1. 看護師とは?
看護を通じて健康に問題を抱える人々の療養生活を支える医療専門職
看護師は主に療養上の世話や医師の診療補助を通じて、傷病者や妊産婦、高齢者など、健康についてさまざまな問題を抱える人々の療養生活を支えています。
看護師の役割は赤ちゃんからお年寄りまであらゆる年代の方に寄り添い、病いや老いなどによって心身が衰えても、その人らしく尊厳を保ちながら、苦痛なく快適に過ごせるようケアすることです。そこには本人に対する医療的なケアはもちろん、本人やその家族に対する精神的なケアも含まれています。
近年、長寿化や少子高齢化を背景にケアの場は病院から在宅、施設へと移行しています。それにともない看護師の活躍の場も多様化しており、病院や診療所(クリニック)以外にも訪問看護ステーション、介護施設、地域包括支援センター、保育園などさまざまな施設が看護師を必要としています。
なお、2020年に実施された国勢調査によると、看護師の就業者数はおよそ139万人、そのうち92%が女性でした。
国勢調査は5年に一度実施されていますが、1985年以降、看護師(准看護師を含む)は毎回約10万人ずつ、2020年までの35年間で約70万人増加しています。
伸び率は男性が女性を上回っており、就業人口全体に占める男性の割合も少しずつ増えてきています。
看護師と准看護師の違い
准看護師は戦後の看護師不足を補うために誕生した資格で、看護師が厚生労働大臣の免許(国家資格)なのに対して、准看護師は都道府県知事の免許で、資格取得のハードルが低いことが特徴です。
看護師と准看護師で実施できる業務の範囲に違いはありませんが、准看護師が業務をおこなうには医師や看護師の指示が必要で、看護師のように自らの判断で業務をおこなうことができません。
看護師 |
准看護師 |
|
---|---|---|
免許 |
厚生労働大臣の免許 |
都道府県知事の免許 |
学歴要件 |
高校卒業 |
中学卒業 |
養成期間 |
3年(3,000時間)以上 |
2年(1,890時間)以上 |
業務の進め方 |
自らの判断で業務をおこなえる |
医師や歯科医師、看護師の指示が必要 |
キャリアアップ |
保健師、助産師、専門看護師、認定看護師、認定看護管理者等 |
看護師 |
准看護師について詳しくはこちらの記事で解説しています。
2. 看護師になるには?
看護師免許が必要
看護師になるには、国家試験に合格し、看護師免許を取得する必要があります。看護師国家試験を受験するには所定の専門教育を修了する必要があり、大きく分けて次の3つのルートがあります。
〈ルートA〉
高校卒業後、看護大学・看護短期大学・看護専門学校で4年または3年の専門課程を修了する
〈ルートB〉
中学卒業後、5年一貫の看護師養成課程のある高校で専門課程を修了する
〈ルートC〉
准看護師資格取得後、看護短期大学・看護専門学校で2年の専門課程を修了する
最も一般的なのが高校卒業後に看護師養成課程のある大学・短大・専門学校に進学するルートAですが、一度社会に出てから看護師を目指すことも可能です。
ルートAのように3年制の専門学校に通うか、ルートCのようにまず准看護師免許を取得してから、あらためて2年制の短大や専門学校に通う方法もあります。専門学校の中には夜間課程のある学校もありますので、働きながら看護師を目指すことも不可能ではありません。
なお、看護師免許を取得すると、さらに1年以上の専門課程を修了することで保健師や助産師の国家試験を受けることも可能です*。
看護師国家試験の概要
看護師国家試験は年に一回、毎年2月に実施されます。
- 11月上旬〜12月上旬:願書等提出
- 2月中旬:試験日
- 3月下旬:合格発表
看護師国家試験の合格率の推移
看護師国家試験の過去5年間の合格率は90%前後で推移しています。
看護師国家試験の場合、新卒者の合格率が90%以上なのに対して、既卒者の合格率はその3分の1以下の30%となっています。
浪人するとさらに1年間、場合によっては働きながら勉強を続けなければなりませんので、学生時代よりも勉強時間の確保やモチベーションの維持が難しくなります。一発で合格できるよう試験対策と体調管理には留意しましょう。
看護師国家試験の実施概要や過去の結果などの最新情報については、以下の記事で詳しく解説しています。
>【2025年】第114回看護師国家試験の日程と概要、過去の結果と合格率
先輩看護師の試験対策も要チェック!
