1. セラピストとは?
セラピスト(Therapist)とは、専門的な知識や技術にもとづき、心や身体の症状を癒す職種です。セラピストが活躍する領域は広く、リラクゼーションや医療などの分野で、多様な仕事があるため、必要な資格やなり方は異なります。
またセラピストの由来は、薬や外科的治療を用いない治療や療法を意味する「Therapy」に“〜する人”を意味する接尾辞「ist」がついた英単語で、日本語では「治療士」「療法士」と訳されます。
2. セラピストの種類
リラクゼーション・美容分野、医療分野、心理分野などの職域別にセラピストと呼ばれる職業を紹介します。それぞれ仕事内容や資格の有無などが異なるため、詳しくは個別の解説ページをご覧ください。
リラクゼーション・美容系セラピスト
エステティシャン(Beauty Therapist)
エステティシャンは、手技や化粧品、機器などを使って肌や体型を整える職業です。カウンセリングを通じて顧客の悩みや希望を聞き出し、プランを立てて施術をおこないます。施術対象は髪の毛を除く頭からつま先まで全身におよび、美容脱毛や痩身を目的とした施術もあります。複数の民間資格がありますが、働くうえで必須の資格はなく、未経験であっても研修を通じて技術を身につけることも可能です。
詳しくはこちら>エステティシャンとは?
アロマセラピスト(Aromatherapist)
アロマセラピストは、植物から抽出した香り成分のある精油(エッセンシャルオイル)を使って施術をおこなう職業です。アロマセラピーではスチームや蒸しタオル、身体に塗布するトリートメントオイルなどのさまざまな方法で心地よい香りや空間をつくり、心身のリラックス効果を高めます。アロマセラピストになるのに必須の資格はありませんが、専門知識が求められるため民間資格を取得している人が多いようです。
リフレクソロジスト(Reflexologist)
リフレクソロジストとは、手指の動きで足の裏などの反射区を刺激する反射療法(リフレクソロジー)をおこなう職業です。反射区を刺激することで、血液やリンパの循環を高めたり老廃物を排除したりする効果があり、心身のリラクゼーション効果が期待されます。働くうえで必須の資格はありませんが、多くの人がスキルの習得のために民間資格を取得しています。
タラソテラピスト(Thalasso Therapist)
タラソテラピストとは、海水や海藻、海泥などを使った海洋療法(タラソテラピー)をおこなう職業です。主な施術法に「海水入浴療法」「海藻療法」「海泥療法」があり、海水などに含まれる豊富なミネラルなどの栄養素を身体に取り入れることで、美容効果やリラックス効果が期待できます。アロマセラピストやリフレクソロジスト同様、専門知識を習得するために民間資格を取得する人が多いようです。
医療系セラピスト
医療系セラピストは、主にリハビリテーション(リハビリ)や手技による治療をおこなう専門職で、その多くは国家資格を必要とします。
理学療法士(Physical Therapist)
理学療法士(PT)は、けがや病気などで身体に障がいを持つ人に対してリハビリをおこなう医療専門職で、国家資格です。患者の状態に合わせて、運動療法やストレッチ、筋力トレーニング、バランス訓練などの手法を用いて、座る・立つ・歩くといった基本的動作能力の回復を目指します。
詳しくはこちら>理学療法士(PT)とは?
作業療法士(Occupational Therapist)
作業療法士(OT)は、食事や着替え、文字を書くといった日常生活での“応用的な動作”のリハビリをおこなう医療専門職で、国家資格です。患者の状態やニーズを把握し、日常生活のスキルや意欲を向上させるために計画を立て、トレーニングをおこないます。
詳しくはこちら>作業療法士(OT)とは?
言語聴覚士(Speech Therapist)
言語聴覚士(ST)は、失語症や聴覚障害、音声障害、構音障害などの言葉に関する病気や障がいのリハビリをおこなう医療専門職で、国家資格です。対象は小児の発達障害から高齢者の摂食嚥下障害までと幅広く、発語や言語理解の向上、コミュニケーションスキルの訓練、補聴器の調整などをおこないます。
詳しくはこちら>言語聴覚士(ST)とは?
