目次
1.教育訓練休暇給付金とは?
教育訓練休暇給付金とは、労働者が教育訓練を受けるために30日以上の無給の休暇を自発的に取得した場合に、賃金の50〜80%程度が支給される制度です。「雇用保険法等の一部を改正する法律」によって新たに設けられ、2025年10月から施行されます。
近年のテクノロジーの進化や、少子高齢化などにより絶えず変化する社会に対応するため、労働者の主体的な学びが重要視されています。しかし、これまでスキル・キャリアアップのために長期的な教育訓練を受ける場合、無給で会社を休むか退職せざるを得ませんでした。
教育訓練休暇給付金は、こうした経済的な不安を軽減し、離職を防ぎながら労働者の主体的な学びを支援することを目的としています。
対象者
教育訓練休暇給付金を受給できるのは、以下2つの条件に当てはまる在職者です。
- 休暇開始前2年間に12ヶ月以上の被保険者期間がある(原則、11日以上賃金の支払いの対象となった月が算定対象)
- 休暇開始前に5年以上、雇用保険に加入していた期間がある
なお、離職していた期間があっても、「離職から1年以内」で「失業手当を受け取っていない」場合は、離職前と再就職後の雇用保険の加入期間を通算できます。

ただし、以下に該当する人は対象外です。
- 高年齢被保険者
- 短期雇用特例被保険者
- 日雇労働被保険者
支給対象となる休暇
教育訓練休暇給付金を受給するには、以下すべての条件を満たす休暇を取得する必要があります。
支給対象となる休暇
- 就業規則などに規定された休暇制度に基づく休暇
- 労働者本人が教育訓練を受講するため自発的に希望し、事業主の承認を得て取得する30日以上の無給の休暇
- 以下の教育訓練等を受けるための休暇
- 学校教育法に基づく大学、大学院、短大、高専、専修学校または各種学校
- 教育訓練給付金の指定講座を持つ法人などが提供する教育訓練
- 職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの(例:司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得 など)
*講座の詳細は「3.教育訓練休暇給付金の対象となる講座」で紹介しています。
2.教育訓練休暇給付金はいくら・何日分もらえる?
給付額
教育訓練休暇給付金は、失業手当を算定する際と同じ方法で計算されます。目安としては、直近6ヶ月間に支払われた賃金の50〜80%相当です。具体的な支給額は休業前の賃金や年齢に加えて、上限と下限に当てはまるかによって異なります。
詳しい計算方法は、こちらのSTEP1〜4を参考にしてください
>失業手当(失業保険)はいくら、いつからもらえる? 改正後の受給条件や申請方法を解説!
支給額のイメージ
- 給与額面が25万円の場合、月額約17万円
- 給与額面が35万円の場合、月額約19.5万円
- 給与額面が45万円の場合、月額約22.5万円
*実際の支給額は、収入や年齢などにより異なります
受給期間と給付日数

教育訓練給付が受けられる期間(受給期間)は、休暇を開始した日から1年間です。この期間中に、取得した教育訓練休暇の日数に対して給付が受けられます。
また、支給される日数には上限があり、休暇を開始する日までの雇用保険の加入期間に応じて、90日、120日、150日間のいずれかに決まります。
加入期間 |
5年以上10年未満 |
10年以上20年未満 |
20年以上 |
---|---|---|---|
所定給付日数 |
90日 |
120日 |
150日 |
受給期間内であれば、休暇を複数回にわたって取得した場合でも給付が受けられます。ただし、教育訓練休暇を取得した期間に収入を伴う仕事をした日や、有給休暇、育児休業など教育訓練休暇以外の休みを取得した日は給付の対象外となります。
3.教育訓練休暇給付金の対象となる講座
教育訓練休暇給付金の支給対象となるのは、大学などの学校で受ける講座や、教育訓練給付金の講座指定を受けている法人が提供する講座、語学留学などです。
教育訓練給付金の講座指定の例
輸送・機械運転関連
- 大型自動車第一種・第二種免許
- 中型自動車第一種・第二種免許 など
情報関係
- IT パスポート
- Web クリエイター など
専門的サービス関係
- キャリアコンサルタント
- ファイナンシャル・プランニング技能検定 など
事務関係
- Microsoft Office Specialist
- TOEIC、TOEFL iBT、IELTS など
営業・販売関係
- 調理師
- パーソナルカラリスト検定 など
技術・製造関係
- 建築士
- 電気工事士 など
大学・専門学校等の講座関係
- 職業実践専門課程
- 専門職学位 など
医療・社会福祉・保健衛生関連
ジョブメドレーで求人を扱っている医療・福祉分野では、以下の資格取得講座やプログラムがあります。
医療・社会福祉・保健衛生関連の資格や試験
厚生労働大臣の指定を受けた講座は、以下のウェブサイトで検索できます。
>厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム
大学などでの講座は、以下のウェブサイトに掲載されています。
>マナパス
デジタルスキルを身につける講座情報は、以下のウェブサイトを参考にしてください。
>マナビDX
4.教育訓練休暇給付の支給を受ける

