
そもそも重度訪問介護とはどういうもの?
重度訪問介護は障害者総合支援法による事業で、ホームヘルパーが利用者の住まいを訪問し、生活全般における援助を行う介護サービスです。対象となるのは、肢体不自由のある方、知的障害のある方、精神障害のある方。これらの障害を持ち、かつ介護を必要とする状態であるなど、一定の条件を満たすことでサービスを利用できます。常に介護が必要とされる方が重度訪問介護サービスを受けることによって、自宅などの住みなれた環境で生活が続けられることを目指します。実際に受けられる介護サービスの内容は、主に次のものです。
- ・身体介護:入浴や排泄、食事、着替えの介助
- ・家事援助:調理や洗濯、買い物などの援助
- ・移動介護:外出時の移動支援と移動中の介護
- ・その他:利用者の見守り、相談への対応など
重度訪問介護の利用者数は年々増加しており、2016年の時点で1万人を超えています。
重度訪問介護の対象者となる一定の条件とは
重度訪問介護を利用できる方の条件についてもう少し詳しくみていきましょう。対象となる方は「重度の肢体不自由、または精神障害・知的障害により行動上著しい困難があり、常時介護を要する状態」でなければなりません。具体的には、次のうちどちらかに該当する必要があります。
- 1.二肢以上に麻痺などがあり、障害者支援区分の認定調査項目のうち「歩行」「移乗」「排尿」「排便」のすべてにおいて「支援が不要」以外で認定されている
- 2.障害支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目など(12項目)の合計点数が10点以上である
これらに該当するとして、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィーなどの難病、脳性麻痺、脊髄損傷、重度心身障害、強度行動障害などの方が多く利用しています。
重度訪問介護の事業所での仕事内容について
重度訪問介護で働くヘルパーの仕事内容についてみていきましょう。重度訪問介護は、利用者への訪問を1回8時間、3交代で行います。利用者によっては、家族がいる夜間は介護サービスを利用しないこともありますが、正職員であれば3交代のシフト制が一般的です。
具体的な仕事内容は、
- ・洗面や歯磨き
- ・着替えなどの介助
- ・食事の準備と片付け
- ・トイレまでの移動介助(または、おむつ交換)
- ・体位変換
- ・移動の付き添い
- ・必要なものの買い物
など、利用者にとって必要な身の回りの援助になります。また、利用者ができることは見守る、援助の必要性が生じたときのために利用者の近くで待機する、ということも仕事内容に含まれます。喀痰吸引など特定の医療的援助が必要な利用者の場合には、処置を行うこともあります(有資格者もしくは研修修了者)。
さらに、2018年4月に施行される改正障害者総合支援法によって、医療機関へ入院した利用者に引き続き訪問介護サービスが提供できるようになります。利用者ごとに異なる介護方法について医療従事者に適切に伝えることや、病室の生活環境を整えることなども、ヘルパーの大切な仕事になるでしょう。
重度訪問介護の事業所で働くために必要なこと
重度訪問介護の事業所は、2016年時点で約7,300カ所あります。事業所のサービス提供責任者は、常勤ヘルパーのうち1名以上であることが必要です。サービス提供責任者は、介護福祉士・実務者研修修了者などの資格所有者、もしくは居宅介護職員初任者研修修了者などで3年以上の実務経験のある人でなければなりません。
ヘルパーは常勤が2.5人以上必要で、居宅介護に従事可能な介護福祉士や介護職員初任者研修などの資格所有者、または重度訪問介護従事者養成研修修了者などであることが条件となっています。資格を持っていない方が重度訪問介護に関わるためには、重度訪問介護従事者養成研修や強度行動障害支援者養成研修を受けることになります。これらの研修では、重度訪問介護の内容や利用者についての理解、介護技術、支援方法、コミュニケーション技術などについて学ぶことができます。研修はNPO法人や自治体のホームヘルパー協議会などが行っています。
法改正などにより今後ますます増えていく重度訪問介護のニーズ。事業所によっては研修費用や資格取得にかかる費用を負担してくれるところもありますので、興味のある人は求人や研修の情報をチェックしてみることをおすすめします。