1.有料老人ホームとは
有料老人ホームは高齢者が入居し、介護、食事の提供、洗濯・掃除などの生活支援、健康管理などのサービスを提供する施設です。老人福祉法第29条によって定められており、主に民間事業者(株式会社)を中心に設置されています。
有料老人ホームの施設数は現在も増え続けており、2000年の介護保険制度スタート時には350件だったところから、2020年には約1万6,000件にも増加しました。

*特別養護老人ホームは「介護老人福祉施設」と「地域密着型介護老人福祉施設」の合計
2.有料老人ホームの種類
有料老人ホームは「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3つに大別できます。
介護付 |
住宅型 |
健康型 |
|
---|---|---|---|
介護保険の適用 |
あり |
なし |
なし |
入居者の状態(目安) |
自立〜重度の要介護 |
自立〜軽度の要介護 |
自立 |
施設数* |
4,192件 |
10,508件 |
20件 |
出典:国土交通省|データから見た高齢者住宅・施設の需給バランス
*2020年10月時点の施設数
介護付有料老人ホーム
都道府県から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた有料老人ホームは、介護付有料老人ホームと呼ばれます。住宅型・健康型とは違い、日常生活で必要なサービスや介護などの提供が法令で義務付けられている*のが特徴です。
サービスの提供方法は「一般型」「外部サービス利用型」の2つに分けられます。一般型はケアプランの作成から介護サービスの提供までを一貫して施設の職員がおこないます。それに対し外部サービス利用型では、ケアプランの作成や生活相談、安否確認は施設の職員がおこないますが、食事介助や入浴介助などの直接的な介護は外部の事業者に委託します。
“介護付”有料老人ホームと聞くと介護を含んで当然のように思われがちですが、実際はサービスの提供方法や入居者の要介護度によって、直接的な介護をほとんどおこなわないケースもあります。「介護スキルを磨きたくて介護付有料老人ホームを選んだのに、生活支援ばかりだった」ということがないよう、就職先を探す際には業務内容をよく確認するようにしましょう。
住宅型有料老人ホーム
自立〜軽度の要介護度で、主に食事の提供や日常生活の世話などを必要とする高齢者が入居しています。
住宅型有料老人ホームには介護サービスは含まれません。もし介護が必要になった場合には、入居者自身(またはその家族)がケアマネジャーに依頼しケアプランを作成してもらい、訪問介護などの外部サービスを利用することになります。なお、住宅型有料老人ホームには居宅介護支援事業所や訪問介護事業所、デイサービスなどを併設しているところが多いため、介護が必要となった際にはこれらの併設サービスを利用する方法もあります。
健康型有料老人ホーム
自立している高齢者が入居する有料老人ホームです。主な提供サービスは食事の提供などに限られますが、その代わり娯楽設備やレクリエーション、サークル活動などが充実しているところが特徴です。
なお入居者に介護が必要となった場合には、原則として別の施設への転居が求められます。
3.有料老人ホームとそのほかの施設の違い
サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームの違い
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、2011年の法改正により誕生した、比較的自立度の高い高齢者向けの住宅です。有料老人ホーム同様、主に民間事業者によって運営されています。
サ高住で義務付けられているサービスは安否確認と生活相談のみ。食事提供や掃除洗濯などの生活支援、健康管理、介護などを利用する場合は、オプションまたは外部サービスを依頼することになります。
サ高住について詳しくはこちらでも解説しています。
特別養護老人ホームと有料老人ホームの違い
特別養護老人ホーム(特養)は社会福祉法人などによって公的に運営される介護保険施設の一つです。在宅での生活が困難になった原則要介護3以上の高齢者が入居でき、看取りにも対応しているため入居者にとっての“終の棲家”となることも多いです。
特養は中長期的に入居する方を対象としているため、主な提供サービスは身体介護と生活援助となります。レクリエーションなどもおこないますが、入居者の要介護度や利用料、運営主体の違いからも、有料老人ホームよりも控えめな内容になる傾向があります。
特養について詳しくはこちらでも解説しています。
4.有料老人ホームで働く
有料老人ホームで働く職種・人員配置
介護付と住宅型・健康型ではそれぞれ提供するサービス内容が異なるため、働く職員と配置基準にも次のような違いがあります。
介護付 |
住宅型・健康型 |
|
---|---|---|
管理者 |
1人 |
必要数 |
生活相談員 |
要介護者等100人に対して1人 |
必要数 |
介護・看護職員 |
要支援者10人に対して1人 要介護者3人に対して1人 (*1) |
(介護サービスを提供する場合)必要数 |
機能訓練指導員 |
1人以上 |
(介護サービスを提供する場合)必要数 |
計画作成担当者 |
1人以上(*2) |
– |
栄養士・調理員 |
– |
必要数 |
出典:厚生労働省|特定施設入居者生活介護、有料老人ホームの設置運営標準指導指針について
*1…夜間帯の職員は1人以上。看護職員は要介護者等が30人までは1人、30人を超える場合は50人ごとに1人
*2…ケアマネジャー1人以上を配置すること
介護職員の仕事内容・働き方
入居者の要介護度に応じて必要な身の回りの世話(食事の配膳、掃除、洗濯、外出同行など)をしたり、直接的な介護(食事介助、入浴介助、排泄介助、移動介助など)をおこなったりします。またホームでの生活を楽しめるようレクリエーションやアクティビティの企画・実施をおこなう施設も多いです。
介護職員は入居者と接する時間が最も長いため、入居者の様子にも注意を払い、気になることがあればほかの職員に相談するなどの連携も大切になります。入居者の様子を記録することも重要な業務の一つです。
有料老人ホームは24時間稼働しているため、介護職員は4交替制(早番・日勤・遅番・夜勤)などのシフトを組んで働きます。なお有料老人ホームの介護職員は無資格・未経験でも仕事を始めることができますが、資格があると資格手当が付き給与アップが期待できます。

