目次
1.就労継続支援B型とは
障がいのある利用者と雇用契約を結ばず就労をサポートする
就労継続支援B型とは、障害者総合支援法で定められた国の就労支援サービスの一つです。病気や障がいなどがあり一般就労が難しい人を対象に、就労機会の提供と職業訓練をおこないます。
事業者と利用者との間で雇用契約を結ばないため、「非雇用型」または「福祉的就労」とも呼ばれています。
tips|一般就労と福祉的就労とは?
一般企業などで雇用契約を結んで働くことを一般就労といいます。働き手は「労働者」または「被雇用者」と呼ばれ、会社が規定する勤務時間や業務をこなすことで給料をもらいます。
一方、福祉的就労とは障がいや病気などにより一般就労が難しい人が、障害福祉サービスの一つである就労支援サービスを受けながら働くことです。就労継続支援A型・B型で働く人が該当します。就労に際して必要なサポートや作業量などが考慮されるため、体調や希望に応じた働き方ができます。
就労継続支援A型との違い
類似の就労支援サービスに「就労継続支援A型」があります。主な違いは、雇用契約の有無、対象者、報酬形態にあります。
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
---|---|---|
雇用契約 | あり 利用者と事業所が雇用契約を結ぶ | なし 利用者と事業所が雇用契約を結ばない |
対象者 | ・就労支援を利用したが雇用に結びつかなかった人 ・特別支援学校を卒業後、就労に至らなかった人 ・就労経験があるが現在は就労していない人 ※65歳以上の人も要件を満たせば利用可能 | ・就労経験があり年齢や体力などの理由から、一般企業などに雇用されることが難しい人 ・50歳に達している人、または障害基礎年金1級受給者 ・上記2つに該当しない人で、就労移行支援事業者等によるアセスメントで就労面に関する課題が把握されている人 ※年齢制限なし |
報酬形態 | 給料(最低賃金以上) | 工賃(最低賃金に満たない場合もある) |
利用期間 | 制限なし | 制限なし |
利用者数 | 約7.2万人* | 約26.9万人* |
就労移行支援、就労定着支援との違い
就労継続支援A型・B型が福祉的就労として期間に定めなく働くのに対し、就労移行支援と就労定着支援は、一般就労・定着を目標として利用期間が定められているサービスです。
就労移行支援とは
就労移行支援は一般就労を希望する人を対象としており、給料や雇用関係はありません。対象年齢は原則18歳〜64歳までですが、65歳に達する前の5年間に障害福祉サービスの支給決定を受けており、65歳になる前日までに就労移行支援の支給決定がある人は例外として利用できます
就労に必要な知識や技術向上のための訓練、職場体験などの機会提供、求職活動の支援や相談をおこないます。サービス提供期間は2年です。
就労移行支援の詳しい内容はこちらをチェック
>就労移行支援とは? 職員の仕事内容、給料、就労継続支援・就労定着支援との違いを解説!
就労定着支援とは
就労定着支援は、就労継続支援や就労移行支援、自立訓練サービスなどを経験して一般就労した人が対象です(障がい者雇用枠での就労を含む)。
支援内容としては、就労後の悩みやトラブルへの対応、職場へのフォローなどをおこないます。就労移行支援後6ヶ月経ち、さらに半年後からの利用が可能で、1年ごとの更新があります。利用期間は最長で3年です。
>就労定着支援の詳しい内容はこちらをチェック
障害者の就労に関する新たなサービス、就労定着支援とは?
tips|「就労選択支援」も新設
2025年をめどに新たに就労選択支援が創設される予定です。これまでは就労支援サービスを利用する段階でいずれかを選択する必要があったため、必ずしも適切なサービスにつなげられず定着しないという課題がありました。就労選択支援では、本人の希望をもとに就労支援サービスが選べるため、ミスマッチの防止が期待されています。
>より詳しい違いはこちらの記事で解説しています
【2024年新設】就労選択支援とは?実施主体やサービス内容を解説
2.対象はどんな人?
