目次
- 1. ホームヘルパーとは?
- 訪問介護員とホームヘルパーの違い
- ホームヘルパーが派遣される介護サービス
- 2. ホームヘルパーになるために必要な資格
- 介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)
- 介護職員実務者研修(旧ホームヘルパー1級)
- 介護福祉士
- 生活援助従事者研修
- 資格取得のための費用を抑えるには?
- 3. ホームヘルパーの仕事内容
- 身体介護
- 生活援助
- 通院等乗降介助
- 4.ホームヘルパーができないこと
- 5.ホームヘルパーとして働くメリット・デメリット
- 6. ホームヘルパーの働き方
- ホームヘルパーの一日
- ホームヘルパーの休日
- 7. ホームヘルパーの給料
- 【全国平均】ホームヘルパーの時給・月給・年収の相場
- 【エリア別】ホームヘルパーの時給・月給・年収の相場
- 8. ホームヘルパーの将来性

1. ホームヘルパーとは?
ホームヘルパーとは、介護を必要とする高齢者の自宅などを訪問して、日常生活を支援する職種です。多くの場合、所属する訪問介護事業所(訪問介護ステーション)から利用者宅を回りますが、訪問先は個人宅だけでなく、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の場合もあります。
2020年の国勢調査によると、ホームヘルパーの就業者数は約28万人、そのうち約9割が女性でした。介護保険制度が始まった2000年から調査対象となり、2005年までに就業者数が2倍以上に増えたものの、それ以降は30万人前後で横ばいとなっています。

訪問介護員とホームヘルパーの違い
訪問介護員とホームヘルパーで、業務内容に違いはありません。訪問介護員は介護保険法上の正式名称です。一方、ホームヘルパーは一般的な職種の呼び方で、求人などで採用されています。
ホームヘルパーが派遣される介護サービス
介護保険法が定めるサービスにはさまざまな種類がありますが、ホームヘルパーの活躍の場は広く、訪問介護だけでなく、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型居宅介護など、多くのサービスの一環として訪問介護を実施しています。
なお、障がい者支援の分野においても、障害者総合支援法に基づく居宅介護や重度訪問介護での訪問担当者をホームヘルパーと呼ぶことがあります。
2. ホームヘルパーになるために必要な資格
ホームヘルパーは基本的にひとりで利用者宅を訪問します。さまざまな事態に対してひとりで適切に判断・対処する必要があるため、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)以上の資格が必要です。

