目次
1.発達障害とは
脳の働きによって行動や情緒に特徴がある状態
発達障害は生まれつき脳機能に障がいがある状態を指し、行動や情緒の面で特徴が見られます。障がいの特徴や表出の度合いはさまざまで、日常生活や人間関係において困りごとが生じることもあります。
近年、支援法が成立したことや発達障害への認知が高まったことなどにより、自身や家族の発達障害を疑い受診する人が増えていると考えられます。それに伴い、支援する機関や携わる職種も増えています。
求められる早期発見と生活全般での支援
2005年に「発達障害者支援法」が施行されました。それまでは、知的障がいを伴わない発達障害がある人への支援策はなく、学校や就労先において困難を抱えたままの状態でした。同法はこのような課題を解決し、発達障害をもつ人が自立した生活を送れるようにすることを目的に成立しました。主に、早期発見と生活全般にわたる支援の促進、国や医療・保健・福祉・教育など関係機関の連携などについて定められています。
2.発達障害の種類と特徴
発達障害にはいくつか種類があり、複数の特徴が見られる人もいるため明確に分けて診断することは困難です。脳の働きに特徴がある点は共通していますが、種類によって表出の強度が異なったり、併せもったりします。同じ人であっても年齢や環境によって症状が変化することもあります。そのため、本人や周囲の人がどのような特徴があるのかを理解することが大切です。
広汎性発達障害(PDD)
広汎性発達障害は自閉症、アスペルガー症候群、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の発達障害の総称です。
周囲の人に無関心で、状況を理解しづらいなどの症状があります。相手の意思や感情の理解が難しいことから対人関係を築くのが難しく、強いこだわりが見られることもあります。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
標準的な発達年齢に見合った落ち着きがなく、多動性や衝動的な行動が多く見られる状態を指します。集中力が続かずミスが多いなどの特性も見られます。
学習障害(LD)
知的発達に遅れは見られないものの、読む・書く・話す・聞く・計算する・推論するなどの特定の能力に支障が出る状態です。
チック症
まばたきや咳払い、思わず起こってしまう発声などが見られる状態です。これらの症状が1年以上続く場合はトゥレット症候群と呼ばれています。
吃音(きつおん)
一般的に「どもり」とも呼ばれ、発語時に音の繰り返しや引き伸ばし、言葉が出てこず滑らかに話せないなどの特性が見られます。
3.発達障害を支援する機関と職種
病院・診療所
現在の発達障害は、アメリカ精神医学会の診断基準である「精神障害の診断・統計マニュアル(DSM)」や、世界保健機関が公表している「国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)」をもとに、医師が診断しています。しかし、発達障害は個人差が大きいことから、そのほかの疾患との判別が難しいとされています。
子どもの発達障害の評価・診断は、主に小児科・小児神経科・児童精神科でおこなわれ、大人の場合は精神科や心療内科でおこなわれます。
関わる職種
医師のほか、看護師/准看護師も受診時に関わりがあります。落ち着いて待つことが難しい子どもや、普段とは異なる環境に強い不安を覚える子どももいます。発達障害に関する診察を希望する保護者から予約時などに子どもの特徴や関わり方を聞き、必要があれば別室を用意する、診察内容を伝えておくなどの配慮をします。
発達障害支援センター
発達障害に関する行動やコミュニケーションに関する相談に応じ、支援する機関です。各都道府県や政令指定都市、社会福祉法人、特定非営利活動法人などが運営しています。公共職業安定所(ハローワーク)や地域障害者職業センターなどと連携し、就労を希望する相談者には就労支援もおこないます。
関わる職種
発達障害者支援センターでは、相談支援担当職員、発達支援担当職員、就労支援担当職員が働いています。職種は各自治体で異なり、医師や看護師の配置が求められているところや、相談・支援をおこなう職員に社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員の資格をもつ人を1名以上、臨床心理士など心理的な評価や相談を専門とする人を1名以上と定めている自治体もあります。
児童発達支援・放課後等デイサービス
障がいのある子どもを対象とした通所施設です。児童発達支援は未就学児が通う施設で、日常生活における基本的な動作の指導や集団生活への適応訓練などをおこないます。児童発達支援には“事業所”と“センター”があり、地域の療育の場としての機能があります。
>児童発達支援に関する詳細はこちらの記事をチェック
児童発達支援(児発)とは? 知っておきたい特徴や活かせる資格を紹介!