就労継続支援B型の対象者は、身体障害・知的障害・精神障害(発達障害も含む)などの障がいや病気があり、主治医から事業所の利用が認められた人です。障害者手帳は必須ではありませんが、持っていない場合は「障害福祉サービス受給者証」が必要です。
就労継続支援B型の対象者
- 就労経験があり、年齢や体力などの理由から一般企業に雇用されることが難しい人
- 50歳に達している人、または障害基礎年金1級受給者
- 上記2つに該当しない人で、就労移行支援事業者などによるアセスメントで就労面に関する課題が把握されている人
3.作業内容と工賃
軽作業などが主な作業内容
就労継続支援B型では、利用者が生産活動をおこなうことで工賃が支払われます。作業内容は多岐にわたり、事業所ごとに異なります。
就労継続支援B型でおこなう主な作業内容
- 商品の袋詰めや値札付け
- 商品の梱包や発送
- 簡単なパソコン作業
- パンやお菓子などの製造・販売
- 清掃
- 衣類のクリーニング
- 農作業 など
工賃の全国平均月額は1万6,507円

厚生労働省によると、2021年時点の就労継続支援B型における平均工賃は時給233円、月給1万6,507円という結果でした。2020年はコロナ禍の影響により、生産活動や受注量が減ったことなどから一時的に下がっていますが、過去10年では2,317円上昇しています。
工賃は、生産活動の収益から経費を差し引いた金額です。法律で1ヶ月あたりの工賃は3,000円を下回ってはいけないことが定められているほか、事業所側には工賃の水準を上げるよう努力義務が課されています。
4.利用の流れと時間、料金
障害福祉窓口での申請が必要
就労継続支援B型の利用を希望する場合、以下の流れで申請・利用開始となります。

利用するためにはまず、市区町村の障害福祉窓口で利用申請をおこない、聞き取り調査を通して就労するうえで必要な配慮や病状などを職員に伝えます。
利用には「サービス等利用計画(案)」が必要となり、特定相談支援事業所に作成してもらう方法と、利用者本人や家族が「セルフプラン」を作成する方法があります。
市区町村による認定がおりれば「障害福祉サービス受給者証」が発行されますので、就労を希望する事業所と利用契約を交わし通所開始となります。
事業所は、インターネットなどで探すほか、地域の障害福祉窓口に紹介してもらう方法もあります。すでに障害福祉サービス受給者証を持っている場合は、希望する事業所と契約を結ぶことで通所が始められます。
利用時間と利用料
利用時間は事業所の営業時間内であれば、利用者の希望や体調に応じて決められます。利用時間は午前2時間だけの人もいれば、お昼休憩を挟み6時間程度働く人などさまざまです。
また、障害福祉サービスの利用にかかる料金は、サービスの利用回数にかかわらず所得に応じて無料または一定の費用の上限が設けられています。
世帯の収入状況 |
負担上限月額 |
|
---|---|---|
生活保護受給世帯 市町村民税非課税世帯(世帯年収約300万円以下) 3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合 |
0円 |
|
市町村民税課税世帯(世帯年収約670万円以下) |
9,300円 |
|
上記以外 (20歳以上の入所施設利用者、またはグループホームを利用する市町村民税課税世帯を含む) |
3万7,200円 |
5.働く職員の職種と仕事内容
就労継続支援B型で働く職員の人員基準は以下のように定められています。
職種 | 配置基準 |
---|---|
管理者 | 1人(サービス管理責任者との兼務可) |
職業指導員および生活支援員* | 利用者の数を10人で割った数以上(10人に対して1人以上) |
サービス管理責任者 | 利用者数が60人以下の場合1人以上(1人は常勤) 利用者数が61人以上の場合1人の常勤に加え、40人増すごとに1人必要 |
管理者
施設の管理をおこなう人で、サービス管理責任者が兼務することも可能です。主な業務内容は、施設の運営や職員の勤怠管理、利用者の意向の把握、生産計画の立案などです。
職業指導員
利用者の指導のほか、一般企業や就労移行支援への橋渡しをおこなう職業指導員。利用者の多様な障がい特性やスキルに応じて知識・技術面での指導をおこないます。就労継続支援B型事業所では、介助が必要となる利用者がA型よりも比較的多いため身体介助をおこなうこともあります。
生活支援員
利用者の入浴や排せつ、食事の介助などの生活サポートを担う生活支援員。B型事業所では、健康管理の指導や生活上の相談、サービス管理責任者の補助的な役割を担っています。
サービス管理責任者
利用者がサービスを利用するために必要な個別支援計画の作成や従業員の指導、関係機関との連携などをおこなうサービス管理責任者。利用者のアセスメントを通して活動プログラムや支援を提供するほか、実施状況の把握から計画の変更、相談支援事業者との連携など幅広い業務をおこないます。
6.利用者の特性や提供する作業内容はさまざま
障がいや病気などの理由から一般就労が難しい人の職業訓練や就労をサポートする就労継続支援B型。利用者は、勤務日数や時間などの希望や、体調に応じた働き方が可能です。
就労継続支援B型で働く職員は、利用者の特性や作業内容などによって困難を感じることもあるでしょう。しかし、指導や支援を通して利用者のできることが増えたり、就労移行支援などほかのサービスにステップアップできたりと利用者の成長につなげられることで、やりがいを感じられる仕事でもあります。
事業所ごとに作業内容や利用者の年齢層が異なるので、どのような支援がおこないたいのかイメージして職場を探してみるのがおすすめです。
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