給付金を受け取るには、就業先に教育訓練休暇に関する規定があることが前提となります。また、休暇を取得する際には、勤務先との合意が必要です。合意が得られたら「教育訓練取得確認表」を勤務先に提出します。
支給申請書の提出が必要
教育訓練の開始後に、ハローワークから事業主を通じて「賃金月額証明票(本人手続き用)」と「教育訓練休暇給付金支給申請書」が届きます。氏名や被保険者番号、教育訓練に関する情報や振込先金融機関などの必要事項を記入のうえ、教育訓練開始後30日以内にハローワークに提出しましょう。
なお、休暇が始まってから30日が経過するごとに「教育訓練休暇取得認定申告書」の提出が必要です。申告を忘れると給付が受けられないため注意が必要です。
必要書類
給付金の支給申請に必要な書類は次のとおりです。
支給申請(受給資格決定)に必要な書類
- 教育訓練休暇給付金支給申請書
添付書類
- 賃金月額証明票
- 教育訓練休暇取得確認票
- マイナンバーなどの本人確認書類
- 通帳、キャッシュカード など
また、受給決定後に継続して認定を受けるための申請に必要な書類は次のとおりです。
認定申告手続に必要な書類
- 教育訓練休暇取得認定申告書
添付書類
- 受給資格決定通知
- 受講証明や領収書など教育訓練を受講していることを証明する書類
- マイナンバーなどの本人確認書類
5.教育訓練休暇給付金を受ける際の注意点
勤務先に制度がなければ取得できない
就業規則や、労働組合と事業主間で交わされる労働協約などで、教育訓練休暇制度が規定されていない場合は休暇を取得できません。教育訓練に申し込む前に、まずは休暇の有無を就業規則や人事担当者などに確認しましょう。
受給期間を超えたら支給されない
受給期間は、教育訓練を開始した日から1年間です。この期間を超えると給付が受けられないため、早めの申請がおすすめです。また、1年を超える教育訓練を受ける場合も、受給期間を過ぎると給付が受けられません。
受給後は被保険者期間がリセットされる
受給後は、休暇開始前に雇用保険に加入していた期間がリセットされます。そのため、一定期間は失業手当などが受給できません。雇用保険の新たな加入期間は、休暇開始日からとなります。
不正受給には処罰がある
受講を偽るなどの不正行為により受給した場合、受給金額の返還に加えてその2倍にあたる金額の納付が命じられます。また、悪質な場合には詐欺罪として刑罰の対象となる可能性もあります。
副業でも収入があれば給付は受けられない
長期の教育に専念するための休暇という位置付けから、本業での就労や副業をした日は認定対象外となり、支給を受けられません。長期の教育に専念するための休暇という位置付けから、本業での就労や副業をした日は認定対象外となり、支給を受けられません。
6.主体的な学びが求められている
教育訓練休暇給付金は、仕事を辞めることなく中長期的な教育訓練を受けた場合に、その間の経済的な不安を軽減する制度です。急速に進むデジタル化などにより、労働者を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。こうした変化に対応するため、労働者自らが学びスキルアップすることが大切です。
勤務先に働きながら学べる仕組みがない場合は、研修制度や資格取得をサポートしてくれる職場に転職するのも一つの方法です。ジョブメドレーで、希望条件を絞って求人をチェックしてみてください。
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参考
- 厚生労働省|教育訓練休暇給付金
- 厚生労働省|教育訓練休暇給付金のご案内