放課後等デイサービスは学齢期(小学校から高校まで)の子どもが、放課後や夏休みなどの長期休暇に通う施設です。自力でできることを増やすための訓練をするほか、放課後の居場所づくりの役割もあります。
>放課後等デイサービスに関する詳細はこちらの記事をチェック
関わる職種
児童発達支援や放課後等デイサービスでは、個別支援計画を作成し提供サービスを管理する児童発達支援管理責任者、児童指導員または保育士に加え、機能訓練をおこなう場合にはリハビリの専門家である理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの機能訓練担当職員の配置が必要です。
また、重症心身障害のある子どもを対象とする場合、児童指導員、嘱託医、看護師、機能訓練担当職員の配置が求められています。
保育所・幼稚園
保育所や幼稚園では、保育・指導にあたる職種が園児の発達状況を把握し、発達障害(可能性も含む)があれば療育センター、児童発達支援との連携をおこないます。
関わる職種
保育士や幼稚園教諭は、日中のほとんどの時間を子どもと一緒に過ごします。家庭では問題が感じられない子どもも、集団生活の中ではなじめなかったり発達障害の特徴が見られたりします。日頃から様子をよく観察し、気になる行動があれば同僚や園長、公共の療育センターに相談する、保護者にも共有するなどの対応が必要な場合もあります。
放課後児童クラブ
学童保育、学童クラブ、児童クラブなどさまざまな呼び名があり、小学校に通う子どもたちが放課後や学校休業日(土曜日、夏休みなど)に安心して過ごすことを目的としています。
放課後児童クラブ運営指針では、発達障害をはじめ障がいがある子どもを可能な限り受け入れることと定められています。
関わる職種
年齢や発達状況が異なる子どもと接するため、支援単位ごとに放課後児童支援員の配置が義務付けられています。放課後児童クラブのなかには、資格をもたない人も補助員として働いています。
発達障害のある児童の受け入れにあたり、保護者との面談を通して発達状況や保護者の意向を個別に把握します。また、子どもの特性をふまえた育成支援をおこなうために、障害児等療育支援事業なども活用し、障がいに関する理解を深めます。
保健所・保健センター
地域住民の健康に関わる情報提供や、相談事業、健診などをおこなう公的機関です。保健所は都道府県や政令指定都市、中核市、東京の特別区が設置・運営しているのに対し、保健センターは市町村によって運営されています。
保健センターでは、母子保健に関わる母子手帳の交付や両親学級、新生児健診や離乳食教室などの育児支援をおこなっています。
関わる職種
健診では、医師や看護師のほか保健師、栄養士、心理職、作業療法士、言語聴覚士、保育士、歯科医師、歯科衛生士など多職種が関わります。問診で気になる状態が見られる場合や子どもの発達に悩みを抱えている保護者には、個別相談の場を設けて不安の軽減をはかっています。必要であれば、医療機関や児童発達支援事業所の紹介もおこなっています。
また、ことばの相談会や発達支援に関する個別相談会を設け、言語聴覚士や保健師などの専門職が相談に応じています。子どもが保育所や幼稚園に通っている場合には、連携をとり支援方法を助言することもあります。
保育所等訪問支援
障がいをもつ子どもが通う保育所に専門職が訪問し、集団生活に適応するための支援内容を助言するサービスです。障害者手帳の有無は問わず、保護者の申し込みがあれば支援を実施します。訪問先は保育所以外にも、認定こども園、幼稚園、学校、放課後児童クラブなどさまざまです。
子どもへの直接支援のほかにも、子どもが通う施設で働くスタッフへの支援も重要視されており、関わり方や活動の組み立て方のアドバイスをします。
関わる職種
訪問する職種は児童指導員や保育士、作業療法士などのリハビリ職、心理担当職員などです。また、保育所等訪問支援事業所には、管理者と児童発達支援管理責任者、訪問支援員の配置が義務付けられており、兼務はできません。
児童養護施設・乳児院
保護者がいない子どもや、虐待などにより適切な養育環境にない子どもが生活する施設です。児童養護施設が学齢期の子どもを対象としているのに対し、乳児院は0〜3歳まで入所しているケースがほとんどです。
家庭のような環境で生活・学習指導をしつつ養育をおこないます。入所する子どものうち虐待を受けた子どもは約7割、何らかの障がいをもつ子どもは約4割いるといわれています。
関わる職種
施設長のほか児童指導員、保育士、嘱託医、個別対応職員、家庭支援専門相談員、栄養士、看護師、心理療法担当職員の配置が義務付けられています。入所する子どもの4分の1近くに障がいがある現状からも、個々の課題の把握と支援計画の作成が重要です。
4.個々の特性を理解し社会全体で支援を
一口に発達障害といっても症状はさまざまなため、明確に診断することは困難です。発達障害のある人とその家族が生きづらさを抱えることなく暮らすためには、個々の特性を理解し、乳幼児期から高齢期まで社会全体での支援が不可欠です。
発達障害に関する認知度が上がり支援するための機関も整備されたことで、そこで働く職員のニーズも増えています。ジョブメドレーには、発達障害を支援する求人が掲載されていますので、ぜひチェックしてみてください。
参考
- 厚生労働省|発達障害の理解のために
- 厚生労働省|発達障害