目次
1.特定施設入居者生活介護とは
行政が認定した包括的な介護保険サービス
特定施設入居者生活介護とは、特定施設に入居している支援を必要とする人に対して、日常生活上の世話、介護、リハビリなどを包括的におこなう介護保険サービスのことです。
特定施設とは、厚生労働省が定めた運営基準を満たしたうえで、都道府県や市町村に申請をおこない、指定を受けた介護施設のことを指します。対象となる施設形態には、有料老人ホーム*(サービス付き高齢者向け住宅のうち有料老人ホームに該当するものも含む)、養護老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)があります。
特定施設入居者生活介護では、入居者一人ひとりに合わせたケアプラン(特定施設サービス計画)を作成し、プランに基づいて食事や入浴、排泄、移動などの必要な支援、身体機能の維持・向上を目的とした機能訓練などを提供します。
入居者にとっては、主に次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
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|
特定施設の種類
特定施設入居者生活介護にはいくつか種類があり、入居者の要介護度や施設規模に応じて下記のように区別されています。
種類 | 入居できる人 | |
---|---|---|
特定施設入居者生活介護 | 介護専用型 | 要介護1〜5 |
混合型 | 自立、要支援1〜2、要介護1〜5 | |
地域密着型特定施設入居者生活介護 | 要介護1〜5 | |
介護予防特定施設入居者生活介護 | 要支援1〜2 |
特定施設入居者生活介護には要介護認定を受けた人向けの「介護専用型」と、自立や要支援の人まで幅広く入居できる「混合型」の2種類があります。
地域密着型特定施設入居者生活介護は、市町村の指定を受けた特定施設で、定員29人以下の小規模な体制で運営されます。
介護予防特定施設入居者生活介護は、介護予防サービスとして要支援認定を受けた人が対象です。
tips|サービスの提供方法は「一般型」「外部サービス利用型」の2通り
特定施設入居者生活介護は、介護サービスの提供方法によって「一般型(包括型)」と「外部サービス利用型」の2つに分かれています。
「一般型」はこれまで紹介したように、介護や看護などすべてのサービスを同一施設内で提供します。対して「外部サービス利用型」は、ケアプランの作成、入居者の生活相談、安否確認、緊急時対応までは施設内でおこないますが、生活援助や身体介護、医療的処置、リハビリなどは外部の訪問介護や訪問看護、訪問リハビリなどの事業者に委託しておこないます。定額の利用料に加え、外部サービスを利用した分だけ別途支払う必要があります。
なお、大半の特定施設は一般型を採用しており、外部サービス利用型の特定施設はあまり多くありません。
2.特定施設入居者生活介護の利用状況
事業所数の推移

参照:e-Stat「介護給付費等実態統計」をもとに作成
特定施設の事業所数は年々増加しており、2021年時点で約6,000ヶ所が登録されています。
なお、特定施設の数は自治体によって上限が定められているため(総量規制)、基準を満たせば必ず指定を受けられるわけではありません。公募に応募し、審査を通過して初めて特定施設を名乗ることができます。
入居者数の推移

参照:厚生労働省「特定施設入居者生活介護」をもとに作成
特定施設の事業所数の増加に伴い、入居者数も増えています。2019年度時点での入居者数は約251万人でした。
要介護度別の分布を見ると、要介護度1〜4がボリュームゾーンであり、平均要介護度は2.4(地域密着型は2.9)となっています。
3.特定施設入居者生活介護の指定基準
特定施設として自治体の指定を受けるには、主に次のような設備基準や人員基準を満たす必要があります。
設備基準
- 介護居室:
- 原則個室であること
- プライバシーの保護に配慮し、介護をおこなえる適当な広さであること
- 地階に設けないこと など
- 一時介護室:介護をおこなうために適当な広さを有すること
- 浴室:身体の不自由な人が入浴するのに適したもの
- 便所:居室のある階ごとに設置し、非常用設備を備えること
- 食堂:適当な広さを有すること
- 機能訓練室:機能を十分に発揮し得る適当な広さを有すること
- 施設全体:利用者が車椅子で円滑に移動することが可能な空間と構造であること
人員基準
特定施設での職員の配置基準は次のとおりですが、施設によっては基準よりも手厚く配置しているところもあります。
生活相談員 | 要介護者等100人に対して1人 |
---|---|
介護職員 看護職員* | 要支援者10人に対して1人以上 要介護者3人に対して1人以上 ※外部サービス利用型の場合 要支援者30人に対して1人以上 要介護者10人に対して1人以上 |
機能訓練指導員 | 1人以上(兼務可) ※外部サービス利用型は配置不要 |
計画作成担当者 | 介護支援専門員 1人以上(兼務可) (要介護者等100人に対して1人が標準) |
管理者 | 1人(兼務可) |
*夜間帯の介護職員・看護職員は1人以上(外部サービス利用型は除く)
4.特定施設入居者生活介護で働く
生活相談員の仕事内容・働き方
生活相談員の主な役割は、入居者やその家族の相談に応じることです。入居を検討する人の見学対応や、入退去の手続き、入居管理、広報・営業活動、入居者や家族からの要望・苦情対応などの業務をおこないます。メインは入居者対応や事務作業ですが、時には介護業務で現場に入ることもあります。
相談業務が中心のため日勤であることが多いですが、施設によっては夜勤を求められる場合もあります。
生活相談員として働くために必須の資格はありませんが、実際の求人では介護福祉士や社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格、ケアマネジャーなどの資格が要件となっていることが多いです。
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介護職員の仕事内容・働き方
介護職員は入居者の日常生活上の世話や身体介護を担当します。具体的には身の回りの整理整頓や掃除、洗濯、食事の配膳、外出同行、歩行や移乗のサポート、食事・入浴・排泄などの介助、清拭や体位変換など多岐にわたります。入居者の健康状態の観察や報告、ほかの職員や家族との連携を図ることも重要な役割です。また、レクリエーションやイベントの企画・実行に力を入れている施設もあります。
24時間体制で入居者をサポートするため、介護職員は4交替制(早番・日勤・遅番・夜勤)などのシフトを組んで働きます。日勤専従・夜勤専従といった働き方も可能です。
原則として必須の資格はなく、無資格・未経験からでも挑戦することができますが、職場によっては介護職員初任者研修などの資格が求められるところもあります。
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アンケート|特定施設での勤務経験と印象は?
