目次
1.定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは
24時間体制で介護・看護サービスを提供
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、24時間体制で介護や看護を提供する訪問型のサービスです。定期的に利用者宅を訪問して身の回りの世話や療養上のサポートをおこなうほか、急な対応が必要な際にも駆けつけます。
設立の背景には、居宅で介護を受けながら生活を送る高齢者が増える一方、要介護者を24時間体制で支える仕組みが不足していたことがあります。また、医療ニーズが高い高齢者に対する医療と介護の連携不足も課題でした。これらに対処するため、2012年に定期巡回・随時対応型訪問介護看護が創設され、2022年には全国にある1,255の事業所が同サービスを提供しています。
通常の訪問介護と異なり、一日に複数回の定期的なケアと、24時間体制による随時対応が受けられる点が特徴です。

一体型と連携型の違い
定期巡回・随時対応型訪問介護看護を実施する事業所には、一体型と連携型の2種類があります。
一体型は、ひとつの事業所内で訪問介護・訪問看護サービスの両方を提供することが可能です。一方、連携型は訪問介護事業所が同じ地域にある訪問看護事業所と連携してサービスを提供します。
対象者
サービスを受けられるのは、要介護1〜5の認定を受け一日に複数回介助や支援が必要な人です。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、市区町村が事業所の指定・管轄をおこなう地域密着型サービスです。そのため、利用者は住んでいる地区内にある事業所のサービスを利用できます。
2.定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用する
サービス内容

定期巡回・随時対応型訪問介護看護の主なサービス内容は、その名のとおり定期的な巡回と緊急時など必要に応じた随時の対応です。以下のサービスを組み合わせて利用することができます。
定期巡回サービス
6時、8時、18時など一日に複数回訪問介護員が利用者宅を訪問し、日常生活上の支援をおこないます。利用者はケアマネジャーが作成したケアプランをもとに、入浴や排泄などの身体介護を中心とした介護サービスが受けられます。
随時対応サービス
転倒や急な体調不良などの緊急時に、オペレーターが利用者や家族からの通報を受けると、状況に応じて必要なサービスを手配します。
随時訪問サービス
随時対応においてオペレーターが訪問の必要性を認めた場合、訪問介護員などに訪問を要請します。要請を受けた職員が利用者宅を訪問し、状況に応じた対応をおこないます。
訪問看護サービス
健康状態の把握や診療の補助、緊急時に対応するため、看護師が利用者宅を訪問し必要なケアをおこないます。連携型の場合は外部の訪問看護事業所から職員が派遣されます。
併用できないサービス
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用者は、サービス内容が重複する訪問介護や訪問看護、夜間対応型訪問介護は併用できません。
ただし、訪問型以外のデイサービスや通所リハビリテーションなどの通所サービスや短期入所サービスは併用できます。
利用料
定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスは、利用頻度、時間に関わらず毎月一定の料金です。利用料は要介護度ごと、訪問看護サービスの利用の有無、事業所の種類によって異なります。
施設の種類 | 提供するサービス | 要介護度 | 利用料 |
---|---|---|---|
一体型 | 訪問看護なし | 要介護1 | 5,697円 | 要介護2 | 10,168円 | 要介護3 | 16,883円 | 要介護4 | 21,357円 | 要介護5 | 25,829円 | 訪問看護あり | 要介護1 | 8,312円 | 要介護2 | 12,985円 | 要介護3 | 19,821円 | 要介護4 | 24,434円 | 要介護5 | 29,601円 |
連携型 | 要介護1 | 5,697円 | 要介護2 | 10,168円 | 要介護3 | 16,883円 | 要介護4 | 21,357円 | 要介護5 | 25,829円 |
*1単位あたり10円で計算
*連携型を利用する場合、上記費用とは別に訪問看護事業所の利用料として要介護1〜4は2,954円、要介護5は3,754円が別途発生
利用料は、1単位あたりの単価をかけて算出されています。単位数は全国一律ですが、単価は地域ごとに異なるため上記は目安としてください。
利用者の内訳