介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)
介護職員初任者研修(以降、初任者研修)は介護の入門資格です。全130時間のカリキュラムを受講したうえで、最後に実施される1時間程度の筆記試験に合格することで初任者研修修了となります。
初任者研修を受講するに当たって、年齢や学歴、実務経験などの要件はありません。初任者研修を修了すると介護に関する基礎的な知識や技術があることの証明となるため、訪問介護にだけでなく、介護の仕事を始めたい人におすすめの資格です。
資格取得にかかる期間は、集中的に講座を受ける週3コースなら1ヶ月半、働きながら土日に通う場合は3〜4ヶ月程度となっています。受講料は3万円〜9万円程度かかります。
介護職員実務者研修(旧ホームヘルパー1級)
介護職員実務者研修(以降、実務者研修)は初任者研修の上位資格です。全450時間のカリキュラムを受講することで修了となりますが、初任者研修などすでに保有している資格によって免除される科目があります。
実務者研修も受講するための要件はとくにありません。実務者研修ではより質の高い介護サービスを提供するために必要な実践的な知識・技術を学びます。サービス提供責任者(サ責)として働いたり、介護福祉士を受験するために必要になる資格です。
資格取得にかかる期間は保有資格によって異なり、初任者研修修了者で4ヶ月、無資格の場合は6ヶ月程度となっています。受講料も初任者研修修了者で9万円〜20万円程度、無資格の場合は11万円〜22万円程度かかります。
介護福祉士
介護福祉士は介護領域における唯一の国家資格です。年に一度おこなわれる国家試験に合格し、資格登録することで介護福祉士を名乗ることができます。
介護福祉士にはいくつかの受験ルートがありますが、大学や専門学校などで福祉系の専門教育を受けたことがない場合は、3年以上の実務経験と実務者研修の修了が必須です。介護福祉士としてさらに5年以上の実務経験を積めば、ケアマネジャーの受験資格を得られます。
生活援助従事者研修
生活援助従事者研修は2018年に新設された制度で、修了すると調理や掃除、洗濯などの生活援助中心型の利用者宅に限り訪問できるようになります。
全59時間のカリキュラム+30分の筆記試験と、初任者研修の半分以下の時間で資格を取得できることが特徴ですが、初任者研修や実務者研修と比較して実施事業者の数は多くありません。
資格取得のための費用を抑えるには?
一般的に初任者研修や実務者研修を受講するには費用がかかります。ただし、さまざまな助成制度があるため、適切に活用すれば受講料を抑えることが可能です。
(1)受講先の助成制度を利用する
研修を実施する事業者が介護事業をおこなっている場合、研修修了後にそのまま傘下の事業所に就職することで受講料がキャッシュバックされることがあります。対象資格や返金額、勤続要件などは事業者によって異なるため、それぞれの講座をご確認ください。
(2)自治体の助成制度を利用する
人材確保のため、多くの自治体に介護資格を取得するためにかかった費用を助成する制度があります。対象資格や助成金額、勤続要件などは自治体によって異なるため、「(お住まいの自治体名) 介護資格 助成金」で検索してください。
(3)教育訓練給付金の対象講座を選ぶ
雇用保険の被保険者期間が3年以上ある方は教育訓練給付金を活用できます。教育訓練給付金は、厚生労働省が指定する資格取得講座を受講・修了した場合に、かかった費用に補助を受けられる雇用保険の給付の一種です。給付を受けるには、受講前に受給資格を満たしているかなどの要件を確認する必要があります。
>詳細:厚生労働省|教育訓練給付金
(4)公的職業訓練(ハロートレーニング)を活用する
失業中の方は公的職業訓練(ハロートレーニング)の活用も考えられます。公的職業訓練は要件を満たせば、受講費が原則無料(テキスト代などは自己負担)となるうえ、受講中の所得補償として失業手当や職業訓練手当を受け取ることができます。
(5)資格取得支援制度のある事業所で働く
働きながら資格取得を目指したい場合は、従業員の資格取得支援をおこなっている事業所を探しましょう。費用の一部または全額を補助してくれたり、通学日に休めるようシフトを調整してくれたりします。支援内容は事業所によって異なるため、面接時などに直接ご確認ください。
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3. ホームヘルパーの仕事内容
ホームヘルパーはサービス提供責任者(サ責)が作成した訪問介護計画書に従ってサービスを提供し、そのサービスは大きく分けて3種類に分類されます。
身体介護
利用者の身体に直接触れるサービスや介護の専門知識や技術を必要とするサービス、利用者の見守りを指します。
- 排泄介助
- 入浴介助
- 更衣介助
- 洗面介助
- 身体整容(爪切り、耳そうじ、整髪など)
- 食事介助(治療食や流動食の調理を含む)
- 服薬介助
- 体位変換
- 移乗・移動介助
- 通院・外出介助
- 起床・就寝介助
- 見守り的援助
- 喀痰吸引・経管栄養*
*登録研修機関で「喀痰吸引等研修」の講義・演習・実地研修を修了した職員のみ可能
生活援助
身体介護以外で利用者が日常生活を送るために必要なサービスを指します。主に利用者が一人暮らしの場合など、本人や家族が家事をおこなうことが困難な場合に提供されます。
- 掃除
- 洗濯
- 衣類の整理
- ベッドメイク
- 一般的な食事の調理・配膳
- 日用品の買い物
- 薬の受け取り
通院等乗降介助
利用者が医療機関や行政機関に行くときに、ホームヘルパー自らが車を運転し、乗り降りや移動の介助、受診の手続きなどをおこなうことを指します。なお、徒歩で移動する場合やバスやタクシーなどの公共交通機関を利用する場合は、身体介護(通院・外出介助)に分類されます。
tips|訪問介護と訪問入浴介護の違い
訪問介護が日常生活全般を援助するサービスなのに対し、訪問入浴介護は入浴に特化した介護サービスです。主に自宅の浴室が狭くて介助が難しい場合や要介護度が重い場合などに利用されています。
訪問入浴介護では訪問介護のように利用者宅の浴室は使用せず、専用車両で持ち込んだ簡易浴槽を使用します。さらに、看護師1名と介護スタッフ2名以上の合計3名以上で訪問し、看護師が入浴前後のバイタルチェックを、介護スタッフが車両の運転、浴槽の設置、入浴介助などを担当します。
4.ホームヘルパーができないこと
ホームヘルパーは介護保険法に基づいたサービスを提供しています。そのため、民間の家事代行のようにサービス内容を自由に決めることはできず、利用者本人以外のためのサービスや、なくても生活に支障を来たさないサービス、日常の家事から逸脱するサービスは提供できません。
種類 |
できるサービス |
できないサービス |
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掃除 |
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洗濯 |
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調理 |
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買い物 |
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外出 |
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ただし、これらを介護保険適用外の自費サービスとして提供している事業所もあります。介護保険適用外のため利用料は事業所によって異なり、その全額が利用者負担となります。
5.ホームヘルパーとして働くメリット・デメリット
メリット
ホームヘルパーは利用者の自宅をひとりで訪問し、介護サービスを提供します。介護施設での勤務と違い、ひとりで業務に取りくむ時間が長いため、以下のような点がメリットになるといえるでしょう。
- 幅広い介護スキル・経験が身につく
- 利用者と一対一で中長期的に向き合える
- 人間関係の悩みが少ない
デメリット
ホームヘルパーにはひとりで業務をこなすスキルが必要です。また、外出の支援をする可能性もあります。そのため、ホームヘルパーとして勤務を検討する際は、以下のようなデメリットを意識すると良いでしょう。
- さまざまな支援を一人で対応できるスキルが必要
- 屋外での支援を身につける必要がある
- 臨機応変さが必要なケースがある
6. ホームヘルパーの働き方
ホームヘルパーの一日
身体介護中心型のホームヘルパーの一日はおおむね次のようになります。