柔道整復師(Judo Therapist)
柔道整復師は、整復や固定といった柔道整復術を用いて治療をおこなう国家資格です。骨折、脱臼、打撲、捻挫などのけがに対して、徒手療法や物理療法、運動治療などを用いて機能回復を目指します。
詳しくはこちら>柔道整復師とは?
あん摩マッサージ指圧師(Licensed Masseur)
あん摩マッサージ指圧師は、あん摩、マッサージ、指圧という3つの手法を用いて身体の不調を和らげる国家資格です。器具を使用せず、問診や検査法で不調の原因を特定し、なでる、揉む、押す、さするなどの動作で血行を良くすることで不調を改善します。
詳しくはこちら>あん摩マッサージ指圧師とは?
整体師(Bodywork Therapist)
整体師は、手技によって骨格の歪みを矯正し、身体の痛みやこわばりを改善させる職業です。整体師は国家資格ではなく、必須の資格要件もないため、無資格・未経験から働くことも可能です。
詳しくはこちら>整体師とは?
心理系セラピスト
公認心理師(Certified Public Psychologist)
公認心理師は、心理職で国内唯一の国家資格です。心理的な問題を抱えた人(相談者)を対象に、カウンセリングや心理テスト、行動観察などを通じて相談者の抱える問題を分析し、助言や指導をおこない問題解決へ導きます。
詳しくはこちら>公認心理師とは?
臨床心理士(Clinical Psychologist)
臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格で、公認心理師の資格創設以前からある主要な心理系資格です。公認心理師同様に、カウンセリングなどの心理療法を用いて相談者が抱える問題に傾聴し、解決へ向かうよう援助します。
詳しくはこちら>臨床心理士とは?
3. セラピストになるには?

これまで紹介したとおり、セラピストはその職業によって「資格が必須」「なくても就業可能」の2つに分かれます。
アロマセラピストやエステティシャンなどのリラクゼーション・美容系セラピストに関しては、働くために必須の資格はありません。しかしサービスを提供する以上、技術力は必ず求められるため、民間資格などでスキルを習得してから働く人も多くいます。とくに将来的に独立開業を視野に入れている場合は、顧客からの信頼を得るためにも資格取得は有効な手段といえるでしょう。
理学療法士や作業療法士、柔道整復術、あん摩マッサージ指圧師など国家資格に該当するものは、大学や専門学校などの指定養成校で専門知識を学んだうえで、国家試験に合格する必要があります。
また心理系セラピストである公認心理師、臨床心理士も指定養成校で学び、国家試験や民間資格の試験に合格する必要があるほか、一部ルートでは数年の実務経験が求められる場合もあります。
4. セラピストの就業先
セラピストの就業先は、各職種の専門性に応じてまったく異なります。
アロマセラピストやエステティシャンなどのリラクゼーション・美容系セラピストの場合は、アロマセラピーサロンやエステサロンなどの専門サロンで働くことが一般的です。またスポーツジムやホテル内などにサロンが併設されている場合や、デイサービスなどの福祉施設で施術を提供しているところもあります。
リハビリ職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の大半は、病院や診療所などの医療機関で勤務しています。次いで多いのは訪問看護ステーションや、介護老人保健施設などの福祉施設です。
柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師、整体師の主な就業先は、接骨院や整体院、マッサージ院などの治療院です。また柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師などの国家資格を保有している場合は、機能訓練指導員として介護施設で機能訓練を担当することもできますし、医師と連携して治療を依頼されることもあります。
公認心理師や臨床心理士は、病院の精神科や精神保健福祉センターといった保健医療領域、児童相談所や児童福祉施設などの福祉領域、スクールカウンセラーなどの教育領域、企業カウンセラーなどの産業労働領域など多岐にわたります。
参考
- 厚生労働省|職業情報提供サイト