりの料金は以下のようになります。
要介護度 |
同一建物に居住する者以外の者に対しておこなう場合 |
同一建物に居住する者に対して行う場合 |
---|---|---|
要支援1 |
3,450円 |
3,109円 |
要支援2 |
6,972円 |
6,281円 |
要介護1 |
1万458円 |
9,423円 |
要介護2 |
1万5,370円 |
1万3,849円 |
要介護3 |
2万2,359円 |
2万144円 |
要介護4 |
2万4,677円 |
2万2,233円 |
要介護5 |
2万7,209円 |
2万4,516円 |
料金シミュレーション
月額の負担に日常生活費を加えた金額が、小規模多機能型居宅介護にかかる費用になります。ここでは、要介護3の人が以下のスケジュールで利用したとして計算してみましょう。
1週間のおおよその利用状況
- 月曜日:通い
- 火曜日:訪問
- 水曜日:通い
- 木曜日:泊まり(宿泊日)
- 金曜日:泊まり(帰宅)
- 土曜日:通い
- 日曜日:訪問
このスケジュールで1ヶ月(30日)利用したとすると、「通い」は13回、「訪問」は9回、「宿泊」が4回になります。「通い」での食事代を1回600円、宿泊代は1泊5,000円として計算すると、1ヶ月の合計料金は以下の金額となります。
金額 |
|
---|---|
月額負担 |
2万2,359円 |
食事代 |
600円 × 13回 = 7,800円 |
宿泊代 |
5,000円 × 4回 = 2万円 |
合計 |
5万159円 |
5. 利用者の生活を包括的に支える小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護は、さまざまなサービスで利用者の暮らしを支えています。地域に密着した小規模な施設なので、利用者一人ひとりとじっくり向き合えます。「訪問」「通い」「宿泊」での介護を通じて、オールマイティーなスキルを身につけられるため、働く人にとっても魅力的な職場です。
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参考
- 厚生労働省|小規模多機能型居宅介護(2021年)
- 厚生労働省|小規模多機能型居宅介護(2023年)