勤務時間はこれ以外に早番や遅番も含めたシフト制となることが一般的ですが、高齢者住宅併設の訪問介護事業所の場合は夜勤が発生することもあります。また、正職員の場合、1日の訪問件数は5件前後が一般的です。
ホームヘルパーの休日
日常生活の援助という仕事の特性上、ホームヘルパーの休日は基本的にシフトで週休2日、または、4週8休となります。ゴールデンウィークや夏季、年末年始などの長期休暇も基本的にシフトで調整することになるため、希望どおりに休みを取りにくいという面もあるかもしれません。
7. ホームヘルパーの給料
ジョブメドレーに掲載されている求人からホームヘルパーの賃金相場を算出しました。なお、残業手当など月によって支給額が変動する手当は集計対象外のため、実際に支払われる賃金はこれより多くなる可能性があります。
【全国平均】ホームヘルパーの時給・月給・年収の相場
2024年12月時点の全国のホームヘルパーの時給・月給・年収の相場は次のとおりとなりました。
下限平均 |
上限平均 |
総平均 |
|
---|---|---|---|
パート・アルバイトの時給 |
1,270円 |
1,744円 |
1,479円 |
正職員の月給 |
21万9,770円 |
26万4,239円 |
23万8,717円 |
正職員の年収* |
307万6,780円 |
369万9,346円 |
334万2,038円 |
【エリア別】ホームヘルパーの時給・月給・年収の相場
ホームヘルパーの賃金相場をエリア別に見ると首都圏、近畿、東海などの都市部の賃金が高い傾向にあります。



*地域区分は、東北(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)、北関東(茨城県、栃木県、群馬県)、首都圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、甲信越(新潟県、山梨県、長野県)、北陸(富山県、石川県、福井県)、東海(岐阜県、静岡県、愛知県、三重県)、近畿(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)、中国(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県)、四国(徳島県、香川県、愛媛県、高知県)、九州・沖縄(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)
ホームヘルパーと施設や病院などで働く介護職の、勤務先別・都道府県別の詳しい給料はこちらの記事もチェックしてみてください。
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8. ホームヘルパーの将来性
2000年に介護保険制度が始まって以来、高齢者の住まいは多様化しています。介護保険施設だけではなく、有料老人ホームやサ高住も多く整備されてきました。ホームヘルパーは高齢者の在宅での暮らしを支えるだけでなく、このような施設にとっても欠かせない職種です。
また、ホームヘルパーには「資格が必要」で「パート・アルバイトの求人も多い」という特徴もあります。資格を活かして仕事に就くことができ、自分の都合に合わせて働きやすいという意味で、利用者だけではなく求職者の“自分らしい働き方”を叶えてくれる職種とも言えそうです。