介護職向け相談コミュニティ「カイゴトーク」で特定施設入居者生活介護での勤務経験の有無、印象についてアンケートを取りました(回答数895)。
参照:特定施設で働いた経験の有無と印象は? | カイゴトークより作成
約4人に1人が「特定施設で働いたことがある」と回答し、そのうち約3割が「他施設よりも働きやすい」、残りの約7割は「とくに違いは感じない」と回答しています。
運営基準が明確に決まっているため「働きやすい」と感じた人もいるようですが、大半の人は特定施設であることのメリットを感じていないようでした。「同僚や管理職との人間関係など別の要因のほうが重要」といった意見が多く見られました。
看護職員の仕事内容・働き方
看護師の主な役割は、入居者の健康管理と医療的なケアです。具体的には、入居者のバイタルチェックや評価、担当医との連携、服薬管理、点滴、注入食の介助、痰の吸引、摘便といった医療行為などです。また、緊急時の応急処置や病院への搬送手配もおこないます。
施設によっては看護師が介護業務に入ることもあれば、他職種へのケアに関する指導をおこなうこともあります。病院と比べて医療職が少ない分、看護師のスキルが重宝される環境といえるでしょう。
勤務時間は日勤のみのほか、介護職員と同様にシフト制で夜勤がある場合も。またオンコール対応が必要な施設もあります。
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計画作成担当者の仕事内容・働き方
計画作成担当者の主な役割は、入居者の個別ケアプラン(特定施設サービス計画)の作成・管理です。入居者のニーズや健康状態をふまえて作成されたケアプランをもとにサービスが提供され、その後は定期的にモニタリングを実施し、プランの見直しをおこないます。計画作成担当者はサービスの中核を担う立場から、入居者や家族、職員、関係機関などをつなぐ橋渡し役といえるでしょう。
勤務時間はケアプラン業務のみであれば日勤のみ、介護業務もおこなうのであればシフト制による夜勤を任されることもあります。
計画作成担当者として働くには、介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格が必要です。
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機能訓練指導員の仕事内容・働き方
機能訓練指導員の主な役割は、入居者の身体機能を維持・向上させるためのリハビリを計画・実行することです。具体的には、入居者の身体機能や健康状態を評価し、一人ひとりにあった機能訓練プログラムをおこないます。
勤務時間は施設によって異なりますが、日勤のみのシフト制が一般的です。
機能訓練指導員として働くには、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、鍼灸師*のいずれかの資格を持っている必要があります。それぞれの職種の専門性をプログラムに活かせると良いでしょう。
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5.特定施設入居者生活介護の給料
特定施設で働く介護職員の給料を見てみましょう。下の表は厚生労働省が発表した「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」から施設形態別の平均月収を比較したものです。
常勤の給料を比較すると、特定施設は介護老人福祉施設(特養)、介護老人保健施設に次いで3番目に高いことがわかります。
施設形態 | 常勤 | 非常勤 |
---|---|---|
介護老人福祉施設(特養) | 34万5,590円 | 20万2,950円 |
介護老人保健施設 | 33万8,390円 | 28万9,050円 |
特定施設入居者生活介護事業所 | 31万9,760円 | 23万1,250円 |
訪問介護事業所 | 31万4,590円 | 20万1,120円 |
介護医療院 | 30万7,550円 | 21万5,610円 |
通所リハビリテーション事業所 | 29万7,980円 | 21万8,830円 |
認知症対応型共同生活介護事業所 | 29万1,460円 | 18万9,600円 |
小規模多機能型居宅介護事業所 | 28万9,520円 | 23万5,270円 |
介護療養型医療施設 | 28万7,070円 | – |
6.自分にあった特定施設を探そう
国の基準を満たし自治体の指定を受けた特定施設は、入居者にとって人気のある介護施設です。また働く職員にとっても、運営基準や人員基準が明確に定められていることから、職場選びの指針にもなるでしょう。
特定施設は種類(介護専用型・混合型、地域密着型、介護予防サービス)によって入居者の要介護度がまったく異なるため、どの施設で働くかによって主な仕事内容も変わってきます。さらに特定施設の多くは民営の有料老人ホームのため、レクリエーションや余暇活動に力を入れるなど独自性を出している施設も多いです。特定施設の求人を探す際には、入居者の状況や施設のアピールポイントといった特徴までふまえて選ぶことをおすすめします。
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