目次
1.生活介護とは
生活介護とは、障がいのある人が自立した生活を送るための障害福祉サービスの一種です。 常時介護が必要な人を対象に、食事・入浴・排泄の介助や、掃除・洗濯・調理などの生活援助を提供します。生活介護は障害者総合支援法によって定められ、主に生活介護事業所が提供しています。
生活介護の主なサービス
- 入浴、排泄、食事などの介助
- 調理、洗濯、掃除などの日常生活上の支援
- 日常生活に関する相談・助言
- 医療的ケア
- 創作活動、生産活動の機会の提供(食品の製造・販売、内職作業、木工制作、絵画、陶芸、音楽鑑賞など)
- 身体機能や生活能力の向上のために必要な援助、リハビリテーション
生活介護の対象者
生活介護を利用できるのは、常時の介護や支援が必要な人です。年齢や障害支援区分、施設の入所状況に応じ、次の条件に当てはまる人が対象となります。
- 50歳未満:障害支援区分が区分3(障害者支援施設に入所する場合は区分4)以上
- 50歳以上:障害支援区分が区分2(障害者支援施設に入所する場合は区分3)以上
※上記の区分に該当しない障害者支援施設の入所者は、市区町村が利用の必要性を認めた場合に利用できる
なお、65歳以上の高齢者は介護保険サービスの対象のため、生活介護の利用者は65歳を超えると介護保険サービスに移行するのが一般的です。ただし、全国的にも数は少ないですが、事業所が介護保険と障害福祉の両方を提供できる共生型サービスの指定を受けている場合は、65歳を超えても生活介護事業所を継続して利用することが可能です。
生活介護事業所の施設数

生活介護を提供する事業所は毎年増加しています。2022年時点では、全国で9,508ヶ所の事業所が活動しています。参考として、同じ障害福祉サービスである障がい者グループホーム(共同生活援助)の同年の施設数は1万2,281ヶ所でした。
2.生活介護の利用状況
利用者の内訳

日本知的障害者福祉協会がおこなった調査(2021年・通所型の生活介護事業所1,253ヶ所が対象)によると、生活介護の利用者は20代(27.0%)が最も多く、次いで30代、40代と続きます。年代が上がるにつれて利用者が減少しているのが特徴です。
なお、50代以上の合計は20.6%と、前年度(19.9%)から0.7ポイント上昇し、わずかに高齢化が進んでいます。

利用者の障害支援区分を見ると、区分が上がるほど利用率が高いことがわかります。重度といわれる区分4以上の割合は、全体の約9割(89.8%)を占め、前年度(89.4%)から0.4ポイント増とわずかに上昇しており、重度化が進んでいる傾向にあります。

1週間あたりの利用契約状況では、週5日の利用者が71.1%と大半を占めます。6日・7日と合わせると8割強となり、多くの人が高頻度で生活介護を利用していることがわかります。
提供サービスの実施状況

サービスの実施状況を項目別に見てみましょう。
利用者の送迎状況(グラフ左上)は、9割以上の事業所がおこなっています。
入浴サービス(グラフ右上)については、提供ありと回答した事業所は約3割でした。とくに60歳以上の利用が目立ち、年齢を重ねるほど利用率が高くなる傾向があります。入浴サービスを使う理由としては「住まいでの介助の人手がない」が約6割を占める結果となりました。
リハビリテーション加算を取得している事業所(グラフ下)は4.5%と低く、リハビリを実施している事業所の少なさが浮き彫りとなりました。このうち、リハビリテーションを実施している職種は、多い順に理学療法士(4.3%)、支援員(2.7%)、作業療法士(2.0%)、看護師(1.8%)でした。
3.生活介護事業所で働く
人員基準
生活介護事業所に必要な職員の人員基準は、以下のように定められています。
職種 | 配置数 |
---|---|
管理者 | 1人 |
医師 | 必要な数 |
看護職員(保健師・看護師・准看護師) | 1人以上* |
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 | 必要な数* |
生活支援員 | 1人以上* ※1人以上は常勤 |
サービス管理責任者 | 1人以上(利用者が60人を超えた場合、40人につき1人追加) ※1人以上は常勤 |
*看護職員、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、生活支援員の総数は、利用者の障害支援区分に応じて必要数が異なる
平均障害支援区分が4未満…6:1
平均障害支援区分が4以上5未満…5:1
平均障害支援区分が5以上…3:1
看護職員の仕事内容
看護職員(保健師・看護師・准看護師)は、利用者の健康管理や医療的ケア(喀痰吸引、経管栄養など)、服薬管理・指導などを中心に担います。医学的な知識が求められる業務以外にも、リハビリテーションをはじめ、食事や排泄の介助、送迎業務など、生活支援を任される職場もあります。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の仕事内容
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、利用者の身体機能の維持・向上のために、それぞれの専門性を活かしたリハビリテーションを計画・実施します。そのほかにも、福祉用具の管理や適合判定、他職種への機能訓練に関する助言のほか、利用者の生活支援や送迎業務などを任されることもあります。
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生活支援員の仕事内容
生活支援員は、利用者の見守りや身体介護(入浴や排泄、食事、移動の介助など)、送迎業務など、生活に関する支援全般を中心となって担当します。そのほか、利用者が取り組む創作活動や生産活動のサポート、レクリエーションや季節行事の企画・実施などもおこないます。
サービス管理責任者の仕事内容
サービス管理責任者は、利用者やその家族から利用者の状態や希望をアセスメントし、一人ひとりに合わせた個別支援計画を作成するのが主な役割です。サービス開始後は定期的なモニタリングを通じ、支援内容の見直しをおこないます。また事業所の責任者として、職員のマネジメントや指導に加え、利用者の生活支援に入ることもあります。
4.生活介護を利用する
利用の流れ

生活介護は、障害福祉サービスのうち介護給付の利用方法にのっとって申し込みます。障害支援区分の認定を受けたうえで、指定特定相談支援事業者にて利用計画案を作成してもらい、支給が決定します。その後は利用したい生活介護事業所と契約を結ぶことで、サービスの利用が開始されます。
一日の流れ

創作活動や生産活動の内容は、事業所によってさまざまです。書道や手芸、園芸、絵画、音楽活動などのほか、体を動かすレクリエーション、地域のゴミ拾いなどのボランティア活動をおこなう場合もあります。また、生産活動に取り組む場合は、その対価として利用者に工賃を支給している事業所も多いです。
5.障がいのある人の日常生活に寄り添う仕事
生活介護の利用者は週5日以上と高頻度での利用が多く、生活の一部となっている様子が伺えました。活動内容は事業所によって多様な創作活動や生産活動があり、利用者の好みや状態に合わせて選ぶことができます。また、利用者層は20〜40代が中心で、障がいの程度は重度の割合が高くなっています。
生活介護事業所で働く職員にとっては、利用者層や活動内容によって、業務内容も大きく異なる可能性があります。事業所を探す際は、あらかじめ職場見学などをおこない、仕事内容のイメージを膨らませておくことをおすすめします。
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