3. 看護師の仕事内容
看護師の仕事は多岐にわたりますが、療養上の世話と医師の診療補助に大別することができます。
療養上の世話
病気やけがに苦しむ方や妊産婦、高齢者など、健康に問題を抱えるさまざまな人々の療養生活をサポートします。
- 排泄の援助
(排泄介助・おむつ交換・浣腸・摘便・導尿・ストーマケアなど) - 食事の援助(食事介助・嚥下訓練・口腔ケア・栄養チューブ・胃ろうなど)
- 入浴の援助(入浴介助・全身清拭・洗髪・手浴・足浴・爪切りなど)
- 車椅子やストレッチャーを使った移乗・移送
- 歩行介助
- 体位変換
- 健康相談 …など
医師の診療補助
医師の指示に従い、診察・検査・処置・手術をサポートします。
- 医行為(注射・点滴・与薬・吸引・吸入など)の実施
- 脈拍・血圧・体温・呼吸の計測(バイタルチェック)
- 顔色や患部などの状態観察
- 応急処置・創傷処置
- 検体の採取(採血など)
- 検査の説明・準備
- 検査結果の確認
- 医薬品や医療機器の管理
- 看護記録の作成と管理
- 外来患者の問診と誘導
- 入院患者の看護計画作成
- 病棟の巡回(ラウンド)
- ナースコールの対応
- 勤務交替時の申し送り
- カンファレンスへの参加 …など
4. 看護師の勤務先
厚生労働省の調査「衛生行政報告例(就業医療関係者)」によると、看護師の勤務先の8割以上が病院や診療所といった医療機関であり、とくに病院に偏っていることがわかります。そのほか介護保険施設や訪問看護ステーションで働く看護師もいます。
*社会福祉施設:有料老人ホームや認知症グループホームなどの老人福祉施設、保育所や児童養護施設などの児童福祉施設が該当
病院
病院は法律上「病床数20床以上の医療機関」と定義されていますが、一般的には複数の診療科目を持った、入院設備のある中規模以上の医療機関を指します。看護師は通常このような総合病院からキャリアをスタートさせます。診療科目や配属先によって業務の内容は異なりますが、臨床で求められる基本的な看護技術を身に付けることができます。
効率よく診療を進める力量が試される外来、療養生活の不安を医療的・精神的に支える病棟、手術のスムーズな進行を助ける手術室など、配属先によって求められる役割や適性が異なります。また、日勤のみとなる透析室、内視鏡室、健診・人間ドックは、ワークライフバランスも重視したい方に人気があります。
関連記事(配属先別の看護師の仕事)
診療所
一方の診療所は法律上「病床数19床以下の医療機関」と定義されていますが、実際には入院設備のない無床診療所が9割を超えていることから、一般的にはある診療科目に特化した、入院設備のない小規模な医療機関を指します。診療所で働く看護師の主な業務は医師の診療補助となります。
診療前の問診や、検査の説明、採血、注射、点滴などの一般的な診療補助に加え、医療器具の洗浄・消毒、医薬品や備品の管理、診療室や処置室の清掃など、少人数で多くの業務をこなす必要があります。規模の小さい診療所では、受付や電話応対も看護師の業務に含まれる場合があります。
ただし、診療所は日勤のみとなり、週1〜2日の休診日以外にも、お盆や年末年始には休診となることが多いため、まとまった休みを取りやすいというメリットがあります。
なお、就職先として人気の高い美容外科や美容皮膚科(いわゆる美容クリニック)の場合、看護師にも施術や物販の販売目標があり、達成度に応じてインセンティブが支払われることがあります。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションで働く看護師(訪問看護師)は、利用者の自宅を直接訪問し、主治医の指示書に従い医療処置やケアを施します。
