重度訪問介護とは?資格や仕事内容、やりがい、訪問介護との違いについて解説します

重度訪問介護は、重い障がいのある人の在宅生活を支える障害福祉サービスです。重度訪問介護で働くために必要な資格や、仕事内容、サービス内容、対象者について解説します。

重度訪問介護とは?必要な資格や仕事内容、サービス、対象者について解説します

目次

1. 重度訪問介護とは?

重度訪問介護は、重い障がいのある人の自宅を訪問し、身体介護や家事援助などで暮らしを支える障害福祉サービスです。ホームヘルパーによる生活全般への手厚い支援により、常に介護を必要とする人が、在宅での生活を続けられるようにサポートします。

障害福祉サービスは障害者総合支援法に基づくもので、大きく分けて、日常の身体介護などを提供する「介護給付」と、就労支援などの「訓練等給付」があります。このうち、重度訪問介護は介護給付サービスのひとつです。

提供サービス

重度訪問介護では、入浴・排泄・食事などの身体介護だけでなく、調理・洗濯・掃除などの家事援助や、見守りなど、生活全般にわたるサポートを提供します。また、外出時の移動中の介護もサービスの対象です。

対象者

重度訪問介護は、重度の肢体不自由や知的障害・精神障害があり、常に介護を必要とする人のための障害福祉サービスです。そのため、対象になるのは障害支援区分4以上で、次の条件の1か2に該当する人です

  1. 次の条件の両方を満たす
    • 二肢以上に麻痺等がある
    • 障害支援区分の認定調査項目のうち歩行・移乗・排尿・排便のいずれも「支援が不要」以外と認定されている
  2. 障害支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上

施設数・利用者数

重度訪問介護を提供する事業所は、2023年10月時点で全国に2万2,910施設あります。また、2023年9月の利用人数は2万5,578人で、1人あたりの平均訪問回数は27.3回となっています。

ほかのサービスとの違い

居宅介護との違い

重度訪問介護と居宅介護は共に障害者総合支援法に基づくサービスですが、利用条件やサービスの提供時間などが異なります

 

重度訪問介護

居宅介護

利用条件

障害支援区分4以上

障害支援区分1以上

主なサービス内容

身体介護、家事援助、移動介護、見守り

身体介護、家事援助

利用可能時間

長時間対応可能

身体介助:1回当たり原則3時間以内

家事援助:1回当たり原則1時間半以内

提供間隔

とくになし

訪問・サービス提供の間隔を2時間以上空ける必要あり

訪問介護との違い

重度訪問介護と訪問介護は、根拠となる法律や対象が異なります。重度訪問介護が障害福祉サービスであるのに対し、訪問介護は介護保険法に基づく介護サービスで、主に高齢者を対象としています。

 

重度訪問介護

訪問介護

利用条件

障害支援区分4以上

要介護認定を受けている

対象年齢

主に18歳以上

主に65歳以上

主なサービス内容

身体介護、家事援助、移動介護、見守り

身体介護、生活援助、通院時の乗車・降車等介助

2. 重度訪問介護で働く

重度訪問介護に配置される職種

重度訪問介護にはサービス提供責任者や介護職の配置が義務付けられています。それぞれの職種には、以下のような資格を持っているか、研修を修了していれば勤務可能です。

職種

配置基準

主な必要資格

サービス提供責任者

常勤介護職のうち1人以上

  • 介護福祉士、看護師、准看護師
  • 実務者研修修了者、介護職員基礎研修修了者
  • 居宅介護従業者養成研修(訪問介護員養成研修)1級課程修了者
  • 居宅介護職員初任者研修(介護職員初任者研修)修了者であって、3年以上介護等の業務に従事した人

介護職

常勤換算2.5人以上

  • 介護福祉士、看護師、准看護師
  • 実務者研修修了者、介護職員基礎研修修了者
  • 居宅介護業者養成研修(訪問介護員養成研修)1級課程修了者
  • 居宅介護職員初任者研修(介護職員初任者研修)修了者
  • 障害者居宅介護従業者基礎研修(訪問介護員養成研修3級課程)修了者
  • 重度訪問介護従業者養成研修(基礎課程・追加課程・統合課程) 修了者

重度訪問介護は、介護職であっても無資格では仕事に就けませんが、無資格・未経験の場合は、受講に要件がなく、数日間で受講可能な「重度訪問介護従業者養成研修」を修了することで勤務可能になります。

重度訪問介護の仕事内容

重度訪問介護では身体介護や家事援助など幅広い仕事を担当します。それぞれの主な仕事内容は以下のとおりです。

 

仕事内容

身体介護

食事、着替え、入浴、排せつの介助 など

家事援助

調理、洗濯、掃除、生活必需品の買い出し など

移動介護

外出時の移動支援や移動中の介護

そのほか

見守り、生活に関する相談・助言

働くメリット・魅力

重度訪問介護は、利用者と長時間接する障害福祉サービスです。さらに、支援の内容も多岐にわたるため、以下のような点がメリットになるといえるでしょう。

  • 利用者とじっくり向き合える
  • 幅広い介護スキル・経験が身につく
  • 障がい者支援に関する知識・スキルが身につく
  • 時間やサービス内容の制約が少ない

働くデメリット・大変さ

重度訪問介護は利用者の生活全般を支えるサービスです。また、利用者の自宅だけでなく、通院などの外出時の介護も業務の一部になります。そのため、重度訪問介護での勤務を検討する際は、以下のようなデメリットを意識すると良いでしょう。

  • 幅広い業務を覚える必要がある
  • 屋外での支援を身につける必要がある
  • 臨機応変な対応が必要なケースがある

3. 重度訪問介護を利用する

重度訪問介護などの障害福祉サービスを受けるには、暮らしている市区町村の障害福祉窓口での手続きが必要です。障害支援区分の認定や、サービス等利用計画の作成を経て、事業所への申し込みが可能になります。

なお、重度訪問介護を提供する事業所は、障害福祉サービス等情報公表システムで探すことが可能です。

重度訪問介護の費用

重度訪問介護などの障害福祉サービスを受けるには、原則として費用の1割の自己負担が必要です。ただし、所得に応じて自己負担額には上限があり、最大3万7,200円に設定されています。

4. 重度訪問介護のよくある質問

Q. 1日何時間対応できる?

A.常に介護を必要とする人も対象としているため、最大24時間対応可能です。ただし、ニーズに応じてサービスを提供するため、利用者ごとに対応時間は異なります。

Q.「2時間ルール」は適用される?

A.重度訪問介護に、いわゆる「2時間ルール」は適用されません。このルールは、居宅介護のサービスの場合に、訪問から次の訪問まで2時間以上、空けなければならない規則です。重度訪問介護にはこのようなルールはありません。

Q. 外出できる?

A.重度訪問介護では、外出のサポートも可能です。サービスに移動介護を含んでいるため、外出時の移動支援や移動中の介護に対応できます。

Q. できないことは?

A.重度訪問介護は利用者の在宅での暮らしを支えるためのサービスです。そのため、原則的に利用者不在時の家事、家族のための家事、職場への通勤の支援、医療行為・リハビリなどは提供できません。ただし、利用者が暮らす市区町村によって、提供されるサービスが異なる場合があります。

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参考

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