定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスの利用内訳を要介護度別に見てみると、要介護1〜2がそれぞれ25%程度、次いで要介護3〜4が18.7%と同率になっています。
3.定期巡回・随時対応型訪問介護看護で働く
ここからは、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の人員配置基準と、それぞれの仕事内容を紹介します。
人員配置基準
職種 | 提供サービス | 必要人数 | 必要な資格 |
---|---|---|---|
訪問介護員 | 定期巡回 | 常時1人以上 | ・介護福祉士 ・実務者研修修了者 ・初任者研修修了者 ・旧介護職員基礎研修修了者 ・旧訪問介護員1級 ・旧訪問介護員2級 | 随時訪問 | 常時1人以上 |
看護職員 | 訪問看護 | 2.5人以上 (うち1人は常勤の保健師または看護師) |
・保健師 ・看護師 ・准看護師 ・理学療法士 ・作業療法士 ・言語聴覚士 |
オペレーター | 随時対応 | 常時常勤1人以上 | 下記いずれかの職種に該当し、1年以上訪問介護のサービス提供責任者として従事した人 ・看護師 ・保健師 ・准看護師 ・介護福祉士 ・社会福祉士 ・介護支援専門員 ・医師 |
計画作成責任者 | 1人以上 | ・看護師 ・保健師 ・准看護師 ・介護福祉士 ・社会福祉士 ・介護支援専門員 ・医師 | |
管理者 | 1人 | 常勤・専従者 |
訪問介護員
訪問介護員の主な仕事内容は、排泄や入浴介助などの身体介護と家事などの生活援助です。
交通事情や訪問頻度を考慮し、滞りなくサービス提供がおこなえる人数が求められます。そのため、利用者数や利用状況に応じて事業所ごとに必要な人数が異なり、24時間を通じて常時1人以上の確保が必要です。
看護職員
看護職員の主な仕事内容は、利用者の療養上の世話や診療補助、健康状態の把握、点滴、リハビリに加え、利用者・家族からの相談に対応することです。訪問看護サービスを提供する看護職員は緊急時にも対応できるよう、常時オンコール体制を確保する必要があります。
オペレーター
オペレーターは、利用者やその家族からの相談や通報に応じ、必要があれば介護員または看護職員に訪問を要請します。
また、介護福祉士などの資格を持つ常勤1人の配置が必要ですが、管理業務に支障がなければ訪問を担当する職員が兼務することも可能です。同一敷地内に併設する訪問介護事業所のサービス提供責任者も、オペレーターとして認められています。
計画作成責任者
計画作成責任者は、ケアマネジャーが作成したケアプランや利用者の状況をふまえ、訪問日時や滞在時間、具体的なサービス内容を決めます。
計画作成担当者は兼務が可能なため、訪問をおこなう介護福祉士や看護師などの有資格者のなかから、1人以上を選びます。
管理者
管理者の主な仕事は従業員や事業所の運営管理です。スタッフのシフト作成のほか営業活動、関係機関との連携を中心におこないます。
管理者は、事業所のほかの職種や併設する事業所の管理者と兼務が可能です。
4.24時間体制のサポートと医療との連携が特徴
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、要介護認定者に対して一日に数回、定期的な訪問と随時対応によるケアをおこなう地域密着型サービスです。決められた時間帯にまとまったケアをおこなう訪問介護と異なり、24時間体制で必要なときに対応できる点が特徴です。要介護1〜2の比較的介護度が低い利用者が半数を占め、要介護5の利用者が最も少ない割合となっています。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業所の数は全国に1,300程度と限られており、利用したくても事業所がない地域もあります。多くの介護サービスが人材不足に悩まされている昨今、24時間体制で対応するための人員確保が困難な点も課題です。今後、介護が必要になった人が必要なタイミングでサービスを受けられる体制の構築が求められます。
参考
厚生労働省|定期巡回・随時対応型訪問介護看護