具体的にはバイタルチェック、服薬管理、点滴、血糖値の測定、インスリン注射、カテーテルの交換、人工呼吸器のチェックなどをおこないます。必要に応じて褥瘡のケアや嚥下訓練、歩行訓練などを実施することもあります。
基本的に日勤のみ、固定で週休2日の事業所が多く、病院に比べると自分のペースで働きやすいと言えます。
介護施設
特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)、有料老人ホームなどの介護施設で働く看護師の主な業務は、利用者の健康管理や施設職員に対する指導です。
具体的にはバイタルチェック、服薬管理、簡単な医療処置に加え、緊急時には医師を呼ぶかどうかの判断も求められます。
一口で介護施設と言っても、特養や老健をはじめ軽費老人ホーム、小規模多機能型居宅介護、デイサービス(通所介護)、デイケア(通所リハビリテーション)に至るまで施設によって利用者の要介護度はさまざまです。看護師に求められる役割や夜間対応の体制(夜勤、オンコール、電話対応のみなど)も異なりますので、求人に応募する際は施設の特徴や業務の内容をよく確認しましょう。
保育園
保育園で働く看護師の主な業務は、園児の健康管理や集団感染の予防、職員(保育士)や家族に対する指導となります。
乳幼児は大人に比べて抵抗力が弱く、マスクの着用などの基本的な感染症対策を徹底することが難しいため、保育園は感染症やウイルス性疾患が流行しやすい環境にあります。看護師は感染拡大を防ぐために、保健だよりや手洗い指導などを通して、子ども・家族・保育士の三者に働きかけます。
また、1施設につき1名まで看護師を「保育士」とみなすことができるため、園によっては保育(補助)が業務に含まれる場合があります。
まだある!看護師が活躍できる職場
5. 看護師の働き方
看護師が就業中に着用する制服や仕事で使用する道具、一日の仕事の流れ、休日などについて解説します。
看護師の仕事着
看護師と言えばワンピースタイプの白衣をイメージする方も多いかと思いますが、パンツタイプの白衣や淡いピンクやブルーの白衣、さらにはケーシーやスクラブなど、さまざまなタイプが登場しています。
これらの仕事着は制服として勤務先から支給(貸与)されることが一般的で、退職時には返却しなくてはなりません。また規定の支給枚数で足りないときは自費で購入が必要になるケースもあります。
〈白衣〉
女性の場合、上下が一体となったワンピースタイプが定番でしたが、近年では動きやすさを重視してパンツタイプが主流となりました。上下が別々のツーピースや半袖・立て襟が特徴的なケーシーは、男女問わず多くの病院で採用されています。また“白衣”といっても色は必ずしも“白”ではなく、淡いピンクやブルーなどのカラー白衣も増えています。
〈スクラブ〉
最近では半袖・Vネックのスクラブを採用する病院も増えています。白衣よりも比較的安価でお手入れがしやすく、カラーバリエーションが多いことも人気の理由。デザインも男女兼用のものが多くあります。
〈足元〉
ワンピースの場合はストッキングにナースサンダルを合わせるのが主流でしたが、パンツスタイルが増えたことから、靴下とスニーカーを着用することが一般的になりました。着脱しやすいスリッポンタイプも人気があります。
tips|訪問看護師の服装は?
訪問看護で患者さんの自宅を訪れる際には、白衣の着用は控えたほうがいいと言われています。白衣は病院や医療行為のイメージが強く、在宅療養中の患者さんやそのご家族を緊張させてしまう恐れがあるためです。
訪問看護師はポロシャツとチノパンなどの日常生活に馴染むカジュアルな服装をすることが一般的で、事業所によってはスクラブを採用しているところもあります。
看護師の服装についての調査結果はこちら
>【実態調査】看護師894人に聞いた! 職場での服装・身だしなみって実際どう?