看護職員の仕事内容・働き方
有料老人ホームでの看護師の主な役割は入居者の健康管理です。日々のバイタルチェックや服薬管理、点滴、注入食の介助、痰の吸引、摘便などの医療行為を中心におこなうほか、必要に応じて担当医との連携や通院に付き添うこともあります。
施設によっては看護師も介護業務に入ることもあり、さらに施設の職員を対象にケアに関する指導をおこなうこともあるようです。
勤務時間は日勤のみのところもあれば、介護職員同様シフト制による夜勤もあるため、募集要項をよく確認しましょう。なかにはオンコール対応の施設もあります。

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介護付有料老人ホーム/住宅型有料老人ホーム
生活相談員の仕事内容・働き方
生活相談員の主な役割は、入居者や家族の窓口として相談に応じることです。入居希望者への見学対応、入居・退去の手続き、入居管理、広報・営業活動、入居者や家族から寄せられる要望や苦情への対応などをおこないます。基本的にデスクワークが中心となりますが、通院時の付き添いや介護業務に入ることもあります。
生活相談員として働くには、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格、ケアマネジャーなどの資格が必要です(要件は都道府県によって異なります)。
勤務時間は相談業務が中心となるため日勤のみが一般的ですが、なかには夜勤を伴う施設もあるようです。
機能訓練指導員の仕事内容・働き方
入居者の身体機能を維持・改善するためにおこなうプログラムのことを機能訓練と言います。機能訓練指導員は入居者の健康状態を把握したうえで、必要なプログラムを設計し訓練をおこないます。
機能訓練指導員として働くには、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、鍼灸師*のいずれかの資格を持っている必要があります。一般的な機能訓練以外にも、言語聴覚士なら嚥下訓練、あん摩マッサージ指圧師ならマッサージなど、それぞれの専門性をプログラムに反映することもできます。
勤務時間は日勤のみのシフト制となることが一般的です。
計画作成担当者(ケアマネジャー)の仕事内容・働き方
計画作成担当者は入居者一人ひとりに合ったケアプラン(施設サービス計画書)を作成し、その内容をもとに施設での介護サービスが提供されます。その後は定期的にモニタリングをおこない、適切な介護を提供できるようケアプランを見直します。介護サービスの中核を担う特性から、計画作成担当者は入居者や家族、職員、外部の関係者などを橋渡しする役割が求められます。
計画作成担当者として働くのにケアマネジャー資格は法令上必須ではありませんが、実際ほとんどの事業所ではケアマネジャー資格が必須要件となっています。
勤務形態としては、ケアプラン作成業務が中心の場合は日勤のみが多く、介護業務も兼務する場合はシフト制による夜勤が含まれることもあります。
5.有料老人ホームの給料(職種別)
ジョブメドレーに掲載されている求人から有料老人ホームの賃金相場を算出しました(2022年4月時点)。なお、夜勤手当や残業手当など月によって支給額が変動する手当は集計対象外のため、実際に支払われる賃金はこれより多くなる可能性があります。
職種 |
時給(パート・バイト) |
月給(正職員) |
年収(正職員) |
---|---|---|---|
介護職員 |
1,162円 |
22万9,219円 |
320万9,066円 |
看護師/准看護師 |
1,644円 |
29万5,474円 |
413万6,636円 |
生活相談員 |
– |
24万3,210円 |
340万4,940円 |
ケアマネジャー |
1,379円 |
26万6,634円 |
373万2,876円 |
理学療法士 |
– |
29万7,377円 |
416万3,278円 |
作業療法士 |
– |
29万3,107円 |
410万3,498円 |
*年収は月給の14ヶ月分で換算
*生活相談員、理学療法士、作業療法士の時給はデータ数が少ないため割愛
正職員の月給については、各職種の全求人の平均値よりも有料老人ホームのほうが月額8,000円〜1万5,000円程度高い傾向が見られました。
6.自分に合った有料老人ホームの仕事を探そう
一口に有料老人ホームと言っても、介護付・住宅型・健康型の種類や提供しているサービスによってその内容は大きく異なることがわかりました。「介護スキルを磨きたい」という方なら介護に力を入れているホームが向いているでしょうし、反対に「直接的な介護よりも生活支援やレクリエーションに力を入れたい」という方なら比較的自立の方が多いホームが合っているかもしれません。
また有料老人ホームは民営が多いため、入居者のさまざまなニーズに応えようとバリエーションも豊富です。芸術やサークル活動などの余暇を楽しむためのサービスが充実しているホームやリハビリに力を入れているホームもありますし、高所得者層向けの有料老人ホームではホテルのような接遇を求められることもあります。ぜひあなたのやりたい介護ができる有料老人ホームを探してみてください。
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参考
- 一般社団法人高齢者住まいアドバイザー協会著『高齢者住まい 種類と選び方 高齢者住まいアドバイザー検定公式テキスト』BookWay, 2017