目次
1.在留資格(就労ビザ)とは?
外国人が日本で働くために必要な資格
在留資格とは外国籍の人が日本で居住したり働いたりするために必要な資格のことで、法務省が発行します。全部で29種類(2023年12月時点)あり、「就労が認められる在留資格」「就労が認められない在留資格」「身分・地位に基づく在留資格」に分かれています。
このうち就労が認められる在留資格が一般的に「就労ビザ」と呼ばれており、全部で19種類あります。
ただし、ビザとは本来外務省の出先機関である在外公館が発行する一時的な入国許可(証)のことで、在留資格とは別の書類です。ビザが3ヶ月以内の滞在者を対象としているのに対し、在留資格は3ヶ月以上滞在する人が対象です。
これらは混同されがちですが、いわゆる「就労ビザ」は日本で働くことが認められている在留資格のことであり、正確にはビザではありません。
また、在留資格が交付された人には氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留期間、就労の可否などが記載された在留カードも発行されます。
違法就労は処罰の対象
在留資格のない外国人を雇用・あっせんすると不法就労助長罪に問われ、3年以下の懲役か罰金、または両方が科されます。
2.介護職として働ける在留資格一覧と取得要件
日本で就労が認められている19種類のうち、介護職として働ける在留資格は「介護」「EPA介護福祉士候補者」「技能実習」「特定技能」の4つです。
在留資格「介護」 | EPA候補者(経済連携協定) | 技能実習1〜3号 | 特定技能1号 | |
---|---|---|---|---|
制度の目的 | 介護福祉士の資格を持つ外国人が、介護業務に従事するため | 国際連携の強化のため | 人材育成と国際協力のため | 生産性の向上と人材確保のため |
在留期間 | 5年、3年、1年、3ヶ月のいずれかで更新回数の制限なし | 4年 ※介護福祉士国家試験を再受験する場合は1年延長可 |
1号:最長1年2〜3号:最長2年 ※1号から3号まで移行すると通算5年 |
通算5年 |
必要な資格 | 介護福祉士 | なし ※ただし介護福祉士国家試験の受験が必要 |
なし | |
可能な業務 | 制限なし | 介護保険3施設*1、認知症グループホーム、特定施設、通所介護、通所リハ、認知症デイ、ショートステイ | 訪問系サービス以外 | |
日本語能力 | N2以上 | N5またはN3以上 | N3以上 | N4以上 |
家族の帯同 | 可 | 不可 | ||
在留者数*2 | 6,284人 | 2,887人 | 15,011人 | 21,152人 |
参照:厚生労働省「外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いについて」
*1…特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設
*2…それぞれ2022年〜2023年時点
なお、在留資格「留学」でアルバイトが認められた場合や、就労制限のない居住資格(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)を持つ人も介護職として働くことがありますが、「介護職として働くことを目的に入国・申請する在留資格」にはあたらないため本記事では取り上げません。
tips|日本語能力試験について
日本語を母語としない人の日本語能力を測定・認定する試験で、在留資格の要件のひとつとして活用されています。N1からN5まで5段階あり、N1が最も高いレベルです。
- N1:幅広い場面で使われる日本語を理解することができる
- N2:日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
- N3:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
- N4:基本的な日本語を理解することができる
- N5:基本的な日本語をある程度理解することができる
以降、介護分野における4つの在留資格の特徴と取得要件について解説します。
在留資格の「介護」
在留資格19種類のうちのひとつ「介護」は、介護福祉士の国家資格を持つ外国人が、日本国内で介護業務に従事するための資格です。2017年から「出入国管理および難民認定法の一部を改正する法律(入管法)」に加わり、日本にある介護福祉士養成施設などを卒業した外国人が対象です。
介護分野におけるほかの在留資格との違いは、介護福祉士の資格が必要な点と在留期間、業務内容にあります。本人が希望すれば繰り返し在留資格を更新できるため、日本での就労が永続的に可能です。
在留資格の「介護」取得要件
「介護」で在留資格を得るには、下記のいずれかに該当する必要があります。
- 3年以上介護の実務経験があり、介護福祉士として国または都道府県知事が指定した養成施設において6ヶ月以上知識と技術を修得した人
- 3年以上介護の実務経験があり、喀痰(かくたん)吸引等研修、介護職員初任者研修、旧ホームヘルパー1〜3級課程、介護職員基礎研修またはこれらに準ずる課程のいずれかを修了した人
EPA介護福祉士候補者
経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)に基づく外国人介護福祉士候補者の受け入れ制度は、日本と特定の国同士の経済連携強化を目的に介護福祉士の取得を目指す制度で、在留資格の「特定活動」に該当します。
現在はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3ヶ国から介護福祉士候補者を受け入れています(2023年12月時点)。
国際厚生事業団が唯一の受け入れ調整機関となっており、入国後は受け入れ先施設で就労しながら国家試験の合格を目指します。
>EPA介護福祉士候補者について詳しくはこちら
EPA介護福祉士候補者とは? 介護現場の国際化を考える
EPA介護福祉士候補者の要件
EPA介護福祉士候補者は国ごとに要件が異なります。
入国前の日本語 能力 |
学歴・資格 | |
---|---|---|
インドネシア | N4程度以上 | 高等教育機関(3年以上)を卒業し、インドネシア政府による介護士認定を受けている、またはインドネシアの看護学校(3年以上)を卒業している |
フィリピン | N4程度以上 | 4年制大学を卒業し、フィリピン政府による介護士認定を受けている、またはフィリピンの看護学校(学士・4年)を卒業している |