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看護師の仕事道具
勤務先や所属する診療科によっても異なりますが、看護師の仕事道具には次のようなものがあります。これらの道具は必要なときにすぐに使えるように、ナース用のペンケースやウエストポーチにまとめて持ち歩きます。
- 聴診器(ステート):呼吸音、心音、腸蠕動音(ちょうぜんどうおん)などを聴取するために使用。小児科では小児用を使う
- ペンライト:瞳孔や口腔内を確認するために使用。瞳孔計測用のゲージが付いていると便利。夜勤時には懐中電灯としても活躍する
- 医療用ハサミ:固定用のテープやネットを切るために使用。刃先に安全ガード、持ち手にストラップが付いている医療用ハサミが便利
- ナースウォッチ:腕時計は安全面や衛生面の問題から着用できないことが多い。バイタルチェックに使用するため文字盤が見やすく秒針付きのものを選ぶ
- 電卓付きタイマー:主に点滴時に使用。滴下速度を計算するために電卓が、終了時刻を知るためにタイマーが必要になるため、一体型の製品が便利
- 駆血帯:採血や点滴の際に使用。伸縮性の高いチューブタイプ以外にも着脱が簡単なバンドタイプがある
- 使い捨て手袋:医薬品や体液に触れる際に使用
- サージカルテープ:処置の際に使用。テープホルダーに入れると衛生的かつ素早い処置が可能になる
- アルコール綿:注射や点滴の際に消毒や止血のために使用。個包装タイプが衛生的で使いやすい
- 印鑑:現場では捺印が必要になるシーンも多い。ネーム印と訂正印がセットになったタイプが便利
- メモ帳:必要なときにすぐに使えるようポケットに入る大きさであることが基本。さらに丈夫な台紙がついたリングタイプなら立ったままでもメモしやすい
- 油性ペン、多色ペン:摩擦や水に強い油性ペンと、黒・青・赤など色分けできる多色ペンがあると便利
- バインダー:患者さんに同意書への署名を依頼する際などに使用。ペンホルダー付きのものが便利
看護師の仕事道具についての調査結果はこちら
>ナースウォッチ・時計は何使ってる? 選ぶポイントと看護師737人の回答結果
看護師の一日
病棟勤務の場合、患者さんの療養生活を24時間体制で見守るため夜勤が発生します。シフトには主に2交替制と3交替制があり、2交替制の場合を例に取ると、看護師の一日の仕事の流れはおおむね次のようになります。
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看護師の休日
365日24時間の対応が必要とされる仕事の性格上、看護師の勤務形態はシフト制で休日も不定期となります。ただし、勤務先が診療所や訪問看護ステーション、デイサービス(デイケア)、保育園の場合は定休日が決まっているため週に1〜2日は固定で休むことができ、原則夜勤もありません。
6. 看護師の給料
ジョブメドレーに掲載されている求人から看護師の賃金相場を算出しました(准看護師を含む)。なお、夜勤手当など月によって支給額が変動する手当は集計対象外のため、実際に支払われる賃金はこれより多くなる可能性があります。
【全国平均】看護師の時給・月給・年収の相場
2023年11月時点の全国の看護師の時給・月給・年収の相場は次のとおりとなりました。
下限平均 |
上限平均 |
総平均 |
|
---|---|---|---|
パート・アルバイトの時給 |
1,548円 |
1,773円 |
1,648円 |
正職員の月給 |
25万6,127円 |
31万9,326円 |
28万3,905円 |
正職員の年収 |
358万5,778円 |
447万564円 |
397万4,670円 |
看護師の給料は職場や勤務地、雇用形態、夜勤の有無などにより異なります。詳しくは以下の記事も参考にしてみてください。
看護師の給与事情についてはこちらもチェック!
7. 看護師の将来性
国勢調査によると、1985年に約67万人だった看護師の数は2020年には約139万人と、35年間で2倍以上増えています。しかし厚生労働省の試算によると、それでも2025年には10万人〜30万人程度、看護職員*が不足することが予想されています。療養の場の多様化や医療・介護の領域での地域包括ケアの推進など、看護のニーズは拡大する一方ですが、その担い手は不足しているのです。
その専門性をさまざまな場所で活かすことができる看護師の仕事。ぜひ、自分らしい働き方を見つけてください。
参考
- e-Gov 法令検索|保健師助産師看護師法