ベトナム | N3以上 | 3年制または4年制の看護課程を修了している |
EPA介護福祉士候補者は4年目に介護福祉士の国家試験を受験します。合格すれば在留資格の「介護」に変更して永続的に働くことが可能です。
技能実習
特定技能が日本の人材不足解消を目的としているのに対し、在留資格にある「技能実習」は人材育成と国際協力が目的です。技能実習制度では日本国内で習得した知識・技術を自国で活かすことが期待されています。在留可能な期間は最長5年です。
技能実習生は入国直後におこなわれる講習を修了したら、受け入れ先の事業主と雇用契約を結び就労します。技能実習は1号から3号まであり、それぞれの期間満了までに技能実習評価試験に合格することで在留資格が1号から2号、2号から3号へと移行され、滞在可能期間も延長されます。
在留期間
- 技能実習1号(1年目)…最長1年
- 技能実習2号(2〜3年目)…最長2年
- 技能実習3号(4〜5年目)…最長2年
技能実習制度での取得要件
技能実習制度を使い介護分野における在留資格を得るには、日本語能力試験を受け、基準を満たす必要があります。
- 1年目(入国時):日本語能力試験N3程度が望ましく、N4程度が要件
- 2年目:N3程度
また、技能実習を実施する事業所にも要件があります。
- 技能実習生5名につき1名以上の技能実習指導員を配置し、うち1名は介護福祉士など
- 技能実習を実施する事業所において訪問系サービス以外の介護業務を実施しており、開設後3年以上が経過していること
- 技能実習生が業務をおこなう際は、ほかの介護職員も配置する
- 常勤の介護職員数に応じた技能実習生を受け入れる
特定技能1号
「特定技能」は、生産性の向上や国内における人手不足を解消するために創設された資格で、入国前の試験で技能水準と日本語能力水準を満たした外国人が対象です。
特定技能は1号と2号に分類されており、介護分野で就労するには「特定技能1号」の資格を得る必要があります。在留可能な期間は最長5年ですが、日本にいる間に介護福祉士の国家資格を取得すれば、在留資格の「介護」に変更でき永続的に就労できます。
従事できる業務は訪問系サービス以外の身体介護、レクリエーションの実施、機能訓練の補助などです。
特定技能1号の取得要件
特定技能1号で在留資格を得るには、介護技能と日本語能力を試験で確認し以下の基準を満たす必要があります。
- 介護技能評価試験に合格
- 国際交流基金日本語テストまたは日本語能力試験でN4以上
- 介護日本語評価試験に合格
EPA介護福祉士候補者として研修を修了し就労経験がある人で、介護福祉士国家試験で合格基準点の5割以上の得点、かつ全試験科目で得点がある人は上記が免除され、特定技能1号に移行できます。
3.在留資格申請の流れ
在留資格の申請方法は主に2種類あります。入国前に日本にいる代理人が本人に代わり「在留資格認定証明書」を申請する方法と、入国後に本人が必要書類を用意し入国管理局へ申請する方法です。
本人が申請する方法は審査に時間がかかるうえ、言語の問題や必要書類の収集が難しいことなどから、代理人に依頼するパターンが多いようです。
>雇用主向けの外国人採用における流れや準備はこちらの記事をご参考ください
【採用担当者向け】外国人雇用を攻略!在留資格(就労ビザ)や必要な手続きについて
在留資格を取得するには代理人または本人が必要書類を揃えて、日本の地方出入国在留管理局へ在留資格認定証明書の申請をおこないます。交付までの期間は在留資格によって異なり、1〜3ヶ月程度です。
在留資格認定証明書が交付されたら、在外日本公館で就労ビザの申請をおこない、発給されたビザがパスポートに貼付されます。入国時に空港でビザ付きパスポートと在留資格認定証明書を提示することで上陸許可の証印と在留カードが付与されます。
在留資格の変更や在留期間の更新の場合
すでに在留資格を持っている人が認められた活動以外のことに従事したい場合や、在留期間を延長したい場合は、法務大臣からの許可を得ることで変更・更新できます。
在留資格を変更する際は「在留資格変更許可申請書」、更新する際は「在留期間更新許可申請書」の提出がそれぞれ求められます。
ただし、上記の申請書を提出するだけで必ずしも変更・更新許可を得られるわけではありません。それぞれの許可は以下の事項をもとに総合的に判断されます。
- 活動が申請にかかる入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
- 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること
- 素行が不良でないこと
- 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
- 雇用・労働条件が適正であること
- 納税義務を履行していること
- 入管法に定める届出等の義務を履行していること
各事項の詳細については法務省が提示している「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」をご確認ください。
4.よくある質問と回答
ここからは在留資格に関してよくある質問と回答を紹介します。
Q.在留資格と就労ビザの違いは?
A.就労ビザという名称のものはなく、日本で就労または滞在できる資格のことを正式名称で「在留資格」といいます。ただ、一般的に就労可能な在留資格のことを「就労ビザ」と呼ぶことが多いです。
Q.就労が可能な在留資格は何種類ある?
就労できる在留資格は医療、介護など19種類あります。それぞれの資格では認められている活動内容があり、転職などで活動内容が変わった場合は変更が必要です。
Q.在留資格がないとどうなる?
在留期間を超過しての滞在や、在留資格を持たずに入国した場合は不法滞在に該当します。出入国在留管理庁の審査により国外退去の処分が下されます。
Q.在留資格はどこでもらえる?
在留資格はまず、入国管理局で在留資格認定証明書交付申請をすることで得られます。交付後に、在外日本公館でビザ(査証)の申請をおこない発給されたら、日本での滞在が可能になります。
Q.在留資格取得のための申請は誰がやる?
基本的に本人による申請が必要ですが、就労希望者が外国にいる場合は代理人がおこなうことも可能です。
参考
- 出入国在留管理庁|在留資格一覧表
- 出入国在留管理庁|特定技能ガイドブック